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第62話 人の役とは
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モモが倒れ、アルは試合終了の笛を待たずに駆け寄っていく。
「…モモ!…モモ!大丈夫か?」
「アル…君。」
「こんなに切られて・・・途中で棄権しろよぉ。」
「…私ね、アル君の役に…立ちたかった…。ここで勝てば…先輩たちの進路に影響するでしょ?それで何が変わるのかは、馬鹿な私は…分からない。けどアル君が喜びそうだなって。そう…思ったの。」
首を振るアル。
「…違う。…違うよ、モモ!…俺は仲間の誰かが…傷付くのは見たくない。もし危なそうなら逃げてくれ。それが一番嬉しいんだ。…いいね?」
「…うん。従うよ、アル君。…指示してくれたのに…それを守れなくてごめんね。…私、馬鹿だから。」
リンが横から飛んでくる。
「…なーに、2人でいちゃついてんのよ!私達だって…いっぱい攻撃されたんだからね?」
アルは、モモの方を見て言う。
「リン…。いや、お前はダメだ。…許せん。」
リンは焦って言う。
「…あれはその…生理的に無理なんだもん。」
アルはリンに向き直り、目をジッと見て言う。
「…リンも身体を大事にしろ。ダメなものはダメだ。カナは腹蹴られるし、モモはズタズタだ。リンだって早く倒せば切られることは無かった。…やるにしても、やり方があるだろう?」
周囲の仲間がそれを聞いて応える。
「「「は~い。」」」
ややあったが、Fクラスの宿舎に戻っていく。疲労を取る者、ダメージを抜く者。様々だ。
食事前に軽く皆で話をしていた。
「それじゃ、夕飯まで休もう。次の試合は明日か。・・・相手はエリの婚約者か。弱ったな。なかなかエリとも話した事ないんだよなあ・・・」
「エリ、呼んでくる?」
「いや、いい。多分婚約者の応援だろう。そっとしておこう」
アズが反応する。
「あの婚約者かー。昔は純粋な子で・・・今もある意味、純粋か。【〇〇しなくちゃ!】って気持ちが強すぎる人なんだよ、カズって人は。」
~~~~~~~~~~~~~~~
‐カズ・レドル‐
C組の筆頭生で3年。リンやアズ達とは旧知の仲。貴族のレドル家の長男ではあるが、レドル家は地域に密着した政治で評判を博し、気取る事は無かった。その為、貴族に良くある自宅でのみの教育では無く幼少か中等部までを一般の学園で過ごした。一般感覚を身に着けて欲しいという親の願いであった。
エリの親は貴族御用達の商人であり、レドル家の当主とは小さな頃からの顔なじみ。エリの祖父は光の戦士としてレドル家を支えた事も有ったという。
そう言った縁故から、幼き頃より縁談が組まれていた。
カズとエリ。
物心ついた時には、どちらにも魔力の素養が見られていたという。
それを見た両親が、「お互いの子を結婚させよう、それによって魔力に秀でた家系にしよう」そう考えたのだ。
幼き頃のカズは、少し気弱で頼りない。そんなカズの横にいるのは、決まってエリであった。
意地悪な子が来ても泣いてしまうカズに対し、抵抗を見せたエリ。幼き頃はエリの方が勝気になり、2歳上のカズでも対等であった。
主体性が無く、遊びもエリが主導していた。そんなエリに隠れるような子であったカズも、魔宝珠による選定で大きく人生が変わる。
カズは光の素養が強く、魔力も膨大に持っていたのだ。対してエリは水属性。魔力もそこまで高くない。そこから2人の人生は少しずつ離れていった。
カズは強くなければいけないと剣を振るう。
エリは無理をしないでと休憩を促す。
カズが力を求める時期に、エリは一緒の思い出を求めた。
カズが知識を求める時期に、エリは未来の相談を求めた。
食い違う2人の会話が、今日のぎこちなさを生んでいる。カズは先に学園に入り、2年が経過した時には、今のような鬼気迫るような迫力でCクラスの筆頭を行っていた。
Bクラスの人間にも負ける事は無いが、魔力の扱いがBクラスには至らず。
様々な技を使用する事は敵わなかったが、一つ一つの技を極めて行くようにし、強さを追い求めていった人間。それがカズ・レドルであった。その特訓の横には常に学園に入る前からエリが傍にいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
このような事をアズは語ってくれた。
「エリも少し重たい子だからねー。仕方ないんだけど。」
「ちょっと、アズ!やめてよ。友達悪く言うのは。」
「あ、ごめんごめん。」
そんな話の途中に、人の気配に気づく。
「…皆、お客さんだ」
「え?」
「…エリ?」
食堂の入り口にはエリが立っていた。
エリはアルをじっと見つめ、言の葉を紡ぐ。
「…あのね、アル君。今日は…お願いがあってきたの。」
「…なんだ?負けろ、負けてくれは…聞けないぞ?」
「…ううん。違うの。」
「勝って欲しい」
