93 / 158
毒牙と断罪
しおりを挟む
焦げた魔血の匂いが立ち込める広場に、重く湿った気配が漂う。
その中央、黒銀の鎧に身を包んだジークが佇む。《神魔剣エクレシア・ノクス》から滴る瘴気が、石畳を焼き焦がしていた。
「……ここから去れ。忌まわしき者よ」
蛇のように這う声が、地を這って響いた。
広場の地下を割るようにして現れたのは、全長五十メートルに及ぶ双頭の大蛇――《呪われし大蛇》ヴァルガ・ネフィリム。
その片頭が毒を垂らし、もう片方が呪詛の霧を吹き出す。見る者すら怯む圧倒的な魔性の化身だ。
「我は魔王の呪詛と毒を統べる獣……その血の匂い、神にも魔にも属さぬ異形よ。裁かれるべきは、お前ではないのか?」
ジークは応えない。白黒に反転した瞳が、ゆるやかにヴァルガを見据える。
「構えろ、《聖魔融合形態(リヴェレーション)》」
刹那、堕星の翼が背に広がった。
重なる黒と光の環が天地を包み、ジークの身体能力が爆発的に跳ね上がる。
ヴァルガの双頭が同時に咆哮。
「《絶望の猛毒》!」
「《呪詛の吐息》!」
咬みつきと共に、広場全体に毒霧と呪いの瘴気が拡散する――が、ジークの周囲に展開された《聖なる盾:断罪形態》がそれを遮断した。
「毒も呪いも、裁きの前では意味をなさぬ」
ジークが跳ぶ。空を断ち、蛇の背へ着地すると、黒翼が尾を巻くように展開され、斬撃が落ちる。
「《神魔断罪剣(アポカリプス)》」
斬られたのは“存在意義”――
再生を繰り返してきたヴァルガの身体が、まるで“この世界に存在しなかったかのように”霧散していく。
「我が呪いは……まだ……終わらぬ……」
呻くようにして溶け消えた双頭の蛇。
だが、ジークはすでに剣を振り直していた。
周囲にうろたえる魔族たちもまた“裁きの対象”に認定された。
「光と影の審判(ジャッジメント・エンド)」
天が割れた。
空より降り注ぐ白と黒の光線が、裁きの基準により敵と認定された全魔族を貫いていく。
逃げ惑うもの、抗おうとするもの、祈りを捧げるもの――誰一人として例外はなかった。
魔族たちは、その存在ごと“裁かれ”、跡形もなく消えていく。
広場には、ただ、風だけが吹いていた。
そしてその中心に、黒銀の鎧の堕ちた勇者だけが、静かに剣を突き立てていた。
その中央、黒銀の鎧に身を包んだジークが佇む。《神魔剣エクレシア・ノクス》から滴る瘴気が、石畳を焼き焦がしていた。
「……ここから去れ。忌まわしき者よ」
蛇のように這う声が、地を這って響いた。
広場の地下を割るようにして現れたのは、全長五十メートルに及ぶ双頭の大蛇――《呪われし大蛇》ヴァルガ・ネフィリム。
その片頭が毒を垂らし、もう片方が呪詛の霧を吹き出す。見る者すら怯む圧倒的な魔性の化身だ。
「我は魔王の呪詛と毒を統べる獣……その血の匂い、神にも魔にも属さぬ異形よ。裁かれるべきは、お前ではないのか?」
ジークは応えない。白黒に反転した瞳が、ゆるやかにヴァルガを見据える。
「構えろ、《聖魔融合形態(リヴェレーション)》」
刹那、堕星の翼が背に広がった。
重なる黒と光の環が天地を包み、ジークの身体能力が爆発的に跳ね上がる。
ヴァルガの双頭が同時に咆哮。
「《絶望の猛毒》!」
「《呪詛の吐息》!」
咬みつきと共に、広場全体に毒霧と呪いの瘴気が拡散する――が、ジークの周囲に展開された《聖なる盾:断罪形態》がそれを遮断した。
「毒も呪いも、裁きの前では意味をなさぬ」
ジークが跳ぶ。空を断ち、蛇の背へ着地すると、黒翼が尾を巻くように展開され、斬撃が落ちる。
「《神魔断罪剣(アポカリプス)》」
斬られたのは“存在意義”――
再生を繰り返してきたヴァルガの身体が、まるで“この世界に存在しなかったかのように”霧散していく。
「我が呪いは……まだ……終わらぬ……」
呻くようにして溶け消えた双頭の蛇。
だが、ジークはすでに剣を振り直していた。
周囲にうろたえる魔族たちもまた“裁きの対象”に認定された。
「光と影の審判(ジャッジメント・エンド)」
天が割れた。
空より降り注ぐ白と黒の光線が、裁きの基準により敵と認定された全魔族を貫いていく。
逃げ惑うもの、抗おうとするもの、祈りを捧げるもの――誰一人として例外はなかった。
魔族たちは、その存在ごと“裁かれ”、跡形もなく消えていく。
広場には、ただ、風だけが吹いていた。
そしてその中心に、黒銀の鎧の堕ちた勇者だけが、静かに剣を突き立てていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる