新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~

ネコ軍団

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第1章 魅惑の新大陸

第22話 嬉しい話

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 冒険者ギルド受付カウンター、二番と看板が出ている窓口の前で期待に目を膨らませたエリィとキティルが立っていた。

「はい。今回の報酬だよー」

 明るい声でパステルが二人の前に袋を置いた。中身はエドハンスキーの墓所サハギン討伐の報酬が詰まっている。手を伸ばして袋を取ったキティルは、袋を開けて報酬を数える。横でエリィが心配そうに彼女が数えるのを覗き込んでいた。
 きちんと報酬があったのか、嬉しそうにうなずいたキティルが袋をエリィに渡した。二人の様子を見ていたパステルが、何かを思いだのかハッという顔をして二人に口を開く。

「あっ! そうそう。君達の次の仕事が成功するとC1へ昇格できるよ」
「本当ですか? でも審査があるんじゃ?」

 パステルの言葉にエリィが驚いて食いつく、彼女はカウンターに身を乗り出しそうになるくらい前かがみになった。

「そうだよ。C1への昇格審査は週に一度、冒険者の指輪の記録から会議で決めてるんだ。君達はそれで仮合格したんだ」
 
 笑顔でうなずいてパステルがエリィ達の問いかけに答えた。エリィは彼女の言葉に、嬉しそうに胸の高さくらいで拳を握って、キティルの方を向いた。

「やった! 私達ランクアップだよ」
「ちょっと!? まだだよ。次の仕事に成功したらだよー」

 ランクアップしたというエリィに、パステルは慌てて訂正をする。彼女たちはまだ仮合格で次の仕事に成功しないとC1へは昇格できない。

「そっそっか」
「もう…… エリィったら」

 はやとちりをして恥ずかしそうに頭をかくエリィに、キティルは優しく微笑むのだった。

「新人から一ヶ月以内にC1昇格は早いほうだからね期待してるよ。頑張って!」
「「はい」」

 笑顔で声援を送るパステルに、二人はほぼ同時に返事をした。ちなみには最短記録は…… 港に足を踏み入れた直後にテオドールが魔物に襲われ蹴散らした女性冒険者だ。女性は冒険者ギルドへの登録と同時に特例でC1へと昇格した。なお、その彼女はテオドール周辺に居た危険な魔物を次々に駆除し、二週間で最高ランクの冒険者となったがすぐに冒険者をやめギルドの職員に転職した。

「あっ! そうだ。二週間くらい前にクレアさんに預けた短剣ってどうなってます?」

 キティルが首をかしげてパステルにたずねた。テオドールオオジカから出てきた短剣はまだ二人に返却されていなかった。

「えっ?! ごめん! ちょっと待って! ミレイユー! この子達から預かった短剣ってどうなってるの?」

 すぐにパステルは隣の窓口にいたミレイユに短剣につい確認をする。ミレイユは隣から移動してきて二人に申し訳無さそうに頭を下げた。

「ごめんねぇ。まだ調査中なの。もう少し待ってもらえるかしら。もし早急に売るとかならギルドで相当の金額で買い取……」

 ミレイユが買い取ると言おうとするとキティルがそれを遮る。

「売りません!」
「えっ!?」
「絶対に! 売りません!」

 普段大人しく声の小さいキティルが、ミレイユに向かって眉間にシワを寄せ怖い顔で叫ぶ。ものすごいキティルの気迫にミレイユは固まり、パステルは彼女の急な変化にあわあわしていた。慌ててエリィがミレイユとパステルに口をひらく。

「ごっごめんなさい。あれはキティルの大事な宝物なんですよ」
「はっはぁ…… こちらこそごめんね。なんか怒らせたみたいで……」

 エリィとミレイユはお互い気まずそうに頭を下げていた。大きく鼻で息をしてキティルは腕を組むのだった。二人はギルドのカウンターを後にした。帰宅しようとホールの階段の手前へやって来た。

「ランクアップ…… よーし! 景気づけにこの報酬で新しい槍を買おう」
「ダメだよ。武器を買うのはランク上げてからって約束でしょ! その槍だってテオドールオオジカに壊されて、修理したばっかりなんだから!」

 昇格の話しを聞いた二人は、嬉しそうに声をはずませて会話をしながら、冒険者ギルドの扉へと向かって歩く。

「おぉ! キティルちゃん、エリィちゃんじゃないか! 一緒に飲もうや!」

 酒場の方からダリルが二人を呼び止めた。二人が声の方に顔を向けると、酒場の中央にある丸テーブルでダリルが二人にジョッキを掲げていた。今日もいつものように彼のテーブルにはたくさんのジョッキが並んでいた。

「ダリルさーん。ごめんなさい。今日はもう帰るんですよ……」

 申し訳無さそうに断るキティル…… ダリルはにやりと笑ってジョッキを二人にかかげる。
 
「酒の肴にグレンの昔話があるぞい」
「飲みます! エリィ! 行くわよ」
「えぇ……」

 返事をしたキティルが駆け出した。エリィは呆れながらも彼女についていく。二人が席に座るとダリルが嬉しそうに、持っていたジョッキをキティルの前に置く。

「またグレンさんに迷惑かけるからほどほとにね」

 声をかけるエリィにキティルはジョッキを掲げた。

「わかってますー!」
「ますー!」

 にこやかに返事をするキティルに続いて、ダリルが口をすぼめて返事をする。二人の返事に椅子に座った、エリィは頭を抱えるのだった。ダリルと飲みはじめてしばらくして、三人が座る席に一人の男がやってきた。

