田舎土魔法使いの成り上がり ~俺は土属性しか使えない。孤独と無知から見出した可能性。工夫と知恵で最強に至る~

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第38話 グラムという男

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これは、グラムという名の男の話。

ある貴族の末席に生まれたグラムは、才能に恵まれなかった男であった。勉学は出来ず、運動も苦手だ。人との争い事は好まず、花や動物をこよなく愛した。

そんなグラムだが、人柄を好む人間も多く、小さな頃から周囲に好まれた。


だが行き着いた場所が悪かった。
幼い男の子を被虐する事を好む、中年女性にグラムは拾われたのだ。貴族の末席であるが故に、自由な発想をする事が出来ず、家の繋がりの為に、グラムは幼いその身体と心を捧げたのだ。

8歳から14歳まで、そこで徹底的に人格を否定された。そこには何人もの子供がいたが、特にグラムは被虐を受けた。運動や学が無く、ただただ優しい。そのグラムたら占める要因が中年女性を惹きつけたのかもしれない。だが、グラムはその優しい性格を変えずに過ごした。周囲の子供たちを慰め、時に庇う事も多くあった。土魔法の適性がある事に気付いたのも、優しいきっかけだった。


その中年女性は、都市間での需要の差を商売にしていた。塩が足りない所に塩を売り、香辛料が足りない所に香辛料をと言った形だ。

ある時、商いで馬車に乗っている際に、魔物に襲われた。…商売敵が中年女性の事を恨み、手配したモノであった。そこに居合わせたグラムが精一杯抵抗し、中年女性を逃がそうとする。その時ですら、「使えない奴だ!壁に成れ!!」。そんな事をグラムに言い放った。勿論、警備の者も居たが敵わず、ついに中年女性にゴブリンが襲い掛かった時、グラムは覚醒した。

土の壁を出し、ゴブリンの突進を防いだ。呆然とする周囲。

しかし、グラムの目はゴブリンを再度捉える。次の瞬間には石や泥を相手に付けて行き、動きを封じた。グラムが初めて戦闘した瞬間であった。ゴブリンすら殺さずに戦いを終えた。その戦い方は、グラムそのものであった。


その出来事から、中年女性は少しづつ、日々の関わりを変えて行く。虐げる事を止め、優しい言葉が増えていく。その事に感謝する周囲。それでも何も変わらずにそのままの生活をしていくグラム。


グラムが15の時、中年女性が病気で亡くなってしまう。それを悲しむグラム。それを予期していた中年女性が魔法学園を推薦して入れてくれた。最後には後悔の念を話していた。

「グラム、今迄すまなかったね…。私は子供を亡くしてから…こうなった。しっかりと…恨んでくれよ?」

「私は家を出てから…母の面影を貴方に重ねてました。嫌われているのかと思っていましたが…、今ではこんなにも優しくなってくれたではありませんか。最後の一年、私は本当に…本当に幸福でした。8歳からの7年間、誠にありがとうございました…母上。」

「ああ…私は幸福です、息子よ…」

そう言って中年女性は亡くなった。財産を引き継ぎ、学園に通うグラム。家の皆も応援していた。

魔法学園。そこでは多くの友人に出会えた。成績は低いが、周囲の信頼は厚かった。学生の時分ではあるが都度大戦に駆り出される。その度に壁役となり、友人を守り抜いてきた事が評価されていく。

いつしか【鉄壁のグラム】とあだ名され、単なる壁役では無くなっていた。時に少数精鋭で攻める時、時に重要人物を守る時。グラムは力を発揮した。


グラム自身、人を守る事に特化した人間であった。心根が幼い時から変わらず、会う人の全てを助けようとした。魔族や敵ですらも殺さずにおり、敵の中にも知り合いが生まれた。

その優しさが仇となる。いつもの通り大戦の戦場に赴いたグラム。そこには周辺の村を襲っていた魔族たちがいた。それを止めようとするグラムの前に、以前助けた魔族が居た。

その行動を咎めるグラム。それを聞き、侵略を止める魔族の兵士。だが、その後ろにいた魔術師が状況を良いと思わずにいた。

部下の兵士たちを操り、グラムを襲わせたのだ。

泣いて、嫌がる兵士たち。魔術師がそれを喜び、身体を崩壊させてもグラムに突っ込ませていく。

それを見たグラムは、抵抗を止め、甘んじて殺された。

魔族の兵士は発狂し、その後に魔術師へ反旗を翻した。

グラムを殺された報告を受けた友人達は奮起し、その魔術師を討伐しようとするも逃がしてしまう。

原因の魔術師は逃げ、それと同時にグラムの遺体も姿を消した。

次に友人が見た時には、簡単なダンジョンの深層を守るグラムの姿であった。友人たちはこのダンジョンを守る事を決め、グラムを倒す事は許されず、そのダンジョンは王国の初心者用のダンジョンと化していた。

それがグラムの迷宮となる。

~~~~~~~~~~~~~~

こういった流れで、今に至るという。

「前代の土の子であるグラムは、本当に優しい子じゃった。ガイアの加護を受けたにしても、決して争いには向かない性格じゃった。」

「ガイアの加護・・・?」

「何じゃ。まだわからぬか。それは・・・・・」


「…また今度じゃ。」

「え?」

「…また今度。そう言っておる。」

「そんな・・・気になります!」

「…それでもじゃ。自分でも少し調べて見よ。」

「・・・はい。分かりました。」

「それじゃ、行くのじゃ。少しばかりの回復した友人をすぐに治療するのじゃぞ。ダンジョンの奥には試練後の報酬がある。持っていくのじゃ。」

「・・・また会えますか?」

「…無論じゃ。」

「それでは・・・ありがとうございました。また会いに来ます。」

「…それじゃあの。」

そう言って光がアルを包んでいく。

「どうじゃ?アマラス。」
「ダメですよ。贔屓しちゃ。」

「しかしのう。ガイアの遺言じゃしのう・・」

「遺言って・・。またお得意のですよ?」

「わかっているんじゃがのう・・・」



…光が開けていく。

級友たちが、サガを見守りながら、アルを待っていた。

「アル!!」
「アルピエロ君!」

「…皆、ただいま。今、神様達と話してきた。少し回復してくれたみたいで、サガの命は大丈夫だ。」

「…神…様?」
「深くは言えない。けどサガは無事だ。」

全員から安堵の息が漏れていく。

「…ただ、戦えない。」

強く言う。
「もう・・・サガは戦えない! そういう身体だって・・・・」

アルの目から涙が零れていく。


「先生、私達を守って・・・」
「真っ白になっちゃったね、髪・・」

「どうしたら良いんだろう?」
「私たち弱いし・・・」

アルは言う。
「強くなろう。」

「皆で強くなって、悲しむ事を減らそう。俺、手伝うよ。誰も死んじゃいけないし、大怪我だってして欲しくない。・・・・だから、強くなろう」

そう言うと皆が頷く。
「Fクラスの先輩、セリ先輩が一緒に来てくれた。直ぐにサガを送ってもらおう。・・・俺は奥に用事が出来た。」

アルは皆にサガを託し、奥に入っていく。
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