「へ?」
「…圧倒的に。圧倒的に…勝って欲しいの。」
「…モモ!…モモ!大丈夫か?」
「アル…君。」
「こんなに切られて・・・途中で棄権しろよぉ。」
「…私ね、アル君の役に…立ちたかった…。ここで勝てば…先輩たちの進路に影響するでしょ?それで何が変わるのかは、馬鹿な私は…分からない。けどアル君が喜びそうだなって。そう…思ったの。」
首を振るアル。
「…違う。…違うよ、モモ!…俺は仲間の誰かが…傷付くのは見たくない。もし危なそうなら逃げてくれ。それが一番嬉しいんだ。…いいね?」
「…うん。従うよ、アル君。…指示してくれたのに…それを守れなくてごめんね。…私、馬鹿だから。」
リンが横から飛んでくる。
「…なーに、2人でいちゃついてんのよ!私達だって…いっぱい攻撃されたんだからね?」
アルは、モモの方を見て言う。
「リン…。いや、お前はダメだ。…許せん。」
リンは焦って言う。
「…あれはその…生理的に無理なんだもん。」
アルはリンに向き直り、目をジッと見て言う。
「…リンも身体を大事にしろ。ダメなものはダメだ。カナは腹蹴られるし、モモはズタズタだ。リンだって早く倒せば切られることは無かった。…やるにしても、やり方があるだろう?」
周囲の仲間がそれを聞いて応える。
「「「は~い。」」」
ややあったが、Fクラスの宿舎に戻っていく。疲労を取る者、ダメージを抜く者。様々だ。
食事前に軽く皆で話をしていた。
「それじゃ、夕飯まで休もう。次の試合は明日か。・・・相手はエリの婚約者か。弱ったな。なかなかエリとも話した事ないんだよなあ・・・」
「エリ、呼んでくる?」
「いや、いい。多分婚約者の応援だろう。そっとしておこう」
アズが反応する。
「あの婚約者かー。昔は純粋な子で・・・今もある意味、純粋か。【〇〇しなくちゃ!】って気持ちが強すぎる人なんだよ、カズって人は。」
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‐カズ・レドル‐
C組の筆頭生で3年。リンやアズ達とは旧知の仲。貴族のレドル家の長男ではあるが、レドル家は地域に密着した政治で評判を博し、気取る事は無かった。その為、貴族に良くある自宅でのみの教育では無く幼少か中等部までを一般の学園で過ごした。一般感覚を身に着けて欲しいという親の願いであった。
エリの親は貴族御用達の商人であり、レドル家の当主とは小さな頃からの顔なじみ。エリの祖父は光の戦士としてレドル家を支えた事も有ったという。
そう言った縁故から、幼き頃より縁談が組まれていた。
カズとエリ。
物心ついた時には、どちらにも魔力の素養が見られていたという。
それを見た両親が、「お互いの子を結婚させよう、それによって魔力に秀でた家系にしよう」そう考えたのだ。
幼き頃のカズは、少し気弱で頼りない。そんなカズの横にいるのは、決まってエリであった。
意地悪な子が来ても泣いてしまうカズに対し、抵抗を見せたエリ。幼き頃はエリの方が勝気になり、2歳上のカズでも対等であった。
主体性が無く、遊びもエリが主導していた。そんなエリに隠れるような子であったカズも、魔宝珠による選定で大きく人生が変わる。
カズは光の素養が強く、魔力も膨大に持っていたのだ。対してエリは水属性。魔力もそこまで高くない。そこから2人の人生は少しずつ離れていった。
カズは強くなければいけないと剣を振るう。
エリは無理をしないでと休憩を促す。
カズが力を求める時期に、エリは一緒の思い出を求めた。
カズが知識を求める時期に、エリは未来の相談を求めた。
食い違う2人の会話が、今日のぎこちなさを生んでいる。カズは先に学園に入り、2年が経過した時には、今のような鬼気迫るような迫力でCクラスの筆頭を行っていた。
Bクラスの人間にも負ける事は無いが、魔力の扱いがBクラスには至らず。
様々な技を使用する事は敵わなかったが、一つ一つの技を極めて行くようにし、強さを追い求めていった人間。それがカズ・レドルであった。その特訓の横には常に学園に入る前からエリが傍にいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
このような事をアズは語ってくれた。
「エリも少し重たい子だからねー。仕方ないんだけど。」
「ちょっと、アズ!やめてよ。友達悪く言うのは。」
「あ、ごめんごめん。」
そんな話の途中に、人の気配に気づく。
「…皆、お客さんだ」
「え?」
「…エリ?」
食堂の入り口にはエリが立っていた。
エリはアルをじっと見つめ、言の葉を紡ぐ。
「…あのね、アル君。今日は…お願いがあってきたの。」
「…なんだ?負けろ、負けてくれは…聞けないぞ?」
「…ううん。違うの。」
「勝って欲しい」
「へ?」
「…圧倒的に。圧倒的に…勝って欲しいの。」
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