#ヤクザの女に手を出した大学生

シロタカズキ

文字の大きさ
2 / 69

白いワンピースの女

しおりを挟む
バーの中は、琥珀色のボトルが並ぶ静かな空間だった。
夜更けの新宿。
酔いとネオンの残光の中、俺たちはその女——水城美咲と向き合っていた。

「学生なの?」
彼女がそう言った時の微笑みは、どこか遠いものを見ているようだった。

「ええ、まぁ。大学で心理学を……」
「ふふ。心理学って、人の心を覗く学問でしょ?」
「そうですね。でも、実際には自分の心のほうが難しいですよ」

「そう。——じゃあ、覗いてみる?」
美咲の瞳が、真っ直ぐ俺を見た。
まるで、こちらが“測られている”ような気がした。

谷口が笑いながらウイスキーを飲み干す。
「ははっ、なんか大人っぽいっすね。姐さんって感じ!」
「姐さん?」
「いや、冗談っすよ、冗談!」

だが、その瞬間、美咲の表情がほんの一瞬だけ固まった。
それを見逃したのは谷口だけだった。

——その時、バーのドアが、鈍い音を立てて開いた。

その瞬間、空気が変わった。

黒のスーツ。整った髪。
歩くたびに床が軋むような錯覚を覚える。
入ってきた男の存在だけで、店の音楽が止まったように感じた。

「……探したぞ。」

女——水城美咲の手が、小さく震えた。
「篠崎さん……」
「連絡、入れろと言ったよな。」
「……すみません。少し、話してただけです。」

男はゆっくりとこちらに視線を向けた。
冷たい、研ぎ澄まされた目。
まるで“獲物を確認する刃”のようだった。

「話?」
静かな声だった。
怒鳴っていない。
それなのに、全員の背筋が固まった。

「お前ら、学生か?」
「は、はいっ! そうです!」谷口が慌てて答える。
「誰が誘った。」
「え、えっと……その、俺ら全員で……」

篠崎は笑わなかった。
グラスの中の氷が、コトンと音を立てる。

「……どいつが、最初に声をかけた?」
沈黙。
視線が自然と晴人に集まる。

「……俺です。」
晴人は喉の奥が焼けるように乾いていた。
「そうか。」

篠崎はゆっくりと歩き、カウンター席とテーブルの間を抜ける。
店内の空気が沈んでいく。
近くの客が小さく息を呑む音すら、やけに響いた。

彼は晴人の前に立った。
表情は穏やかで、しかし瞳の奥は一切笑っていない。

「俺の女に、触れたのか?」

「い、いえ……! そういうつもりじゃ……」
「あ?」
篠崎の声が低く落ちた。
「くだらねえいいわけしてっとぶっ殺すぞガキぃ」

晴人の肩に、篠崎の手が置かれた。
力は入っていない。だが、それだけで全身が硬直する。

「お前、名前は?」
「……久我です。」
「そうか。久我な。」

篠崎の口元が、わずかに歪んだ。
笑みかと思った。
だがそれは、怒りを押し殺した笑みだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...