魔王の腹心だけど、実は王国のスパイです。

シロタカズキ

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毒牙と断罪

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焦げた魔血の匂いが立ち込める広場に、重く湿った気配が漂う。

その中央、黒銀の鎧に身を包んだジークが佇む。《神魔剣エクレシア・ノクス》から滴る瘴気が、石畳を焼き焦がしていた。

「……ここから去れ。忌まわしき者よ」

蛇のように這う声が、地を這って響いた。
広場の地下を割るようにして現れたのは、全長五十メートルに及ぶ双頭の大蛇――《呪われし大蛇》ヴァルガ・ネフィリム。

その片頭が毒を垂らし、もう片方が呪詛の霧を吹き出す。見る者すら怯む圧倒的な魔性の化身だ。

「我は魔王の呪詛と毒を統べる獣……その血の匂い、神にも魔にも属さぬ異形よ。裁かれるべきは、お前ではないのか?」

ジークは応えない。白黒に反転した瞳が、ゆるやかにヴァルガを見据える。

「構えろ、《聖魔融合形態(リヴェレーション)》」

刹那、堕星の翼が背に広がった。
重なる黒と光の環が天地を包み、ジークの身体能力が爆発的に跳ね上がる。

ヴァルガの双頭が同時に咆哮。

「《絶望の猛毒》!」

「《呪詛の吐息》!」

咬みつきと共に、広場全体に毒霧と呪いの瘴気が拡散する――が、ジークの周囲に展開された《聖なる盾:断罪形態》がそれを遮断した。

「毒も呪いも、裁きの前では意味をなさぬ」

ジークが跳ぶ。空を断ち、蛇の背へ着地すると、黒翼が尾を巻くように展開され、斬撃が落ちる。

「《神魔断罪剣(アポカリプス)》」

斬られたのは“存在意義”――
再生を繰り返してきたヴァルガの身体が、まるで“この世界に存在しなかったかのように”霧散していく。

「我が呪いは……まだ……終わらぬ……」

呻くようにして溶け消えた双頭の蛇。
だが、ジークはすでに剣を振り直していた。

周囲にうろたえる魔族たちもまた“裁きの対象”に認定された。

「光と影の審判(ジャッジメント・エンド)」

天が割れた。
空より降り注ぐ白と黒の光線が、裁きの基準により敵と認定された全魔族を貫いていく。

逃げ惑うもの、抗おうとするもの、祈りを捧げるもの――誰一人として例外はなかった。

魔族たちは、その存在ごと“裁かれ”、跡形もなく消えていく。

広場には、ただ、風だけが吹いていた。

そしてその中心に、黒銀の鎧の堕ちた勇者だけが、静かに剣を突き立てていた。
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