魔王の腹心だけど、実は王国のスパイです。

シロタカズキ

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黒鉄の咆哮

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影から現れたジークは、ゆっくりと魔王城前の広場に歩み出た。
空気が、重く、沈む。黒い瘴気を纏った彼の姿を見て、周囲の魔族たちがざわめく。

「……この気配、何者だ?」

地の底から響くような声が降ってくる。
鉄と魔力が混ざり合った重低音――それは《黒鉄の猛獣》、グルヴァ・バスタルドの咆哮だった。

魔王の命により、城門前を守る“番犬”たるグルヴァが、その巨躯を揺らして姿を現す。
漆黒の魔鋼に覆われた三つの頭が、ジークを警戒するようにうなりを上げた。

「貴様……主の敵か。ならば、此処を通す訳にはいかぬ」

ジークは、返さない。ただ無言のまま《神魔剣エクレシア・ノクス》を抜く。
抜剣と同時に、大地を割るほどの瘴気と聖光が交錯し、空間が軋んだ。

三つの頭が、同時に吠える。

「構えろ――《戦術連携:黒牙連破》!」

前頭部が灼熱の突進を放ち、左の頭が氷の牙で足を狙い、右の頭が呪いの魔眼で意識を乱す。
魔王軍の精鋭でも回避不能とされる三段同時攻撃が、ジークに襲いかかる!

だが。

ジークの瞳が白と黒に反転した。瞬間、光と闇が交錯し、《神魔断罪剣(アポカリプス)》が解き放たれる。

一閃。
黒鋼の装甲ごと、灼熱の咆哮ごと、呪いの視線ごと――斬り払う断罪の斬撃。

衝撃波で魔王城の門がきしみ、空が震えた。

三つの頭が、それでも吠える。「まだだ――まだ我らは倒れぬ!」

しかし、ジークはすでに距離を詰めていた。斬撃の余韻の中、剣を逆手に構える。

「貴様らに、選別の余地はない。秩序に背いた者は、ただ消える」

グルヴァの右頭が魔力吸収で反撃を狙うも、剣がすでにその首を斬り落としていた。

断罪は、無慈悲に。

左頭、次いで前頭が爆ぜるように弾け、グルヴァの巨体が膝をついた。

ジークは背を向け、魔王城の扉を見据えた。

グルヴァの巨体が崩れ落ちる音だけが、静寂の中に響いた。
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