#ヤクザの女に手を出した大学生

シロタカズキ

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友の死

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薄暗い斎場。線香の香りが重く立ち込める中、久我晴人、中野翔、桐島蓮の三人は、喪服に身を包み、谷口悠真の遺影を見上げていた。遺影の中で笑う悠真は、つい先日まで「ナンパ王」を自称し、軽薄なノリで皆を引っ張っていた、いつもの彼だ。その死因は、警察からは「窒息死」、そして「不審な事故」として処理された。

焼香を終え、斎場の隅で三人は沈黙していた。弔問客の話し声が、遠い世界のことのように聞こえる。

中野 翔が、震える声で口火を切った。彼のメガネの奥の目は充血し、絶えず周囲を警戒している。

「あれは、事故なんかじゃない。悠真は、あの時の件で…やられたんだ。俺たちがあの女に声なんかかけなければ、あんなことにならなかったのに…」

中野は自責の念に押し潰されそうになっている。彼は元々常識人で、ナンパに乗り気ではなかった。それでも今、恐怖と罪悪感に蝕まれている。

桐島 蓮は、白い菊の花をじっと見つめながら、冷静だが深い絶望を滲ませた口調で応じた。彼の知性も、裏社会の暴力の前では無力だった。

「当たり前だろ。死に方が、あまりにも異常だ。警察もろくに捜査してない。あのヤクザは、俺たちが想像してたような『チンピラ』なんかじゃない。奴はルールを逸脱した場所にいるんだ。」

久我 晴人は、棺の置かれた祭壇から目を離せない。彼の心は悼みと罪悪感で満たされていた。

「俺のせいだ。俺があの日飲みに誘わなければ悠真は…」

「違う、晴人」桐島が低い声で言った。「ターゲットは悠真だけじゃない。次は俺達のうちの誰かだ。」

桐島の指摘は鋭い。彼らの間の“軽いノリ”が、一人の友人の命を奪い、残された彼ら自身の命をヤクザの脅威にさらしている。

その時、控え室のドアがわずかに開き、藤堂玲奈がそっと入ってきた。彼女も喪服姿だが、その表情は悲しみに暮れる他の弔問客たちとは明らかに異質だった。

彼女はまっすぐに晴人の元へ向かってくる。中野と桐島の前で、玲奈は静かに、しかし有無を言わせぬ調子で話しかけた。

「晴人くん、顔色が悪いよ。もうこれ以上、危ないことに近づいちゃだめだよ」

玲奈は、中野や桐島には目もくれず、晴人の腕にそっと触れた。

「ねぇ、怖いよね。こんな悲しいこと、もう二度と起こらないようにしなきゃ。だから、私から離れないで。私が、晴人くんのこと守ってあげる。」

彼女の「心配」は、もはや愛の形をした監視と脅迫だった。

晴人は、友人の死の悲しみと、玲奈の重すぎる執着、そして桐島の言葉が示す次なる自分の危機に挟まれ、身動きが取れない。彼の軽はずみな行動が、死の淵へと彼を引きずり込み始めたのだった。
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