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Lesson.4 ヒロイン封じと学園改革
64.代償1
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翌朝のまだ空が白み始めたころに、四姉妹の母である公爵夫人が領地から到着した。
姉妹たちが出迎えると、母はヴィオラを強く抱きしめた。
「お母様、わたくしは意外と平気ですのよ。」
そう言って笑ったヴィオラの瞼が赤く腫れているのを見て、公爵夫人もまた泣きそうな顔になる。
しかし、ふとフレエシア、リーリウム、プリムラの顔を見ると、みんなそれぞれ瞼を腫らしていた。
「あなたは、良い妹たちを持ったわね。」
ヴィオラにそう言うと他の娘たちに手招きをして、両方の腕で四人をぎゅっと包み込んだ。
使用人たちに簡単な軽食を用意させると、それを朝食としてつまみながら、家族は公爵の書斎で話し合いをもった。
ヴィオラはアンドレアスとの婚約を解消したいことを両親に話すと、二人ともすでに予想はしていたようで、すんなりと了承した。
「ヴィオラのしたいようにさせましょう。
その後のことは大人たちが納めれば良いことです。」
ヴィオラは久しぶりに子どもとして扱われた母の言葉に、くすぐったいような気持ちになった。
いつもであれば、すべて自分で解決しようと意地になっていたかもしれない。
しかし、今日は家族に頼ろうと素直に思えたのだった。
ヴィオラは、両親と、そして改めて妹たちにも丁寧に礼を告げた。
「それでお母様、先日話した日記帳についてなのですが……。」
ヴィオラは両親に『ユニカ様の日記帳』について、今まで起こったことをすべて話した。
「リーリウムが持っていたあの古い日記帳がそんな内容だったなんて。
あの後、リーリウムやヴィオラに内容を尋ねてもずっと誤魔化し続けられていたものだから、
ずっと気になっていたんだよ。」
公爵はほっとしたような、拗ねるような口調で思いを吐き出した。
リーリウムはたびたび図書館にこもっては、読んだ本の内容を丁寧に書いた書類を公爵に提出していたのだが、あの日記帳についてだけは「ヴィオラお姉様が読んでいる」と言って、何度急かされても内容を明かさなかったのだ。
「わたくしも驚いたわ。あの日記帳が本物のユニカ様の日記だったなんて!
そんな魔法みたいな書物だったのなら、あの頃もっとちゃんと読んでおくべきだった。」
公爵夫人は心底残念そうにしている。
当時は何代か前のいたずら好きな当主が遺した創作日記だと思って、二ページほどぱらぱらと読んだだけで気にも留めなかったのだ。
ヴィオラに聞くまでは、その存在すら忘れていた日記帳だった。
「今日、日記帳の内容をお父様とお母様にもお伝えしようと思ったのが、
わたくしたちにあるという、『チャーム無効の祝福』の弊害についてなのです。」
ヴィオラは問題となっているページを開くと、自ら読み始めた。
『ある日、マリアが慌てた様子で私を訊ねてきました。
泣きながら、とんでもないことをしてしまったと謝るのです。
どうしたのかと思って尋ねると「今後公爵家には女の子しか生まれない」と言いだしました。
チャーム無効の能力は、公爵家の女の子のみに与えられた祝福です。
その代償として、祝福が与えられない存在、つまり男子が生まれなくなったそうなのです。
一度与えた祝福は変更や取り消しはできないと、マリアは謝り続けました。』
公爵夫人はふらりとよろめくと、椅子にどさりと座り込んだ。
長年の謎であった「ウェスペル家の呪い」の原因が解き明かされたのだから、驚くのも無理はない。
それもまさか、伝説にもなっている公爵家の祖先ユニカ様と聖女マリア様が原因を作っていたのだ。
『私は、祝福にそのような代償があるとは知りませんでした。
子孫たちにとんでもない贈り物をしてしまったと、マリアと共に何か手段がないかと試行錯誤しましたが、
解決策はついに見つかりませんでした。
しかしいろいろと考えている間に、こうも思ったのです。
どうして男子が生まれないことが問題なのか、と。
女子が男子に劣るわけでもないのに、なぜ女の子は家を継げないのでしょう?