「こんばんは。楽しそうですね」

 四人がけの丸テーブルの余った椅子に勝手に青い髪の男が立つ。三人の視線が男に向かう、キティルとダリルは笑顔でうなずき、エリィがだけが男を不審そうに眺めている。顔つきは良いがキティルを傷つけた、タフィと髪の色が同じ男で別人と分かってもエリィは警戒してしまうのだろう。

「僕はタイラー。キティルさんとエリィさんですね。ご一緒してもいいですか?」
「えっ!? でっでも……」

 近づいて来た男はタイラーだった。彼は穏やかな口調で自分から名乗り、紳士的に一緒に飲んでいいかと尋ねた。エリィは返事に困っていると、隣に座ったキティルが両手を上げた。

「いいよー! 飲もう!」
「わしも構わんぞー! ヒック!」

 キティルが承諾の返事をするとダリルもジョッキをかかげて許可をする。タイラーは二人の方を見てニッコリと微笑み椅子を引く。

「じゃあ。失礼しますね。うわ!」
「飲め飲め! わしの驕りじゃ!」
「はははっ! そうよ! 飲めーーー!!」

 静かにタイラーが椅子に座るといきなりダリルは肩を組み、持っていた自分のジョッキの酒を彼の口へと持って行き飲まそうとした。それをキティルは煽りエリィは恥ずかしそうにするのだった。

「うぃーおかわり」
「グレンさん…… むにゃ」

 四人が飲み始めて少しすると、キティルとダリルはテーブルに突っ伏した。
 くだを巻いて眠り寝言を言う二人を見た、タイラーは笑ってジョッキを口に運ぶ。隣でキティルの背中をさすっていたエリィがタイラーの視線に気づいた。

「すっすみません…… 二人が調子に乗って……」
「いいよ。久しぶりに楽しい食事だったよ。エリィさん」

 謝るエリィにタイラーはジョッキを掲げて笑う。恥ずかしそうにエリィはうつむいた。ふとエリィは彼が自分たちの事を知っていたことが気にかかる。

「そう言えばどうして私達の名前を?」
「テオドールオオジカを倒した美少女二人組みデュオって有名だからね。君を見てすぐに分かったよ」

 そっと膝の上に置かれたエリィの手を握るタイラー、エリィは突然のタイラーの行動に耳まで真っ赤になった。田舎から出て来たばかりの少女であるエリィにとって、うだつが上がらないとはいえ冒険者として経験のあるタイラーは大人に見える。さらにタイラーは娼館に通いなれているため、女性を扱いを多少は心得ている。
 タイラーはエリィの反応を見て優しく微笑む。そしてすっと手を離した。視線を動かして離れた手を名残惜しそうに見つめるエリィ、彼女の視線にタイラーの顔が映った。タイラーは微笑んだ顔から真剣な表情に変わっていた。

「実は…… 君達にピッタリの依頼があるんだ。受けてもらえるかな?」

 さっきまでの優しい口調と違ってタイラーは真面目に話しを始める。エリィは顔を上げ真剣な表情で彼の話しを聞く。

「テオドールの南に砦があるんだ。知ってるね?」
「はい。確か入植直後に対魔王軍用に作られたんですよね。戦争が終結して教会が大陸を管理するから放棄されたって……」

 エリィは返事をして南にある砦の事を説明し始めた。
 彼女が砦の事を知ってるのは冒険者支援課により歴史講習でハモンドの話しを聞いていたからである。堂々と正確に説明するエリィにタイラーは感心した様子でうなずく。

「そう。よく知ってるね」
「えへへ」

 褒められて恥ずかしそうにするエリィ、タイラーは彼女の頭をそっと撫でると話を続ける。

「いま砦にオーガが住み着いて南側の街道に出没し人を襲ってるんだ。ぴったりの仕事っていうのはそのオーガ討伐だ」

 オーガは茶色の毛皮に覆われた人型の魔物で、肉食で特に人間の女性の肉を好んで食す野蛮で危険な魔物だ。

「南の街道を迂回するようなったら町の人は困るだろう…… それに…… つい先日も小さい子供を連れて家族が犠牲に……」

 涙ぐんでうつむくタイラー、オーガに襲われた家族が犠牲になったと聞いたエリィの胸に熱いものがこみ上げてくる。
 故郷の村で狩人として育ち幼い頃から危険な魔物と戦ってきたエリィ、彼女の弓と槍はずっと弱い誰かを守るために使われてきた。今もその気持を忘れないように、ここで得た報酬の一部を仕送りし、自分が去った後に村で狩人を雇う資金の足しにしてもらっている。エリィの気持ちはすぐに決まった。

「やります」

 エリィの言葉にうつむいていたタイラーは歯を出して笑った。

「ありがとう。それじゃあ出発は明日の午後、南門で待ち合わせだ。ギルドへの報告は僕の方でやっておくよ」
「はい。よろしくお願いします」

 タイラーは立ち上がり笑顔でエリィに手を振って去っていた。エリィは彼の背中を寂しそうに見つめていた。
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