魔王の腹心だけど、実は王国のスパイです。

シロタカズキ

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影の報告、賢王の決断

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蒼き炎が揺らめく玉座の間。
静寂を切り裂くように、黒衣の影が現れた。

「……入ります。《魔王の影》、参上しました」

ルシアン・ヴァルグリム。
白銀の髪が揺れ、紅い瞳が一同を見渡す。

「報告を」
玉座の主、《蒼き賢王》レグナス・ディアヴェルが静かに命じる。

ルシアンは膝をつき、低く、冷ややかに告げた。

「……勇者ジーク・ヴァルトハイムが、魔王城に侵入しました」

沈黙。

その言葉が意味するものを、全員が即座に理解した。

「……ほう、遂に来たか」
レグナスは瞼を閉じ、蒼銀の髪を揺らしながら静かに息を吐いた。

「勇者が直接来るとはな……我らの喉元に、剣を突きつける覚悟か」
重厚な声が響いたのは、《魔王の盾》セリオス・ベルガードだった。
剣に手を添え、ルシアンを一瞥する。

「なぜ、貴様が事前に察知できなかった? 影を名乗るにはお粗末だな」

「……奇妙な瘴気により、彼の気配は通常の観測をすり抜けていました。正確には、“かつてのジーク”ではありません」
ルシアンは冷静に返しつつも、内心の焦燥を隠せない。

「奴は《堕星》――神性と魔性が融合した、異端の存在です。恐らく、王国が何らかの禁術を用いたかと」

「ふふ、面白い」
艶やかな声が響いた。
《監視者》エリザ・ノクターナが唇を舐め、妖艶な笑みを浮かべる。

「じゃあ、今の“彼”は……誰の命令で動いてるの? 王国?それとも、もっと別の何かかしら」

「……奴は“秩序”という名の滅びを望んでいるようです」
ルシアンの言葉に、幹部たちの顔色が変わる。

「こりゃあ、楽しくなってきたな」
《黒獅子将軍》ガルヴァス・ドレイクが腕を組み、うなるように言う。

「正面突破で来たってことは……俺たち全員が、獲物ってわけだ」

「その通り」
《災厄の魔導士》アルドリク・フェルミナスが、冷たい瞳で呟く。

「この城を舞台に《神魔融合体》の動きを観察できるとは……我が研究人生でも、稀なる機会だな。解剖してみたい」

「……お前の趣味は後だ、アルドリク」
ルシアンは皮肉を込めて応じつつ、魔王を見やる。

「魔王陛下、処置を。全軍に“戒厳令”を敷き、戦闘態勢へ移行させるべきです」

レグナスは立ち上がった。
その動きだけで、空気が凍りついたように緊張する。

「ならば命ずる――《堕星の勇者》ジーク・ヴァルトハイムの排除を開始する」

「全軍、配置につけ」
セリオスが命じ、兵士たちが動き出す。

「ふふ……まるで“終焉の宴”ね」
エリザは舞踏会のように、艶やかに笑った。

ルシアンは、心の奥で何かがきしむのを感じた。
《神魔融合体》となった元勇者と、自分――《人魔融合》のスパイ。

彼が次に立つのは、どちらの側か。
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