私は祝福をどうにかするよりも、社会の構造を変えてしまうことにしました。
あなたの時代には女公爵も当たり前になっていますように。』
ユニカ様はワクワクとした文章で日記にしたためていた。
しかし、何故か今はまだユニカ様が夢見たような未来は来てはいない。
プレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、婿を取り、国や領地を影ながら必死で支えてきたウェスペル家の長女たちがいただけだった。
姉妹たちが出迎えると、母はヴィオラを強く抱きしめた。
「お母様、わたくしは意外と平気ですのよ。」
そう言って笑ったヴィオラの瞼が赤く腫れているのを見て、公爵夫人もまた泣きそうな顔になる。
しかし、ふとフレエシア、リーリウム、プリムラの顔を見ると、みんなそれぞれ瞼を腫らしていた。
「あなたは、良い妹たちを持ったわね。」
ヴィオラにそう言うと他の娘たちに手招きをして、両方の腕で四人をぎゅっと包み込んだ。
使用人たちに簡単な軽食を用意させると、それを朝食としてつまみながら、家族は公爵の書斎で話し合いをもった。
ヴィオラはアンドレアスとの婚約を解消したいことを両親に話すと、二人ともすでに予想はしていたようで、すんなりと了承した。
「ヴィオラのしたいようにさせましょう。
その後のことは大人たちが納めれば良いことです。」
ヴィオラは久しぶりに子どもとして扱われた母の言葉に、くすぐったいような気持ちになった。
いつもであれば、すべて自分で解決しようと意地になっていたかもしれない。
しかし、今日は家族に頼ろうと素直に思えたのだった。
ヴィオラは、両親と、そして改めて妹たちにも丁寧に礼を告げた。
「それでお母様、先日話した日記帳についてなのですが……。」
ヴィオラは両親に『ユニカ様の日記帳』について、今まで起こったことをすべて話した。
「リーリウムが持っていたあの古い日記帳がそんな内容だったなんて。
あの後、リーリウムやヴィオラに内容を尋ねてもずっと誤魔化し続けられていたものだから、
ずっと気になっていたんだよ。」
公爵はほっとしたような、拗ねるような口調で思いを吐き出した。
リーリウムはたびたび図書館にこもっては、読んだ本の内容を丁寧に書いた書類を公爵に提出していたのだが、あの日記帳についてだけは「ヴィオラお姉様が読んでいる」と言って、何度急かされても内容を明かさなかったのだ。
「わたくしも驚いたわ。あの日記帳が本物のユニカ様の日記だったなんて!
そんな魔法みたいな書物だったのなら、あの頃もっとちゃんと読んでおくべきだった。」
公爵夫人は心底残念そうにしている。
当時は何代か前のいたずら好きな当主が遺した創作日記だと思って、二ページほどぱらぱらと読んだだけで気にも留めなかったのだ。
ヴィオラに聞くまでは、その存在すら忘れていた日記帳だった。
「今日、日記帳の内容をお父様とお母様にもお伝えしようと思ったのが、
わたくしたちにあるという、『チャーム無効の祝福』の弊害についてなのです。」
ヴィオラは問題となっているページを開くと、自ら読み始めた。
『ある日、マリアが慌てた様子で私を訊ねてきました。
泣きながら、とんでもないことをしてしまったと謝るのです。
どうしたのかと思って尋ねると「今後公爵家には女の子しか生まれない」と言いだしました。
チャーム無効の能力は、公爵家の女の子のみに与えられた祝福です。
その代償として、祝福が与えられない存在、つまり男子が生まれなくなったそうなのです。
一度与えた祝福は変更や取り消しはできないと、マリアは謝り続けました。』
公爵夫人はふらりとよろめくと、椅子にどさりと座り込んだ。
長年の謎であった「ウェスペル家の呪い」の原因が解き明かされたのだから、驚くのも無理はない。
それもまさか、伝説にもなっている公爵家の祖先ユニカ様と聖女マリア様が原因を作っていたのだ。
『私は、祝福にそのような代償があるとは知りませんでした。
子孫たちにとんでもない贈り物をしてしまったと、マリアと共に何か手段がないかと試行錯誤しましたが、
解決策はついに見つかりませんでした。
しかしいろいろと考えている間に、こうも思ったのです。
どうして男子が生まれないことが問題なのか、と。
女子が男子に劣るわけでもないのに、なぜ女の子は家を継げないのでしょう?
私は祝福をどうにかするよりも、社会の構造を変えてしまうことにしました。
あなたの時代には女公爵も当たり前になっていますように。』
ユニカ様はワクワクとした文章で日記にしたためていた。
しかし、何故か今はまだユニカ様が夢見たような未来は来てはいない。
プレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、婿を取り、国や領地を影ながら必死で支えてきたウェスペル家の長女たちがいただけだった。
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