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山本組
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夜の帳が落ちた頃、篠崎は山本組本部ビルの最上階へ向かった。
警察署を出て、まだ数時間しか経っていない。
応接室の扉をノックすると、山本剛がグラスを傾けていた。
氷が当たる控えめな音が、部屋の静けさに馴染む。
「……お疲れさまです、親父」
篠崎が頭を下げる。
いつも通り落ち着いた声だったが、その奥にわずかな緊張が滲んでいる。
山本は視線を向けずに、ゆっくりとグラスを回した。
「緊張するな。叱るつもりで呼んだわけじゃない」
「今回の件……ご迷惑を」
「迷惑?」
山本はそこで初めて笑った。声ではなく、目尻だけがわずかに動く微笑。
「亮介、お前が“迷惑”と呼ぶには、まだ小さい」
篠崎は沈黙した。
彼にはわかっている。
今日、自分が釈放された事実は、“何かが裏で動いた”結果だ。
山本はグラスを置き、こちらを真正面から見た。
「俺が動いたと思っているな?」
「……違うのですか」
「動いたのは“流れ”だ。私は、少し触れただけだよ」
“触れただけ”。
それで警察の判断が変わる。それがこの男の存在の重さだった。
篠崎は背筋を伸ばし、深く頭を下げた。
「……貸し、作ってしまいましたね、親父」
「違うな」
山本はゆっくりと立ち上がる。
「恩だ。貸しは利息がつく。恩は返したくなる。——その違いを、覚えておけ」
篠崎は黙り込んだまま、深く頭を下げた。
警察署を出て、まだ数時間しか経っていない。
応接室の扉をノックすると、山本剛がグラスを傾けていた。
氷が当たる控えめな音が、部屋の静けさに馴染む。
「……お疲れさまです、親父」
篠崎が頭を下げる。
いつも通り落ち着いた声だったが、その奥にわずかな緊張が滲んでいる。
山本は視線を向けずに、ゆっくりとグラスを回した。
「緊張するな。叱るつもりで呼んだわけじゃない」
「今回の件……ご迷惑を」
「迷惑?」
山本はそこで初めて笑った。声ではなく、目尻だけがわずかに動く微笑。
「亮介、お前が“迷惑”と呼ぶには、まだ小さい」
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彼にはわかっている。
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「俺が動いたと思っているな?」
「……違うのですか」
「動いたのは“流れ”だ。私は、少し触れただけだよ」
“触れただけ”。
それで警察の判断が変わる。それがこの男の存在の重さだった。
篠崎は背筋を伸ばし、深く頭を下げた。
「……貸し、作ってしまいましたね、親父」
「違うな」
山本はゆっくりと立ち上がる。
「恩だ。貸しは利息がつく。恩は返したくなる。——その違いを、覚えておけ」
篠崎は黙り込んだまま、深く頭を下げた。
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