#ヤクザの女に手を出した大学生

シロタカズキ

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雨の護送車

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降りしきる雨が、アスファルトを黒く塗りつぶしていた。
赤光を放つパトカーの列が、重苦しいサイレンを響かせながら深夜の埠頭を直走る。先頭の車両後部座席には、手錠をかけられた篠崎亮介が深く腰掛けていた。

顎の傷痕が、窓を流れる街灯の光に照らされて白く浮き上がる。
バックミラー越しに、運転席の結城湧斗が鋭い視線を投げかけた。その瞳には、ようやく宿敵を捕らえたという執念と、若さゆえの正義感が燃えていた。

「観念しろ、篠崎。お前が積み上げた暴力も、ここまでだ。今度こそ終わりなんだよ」

結城の声は、密閉された車内で低く響いた。
後続のパトカーには、東雲司と、蜂須賀湊が収容されている。山本組の支配構造を支える中枢が、今まさに法の檻へと引きずり込まれようとしていた。

だが、篠崎は動じない。
メンソールの煙がないことを惜しむように小さく息を吐くと、薄く笑みを浮かべた。

「終わり、か。……若すぎるな、結城。」

その瞬間だった。

激しい金属音が夜気を引き裂いた。
横合から突っ込んできた大型のオフロード車が、護送車列の中ほどに強烈なタックルを見舞ったのだ。結城がハンドルを必死に切るが、衝撃でパトカーがスピンし、ガードレールに叩きつけられる。

「なんだ……!? 応援要請、こちら結城! 襲撃だ!」

結城が無線に叫ぶよりも早く、パトカーのドアが、凄まじい力で外側からこじ開けられる。そこに立っていたのは、一九〇センチ近い巨躯をブラックスーツに包んだ男――重松厳だった。

「若頭。お迎えに上がりました」

重松の声には抑揚がない。彼は結城の銃口が自分に向けられるよりも速く、その太い腕で結城を殴り、気絶させた。事務作業でもこなすような、冷徹で無駄のない暴力だった。

「ヒヒッ! 俺達を追いかけて来れるかな、お巡りさんたち!」

続いて現れた蛇喰零が、スカジャンのポケットから取り出した発煙弾を路面に叩きつける。辺りは一瞬で白煙に包まれ、後続のパトカーから降りようとした警官たちの視界を奪った。

煙の中から、騒ぎに乗じて東雲司が悠然と姿を現した。彼は汚れ一つないスーツを整え、不敵な笑みを浮かべる蜂須賀と共に、その場から逃走する。

重松の手によって車外へ連れ出された篠崎は、動けない結城の傍らで立ち止まった。

「結城。裏の世界には、間違いを正す手段が一つしかない。暴力だ。お前たちが最も忌み嫌い、そして最後には頼らざるを得ない力だ」

黒塗りの車が、水飛沫を上げて闇の中へと消えていく。
残されたのは、大破したパトカーと、虚しく回転し続ける赤色灯の光だけだった。
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