田舎土魔法使いの成り上がり ~俺は土属性しか使えない。孤独と無知から見出した可能性。工夫と知恵で最強に至る~

waru

文字の大きさ
62 / 63

第62話 人の役とは

しおりを挟む
モモが倒れ、アルは試合終了の笛を待たずに駆け寄っていく。

「…モモ!…モモ!大丈夫か?」

「アル…君。」

「こんなに切られて・・・途中で棄権しろよぉ。」


「…私ね、アル君の役に…立ちたかった…。ここで勝てば…先輩たちの進路に影響するでしょ?それで何が変わるのかは、馬鹿な私は…分からない。けどアル君が喜びそうだなって。そう…思ったの。」


首を振るアル。
「…違う。…違うよ、モモ!…俺は仲間の誰かが…傷付くのは見たくない。もし危なそうなら逃げてくれ。それが一番嬉しいんだ。…いいね?」



「…うん。従うよ、アル君。…指示してくれたのに…それを守れなくてごめんね。…私、馬鹿だから。」


リンが横から飛んでくる。
「…なーに、2人でいちゃついてんのよ!私達だって…いっぱい攻撃されたんだからね?」


アルは、モモの方を見て言う。

「リン…。いや、お前はダメだ。…許せん。」


リンは焦って言う。
「…あれはその…生理的に無理なんだもん。」

アルはリンに向き直り、目をジッと見て言う。

「…リンも身体を大事にしろ。ダメなものはダメだ。カナは腹蹴られるし、モモはズタズタだ。リンだって早く倒せば切られることは無かった。…やるにしても、やり方があるだろう?」



周囲の仲間がそれを聞いて応える。

「「「は~い。」」」

ややあったが、Fクラスの宿舎に戻っていく。疲労を取る者、ダメージを抜く者。様々だ。

食事前に軽く皆で話をしていた。

「それじゃ、夕飯まで休もう。次の試合は明日か。・・・相手はエリの婚約者か。弱ったな。なかなかエリとも話した事ないんだよなあ・・・」


「エリ、呼んでくる?」
「いや、いい。多分婚約者の応援だろう。そっとしておこう」

アズが反応する。
「あの婚約者かー。昔は純粋な子で・・・今もある意味、純粋か。【〇〇しなくちゃ!】って気持ちが強すぎる人なんだよ、カズって人は。」

~~~~~~~~~~~~~~~

‐カズ・レドル‐

C組の筆頭生で3年。リンやアズ達とは旧知の仲。貴族のレドル家の長男ではあるが、レドル家は地域に密着した政治で評判を博し、気取る事は無かった。その為、貴族に良くある自宅でのみの教育では無く幼少か中等部までを一般の学園で過ごした。一般感覚を身に着けて欲しいという親の願いであった。

エリの親は貴族御用達の商人であり、レドル家の当主とは小さな頃からの顔なじみ。エリの祖父は光の戦士としてレドル家を支えた事も有ったという。

そう言った縁故から、幼き頃より縁談が組まれていた。

カズとエリ。
物心ついた時には、どちらにも魔力の素養が見られていたという。

それを見た両親が、「お互いの子を結婚させよう、それによって魔力に秀でた家系にしよう」そう考えたのだ。

幼き頃のカズは、少し気弱で頼りない。そんなカズの横にいるのは、決まってエリであった。

意地悪な子が来ても泣いてしまうカズに対し、抵抗を見せたエリ。幼き頃はエリの方が勝気になり、2歳上のカズでも対等であった。

主体性が無く、遊びもエリが主導していた。そんなエリに隠れるような子であったカズも、魔宝珠による選定で大きく人生が変わる。

カズは光の素養が強く、魔力も膨大に持っていたのだ。対してエリは水属性。魔力もそこまで高くない。そこから2人の人生は少しずつ離れていった。

カズは強くなければいけないと剣を振るう。

エリは無理をしないでと休憩を促す。

カズが力を求める時期に、エリは一緒の思い出を求めた。

カズが知識を求める時期に、エリは未来の相談を求めた。


食い違う2人の会話が、今日のぎこちなさを生んでいる。カズは先に学園に入り、2年が経過した時には、今のような鬼気迫るような迫力でCクラスの筆頭を行っていた。

Bクラスの人間にも負ける事は無いが、魔力の扱いがBクラスには至らず。

様々な技を使用する事は敵わなかったが、一つ一つの技を極めて行くようにし、強さを追い求めていった人間。それがカズ・レドルであった。その特訓の横には常に学園に入る前からエリが傍にいた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

このような事をアズは語ってくれた。

「エリも少し重たい子だからねー。仕方ないんだけど。」

「ちょっと、アズ!やめてよ。友達悪く言うのは。」

「あ、ごめんごめん。」


そんな話の途中に、人の気配に気づく。

「…皆、お客さんだ」

「え?」


「…エリ?」
食堂の入り口にはエリが立っていた。




エリはアルをじっと見つめ、言の葉を紡ぐ。

「…あのね、アル君。今日は…お願いがあってきたの。」


「…なんだ?負けろ、負けてくれは…聞けないぞ?」

「…ううん。違うの。」












「勝って欲しい」

「へ?」

「…圧倒的に。圧倒的に…勝って欲しいの。」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...