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地獄の入口
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——あの夜、俺たちはただの遊びのつもりだった。
誰もがそう思っていた。
地獄の入り口が、こんな近くにあるなんて、誰が想像できる?
金曜の夜。
新宿の裏通り。ネオンが滲むアスファルトの上を、俺たちは笑いながら歩いていた。
「飲み直そうぜ!」と叫んだのは、いつもの調子の谷口悠真だ。
金髪にピアス、派手なシャツ。目立ちたがりで、でも憎めない。
「お前、酔いすぎ。もう二軒目だろ」
そう言って苦笑するのは、メガネを直しながら歩く中野翔。
この三人の中では一番まともで、止め役。
そしてその少し後ろを、静かに歩いているのが桐島蓮だ。
口数が少なく、いつも何かを観察しているような目をしている。
俺、久我晴人はその真ん中にいた。
軽く酔いが回って、街の光がやけに鮮やかに見えた。
「なぁ、見ろよ。あの人。」
谷口が突然立ち止まった。
指差した先にいたのは、街灯の下、白いワンピースの女だった。
長い黒髪が夜風に揺れ、片手には煙草。
細い指先が火を灯す仕草に、通りすがりの男たちの視線が吸い寄せられる。
「やば……めっちゃ美人じゃね?」
谷口が口笛を吹く。
中野が眉をひそめる。
「やめとけ。ああいうタイプ、絶対面倒だって」
だが、谷口はもう聞いていない。
「お前行けよ、晴人。こういうの、お前得意じゃん?」
「得意って……俺、そんなキャラじゃねぇよ」
笑って流そうとしたが、視線はもう彼女から離れなかった。
その瞬間、女がふとこちらを見た。
黒目がちの瞳。
夜のネオンが映り込んで、まるで水面みたいに揺れる。
「……行けって。チャンス逃すな!」
谷口の背中押し。
俺は一歩、前に出てしまった。
「こんばんは。ひとり?」
自分の声が、思ったより震えていた。
女は一瞬、無表情のまま煙を吐いた。
その白い煙が、街灯の光の中でゆらゆらと形を変える。
「……あなたたち、退屈なのね。」
その言葉を聞いた瞬間、背筋に冷たいものが走った。
挑発でもなく、軽蔑でもなく。
まるで、未来を見透かしているような声だった。
「い、いや……そういうわけじゃ……」
何か言い訳を探す俺を、谷口たちは遠くからニヤニヤ見ている。
女はゆっくりと笑った。
唇の赤が、街灯の下で異様に映えて見えた。
「いいわ。少しだけ付き合ってあげる。」
それがすべての始まりだった。
誰もがそう思っていた。
地獄の入り口が、こんな近くにあるなんて、誰が想像できる?
金曜の夜。
新宿の裏通り。ネオンが滲むアスファルトの上を、俺たちは笑いながら歩いていた。
「飲み直そうぜ!」と叫んだのは、いつもの調子の谷口悠真だ。
金髪にピアス、派手なシャツ。目立ちたがりで、でも憎めない。
「お前、酔いすぎ。もう二軒目だろ」
そう言って苦笑するのは、メガネを直しながら歩く中野翔。
この三人の中では一番まともで、止め役。
そしてその少し後ろを、静かに歩いているのが桐島蓮だ。
口数が少なく、いつも何かを観察しているような目をしている。
俺、久我晴人はその真ん中にいた。
軽く酔いが回って、街の光がやけに鮮やかに見えた。
「なぁ、見ろよ。あの人。」
谷口が突然立ち止まった。
指差した先にいたのは、街灯の下、白いワンピースの女だった。
長い黒髪が夜風に揺れ、片手には煙草。
細い指先が火を灯す仕草に、通りすがりの男たちの視線が吸い寄せられる。
「やば……めっちゃ美人じゃね?」
谷口が口笛を吹く。
中野が眉をひそめる。
「やめとけ。ああいうタイプ、絶対面倒だって」
だが、谷口はもう聞いていない。
「お前行けよ、晴人。こういうの、お前得意じゃん?」
「得意って……俺、そんなキャラじゃねぇよ」
笑って流そうとしたが、視線はもう彼女から離れなかった。
その瞬間、女がふとこちらを見た。
黒目がちの瞳。
夜のネオンが映り込んで、まるで水面みたいに揺れる。
「……行けって。チャンス逃すな!」
谷口の背中押し。
俺は一歩、前に出てしまった。
「こんばんは。ひとり?」
自分の声が、思ったより震えていた。
女は一瞬、無表情のまま煙を吐いた。
その白い煙が、街灯の光の中でゆらゆらと形を変える。
「……あなたたち、退屈なのね。」
その言葉を聞いた瞬間、背筋に冷たいものが走った。
挑発でもなく、軽蔑でもなく。
まるで、未来を見透かしているような声だった。
「い、いや……そういうわけじゃ……」
何か言い訳を探す俺を、谷口たちは遠くからニヤニヤ見ている。
女はゆっくりと笑った。
唇の赤が、街灯の下で異様に映えて見えた。
「いいわ。少しだけ付き合ってあげる。」
それがすべての始まりだった。
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