#ヤクザの女に手を出した大学生

シロタカズキ

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亀裂の旋律

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高層ビルの最上階、夜景を冷たく見下ろす東雲司のオフィスは、静謐な支配の香りに満ちていた。しかし、その静寂を破るように、デスクの上の端末が一度だけ短く震えた。

東雲は手袋をはめた指先で画面をなぞり、内容を確認すると、深い溜息と共にそれを置いた。正面に控える二人の私兵、阿久津剛と蜂須賀湊に視線を向ける。

「……美咲から連絡が入った」
東雲の声は、氷を滑らせるように冷ややかだった。
「高槻という小虫が彼女を襲い、その報復として、篠崎が直々に奴を仕留めたそうだ。」

阿久津が無言のまま、岩のように動かず東雲の言葉を待つ。対照的に、蜂須賀は首にかけたヘッドホンを弄りながら、楽しげに目を細めた。

「それだけじゃない」
東雲は眼鏡のブリッジを押し上げ、言葉を継ぐ。
「篠崎は、高槻が美咲の領域に踏み込めたのは、私の管理ミスだと判断したらしい。……今、こちらに向かっている」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、阿久津の全身から「殺気」という名の圧力が放たれた。彼はスリムスーツのボタンを外し、いつでも動けるよう重心を落とす。
「やるなら、やるだけだ。東雲さんに危害を加えるなら、誰であろうと徹底的に排除する」
阿久津の言葉には、迷いも恐怖もなかった。

「あはは! ついに若頭直々のお出まし? 興奮しちゃうなあ」
蜂須賀が軽薄な笑い声を上げながら、デスクの下から重厚なアタッシュケースを引き出した。ラッチが外れる鋭い音が室内に響く。彼が取り出したのは、裏ルートで調達された漆黒の短機関銃(マシンガン)だった。
「この子が火を吹く時を待ってたんですよ。あの『暴力の化身』を、蜂の巣のデバッグ品にしてあげますね」

銃身を愛おしそうに撫でる蜂須賀に対し、東雲は沈痛な面持ちで頷いた。
「篠崎に対抗するには、もはや物理火力しかないだろう。……ったく、九条の奴め。こんな肝心な時に音信不通とは。所詮は金で動くネズミか」

東雲は窓の外、都会の闇を睨みつけた。
暴力という名の嵐が、すぐそこまで迫っていた。
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