悪役令嬢にならないための指南書

ムササビ

文字の大きさ
21 / 141
Lesson.3 学園生活の始まりが、悪役令嬢の始まり

21.“悪役ヒロイン”?

しおりを挟む
『私の時代に“ヒロイン”として登場したマリアは、本当にいい子でした。
しかし、その後に現れた“ヒロイン”たちは、ほとんどが悪意に満ち溢れていたのです。
そういった子たちは、ここをゲームや小説の世界だと思い込み、人々の想いを踏みにじり、傷つける行動をとります。
あまりに稚拙すぎて自滅してしまう“ヒロイン”もいましたが、ずる賢い“ヒロイン”は、自分が気に入った男性と結ばれるように、さまざまな手段で“悪役令嬢”を陥れていったのです。

実際に、これまで二人の“ヒロイン”が王家に嫁ぐ寸前までに成り上がりました。

一人目はマリア同様、聖女として召喚されてきた女の子でした。
彼女は当時の王弟と結婚しようと、彼の妻を陥れて修道院送りに。
さらに、王弟をそそのかし反乱を起こしましたが、鎮圧され、“ヒロイン”と王弟は処刑されました。
この出来事は、マリアが聖女召喚を続けるカエルム教に反旗を翻すきっかけとなったのです。
再び聖女によって国が混乱しないようにと……。

もう一人の“ヒロイン”は、私の孫にあたる王子に近づきました。
王子にはすでに婚約者がいて、あなたと同じ、ウィスペル家の公爵令嬢です。
彼女は、私も赤ん坊のころからかわいがっていた女の子で、それはもう真面目で淑女の鏡のような子です。
王子との仲も良く、ほほえましく見守っていました。
一方で“ヒロイン”は、聖女ではなく男爵家の私生児でしたが、魔法の才能に秀でており、愛らしい容姿を持っていました。
そして、王族になりたいという欲望のために“魅了”の魔道具を作り出し、王子をはじめ、学校中の男性を虜にしていったのです。
それはもう! 本当にあっという間に、学園であの子は“悪役令嬢”に仕立て上げられてしまいました。
自分ではどうすることも出来ず、王子にも見放され、私が手を貸そうとしたときにはすでに心が壊れてしまっていたのです。
そこからたくさんの人々の尽力があり、“魅了”の魔道具を壊し、王子たちは魔法から解放されました。
ですが、どんなに手を尽くしても、婚約者だった女の子の心が戻ることはありませんでした。
もうあの子のような令嬢をこれ以上生み出したくないと思い、私はこの日記を記しはじめたのです。

公爵家の令嬢にとって脅威である、“ヒロイン”の存在は学園にあります。
もし、あなたが学園に入学した時には、愛らしく、何か特別な能力を持っていて、高位貴族にも臆することなく話しかけてくる女の子がいたら、気を付けて。
その子は“ヒロイン”かもしれません。
マリアのようにいい子かもしれないと思っても、裏の顔はわかりません。
なるべく関わらず、王子とその子を二人きりにしないように!
引き続き、王子との心の距離を近づける努力も怠らないように。
絶対に付け入る隙を見せてはいけません。』


「こんな子がいたらこわいですわ。
絶対にヒロインの方が悪役ではないですか……。」

プリムラがブルブルとふるえて見せる。

「……わたくし、今日こんな子に出会いました。」

リーリウムは、やはりアイリは“ヒロイン”なのではないかと思い、姉妹たちにアイリの様子を話す。
姉妹たちはいっせいに息をのんだ。
リーリウムから聞くアイリは、確かに“ヒロイン”と特徴が一致する。

「彼女と出会った時、ヘンリクス殿下の様子はどうでしたか?」

ヴィオラが問うと、リーリウムは少し微笑んだ。

「殿下は気にしていなさそうでした。」

「そう、ならば一先ずは安心ね。
それに、その子とは違う学校に通うことになるのだから、関係ないのではない?」

ヴィオラの言葉に、一転してリーリウムの表情が曇る。
彼女が実は男爵家の令嬢だったこと、学院長からの提案があり、貴族学園へ編入してくるかもしれないことを話す。

「それは、ちょっと警戒しなくてはいけないね。」

「他国の王子方もおられるし、彼女が暴走しないとは言えませんしね。」

姉二人が警戒をするように話す。

「その提案を却下にするわけにはいけませんの?」

自分の恋人もターゲットにされるかもしれないと怯えるプリムラが、リーリウムに訴える。

「殿下も乗り気でしたし、私もその場では良い案だと思って同意してしまったの。
日記帳やヒロインの話を殿下にするわけにもいかないし、難しいと思うわ。」

申し訳なさそうに話すリーリウムに、それ以上プリムラは何も言えなかった。

「リーリウムもプリムラも婚約者との仲は良好だし、
とりあえず『心の距離作戦』を続けながら警戒を怠らないってことでどうかな?
私は学園内で二人を守れるし、内情も分かっている。
裏でもいろいろと探ってみるよ。」

すでに貴族学園へ通っているフレエシアであれば、さまざまな情報が入ってくるだろう。
リーリウムとプリムラはフレエシアが本当に心強く、ありがたかった。

「わたくしは学園で二人を見張るわけにはいかないから、
アンドレアス様にそれとなく二人を見守るようにお願いしておくわ。
あまり頼りにならないかもしれないけれど……。」

ヴィオラも二人の妹の身を案じ、婚約者と共に守ることを伝える。
リーリウムとプリムラはたくましい姉二人に守られている安心感に、やっと笑顔が戻った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!

杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。 彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。 さあ、私どうしよう?  とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。 小説家になろう、カクヨムにも投稿中。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...