魔女と精霊とグリモワール 〜精霊石の旅〜

RYU

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漆黒のドラゴンと、沈黙の怒りの炎 ②

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辺りは、強烈な圧縮された空気の渦に飲み込まれていった。



強烈な熱風が、空間内を充満する。



「おっ。シリウス選手ー!?これは、強烈な技です。かなり錬成された高度な技であります、錬金術でも使ってるのでしょうか?」





辺りは、騒然となる。



空気中の魔素が、強制的に引き寄せられる。

圧縮。

圧縮。

圧縮。



大気中の

様々な元素がシリウスの杖の先端にかき集められていいく。





「ええ、シリウス選手、シリウス選手、観客を巻き添えにするのは、ペナルティが加算されますよ!」



司会者が、慌ててシリウスを静止しようとした。



観客席の前には、関係スタッフが待機していた。シリウスを取り押さえる準備をしているのだろう。





シリウスは、それらにお構いなくアーロン目掛けて口を開いた。



セイラは、慎重に彼の唇の動きを読んだ。





「え、『お前……悪魔の……だろ』?」





「どういう事?」



「ハッキリとは分からないけど……彼、口元から『悪魔』って言っているように見えた。」



「え……、悪魔召喚?これって、禁断魔術だよね。五年前に法令が制定されたし。」



「そこまでは分からないけど……『何でだ?』って、言ってるようにみえる。」





彼は、怒ると魔法を暴発させてしまう事がある。



その亡くなった憧れの魔導士が愚弄された時、シリウスは怒り狂い魔力を暴走させようとし、周りの大人の魔導士らに止められた。







シリウスは、鋭い形相でアーロンを睨み続ける。

彼の杖の先端には、巨大なダークマターのような炎の塊が出来上がっていた。



巨大な風の塊は、バチバチ音を立てながら空気を掻き集めていった。

会場内はざわめき始めた。





シリウスは、明らかに おかしかった。





そして――



夜をも溶かすような、鋭利なコバルトブルーの炎が、爆ぜた。



それは燃え広がらない。

一点に、異様なまでに凝縮される。



青白い炎が、大きく揺らめき、そしてアーロンを飲み込んだ。

しかも、その炎は触れれば魂まで灼き尽くすような高密度だ。



ーお前のせいで……



と、彼は言っているように思えた。





炎が、大きく揺らいだ。

理性の鎖が完全に壊れた。

地面が溶け、石が蒼く発光する。

それは音を立ててひび割れた。



「シリウス選手!シリウス選手!?」



待機していたスタッフらが、続々と場内へと入っていく。



だが、アーロン選手は彼らを静止する。



会場内に響が入る。

大きな轟音。

青炎が奔流となり、一直線に解き放たれる。



シリウスは、左手拳を強く握り締める。



息が荒くなっていった。

額に汗が浮かぶ。



青い炎は、刃の形を取る。

怒りの炎は、津波の用に大きくうねる。



アーロンは、その光景を眺めては困ったように笑っていた。



「あの人……」

シリウスが、これ程激昂したのは見た事ない。アーロンは、明らかにシリウスを挑発するような事を言ったのだろう。





シリウスは、大きく叫んだように見えた。



と、次の瞬間、巨大な炎の塊はアーロン目掛けて投げ出された。



「シリウス選手!!?」

司会者の、絶叫した声が轟いた。



スタッフらが杖を構えるも、アーロンは彼等を制する。



アーロンの杖の先端が灯った。



そして彼の目の前には巨大なシャボン玉のようなバリケードが出現し、炎の塊を吸収していった。



アーロンの足元から、影が出現した。

影は立体を持ち、うねり、次の瞬間――

深く沈んだナイトグリーンの炎へと変わった。



パチン、と彼が指を鳴らす。



炎は獣のように散開し、空中で弧を描き、シリウスを囲う。

牙の代わりに、静かに揺らめきながら。



その揺らぎの奥で、

アーロンが微笑んでいた。





石が溶け、空気が歪んでいく。



それでも彼は、乱れない。



コートの裾を翻しながら、

まるで舞踏会でも歩くかのような、余裕ぶりだった。



ナイトグリーンの炎があたりを染める。



どこか神秘的で、見る者らを魅了させていた。



「アーロン選手、やりました!見事です!!!」



シリウスは、力尽きて両膝を着いていた。





「えー、シリウス選手、ペナルティで失格……勝者、アーロン選手とします!アーロン選手は、60点が加算されます!!!」



会場内は、ざわめき立ちながらも盛大な拍手の渦に包まれた。





「えーーと、次は、キール・クラウザー選手と……」





司会者の声が轟く中、セイラは席を立った。

「セイラ、行くの?まだ、学校の食堂はやってないよ」

「うん、シリウス出ないなら見ていてもつまらないし。元々、彼の近況を知りたかっただけだからね。私、勉強して彼を助けられるようにならないと……」

「シリウスの所に行かなくて、大丈夫?」

「それも、考えたんだけど、私、足手まとい……。う……ん、でも……」

と、言いかけ口を閉ざした。



普段、温厚なシリウスが、ここまで強く怒り魔法を暴発させるのは初めてだ。彼は、対立や喧嘩は嫌いな方だ。



やっぱりここは、友達として彼の所に行って支えてあげないと。



「ブリギッド、私、やっぱり、行ってくる!」



二人は、バックヤードの方まで向かった。



バックヤードでは、女性ファンらの帰る列が見えた。

多分、シリウス目当て出来た人達だろう。





その先で、シリウスとすれ違った。彼は荒い呼吸を整えていた。



「シリウス……」



セイラが話しかけるも、彼は自分を一瞥するだけで、無言でその場をさった。彼のその左隣には、長身のプラチナブロンドの美女が並んでいた。多分、例の噂の純血の魔女だろう。彼女は長身で顔立ちが整っている。二人はお似合いだ。セイラは、胸がザワザワした。



「誰?あの子達……知り合い?」



長身の美女は、セイラ達の方を向いた。



「昔馴染みの友人と、彼女の友達だ。」



「そうなんだ。いいの?話さなくて。」



「別に、話す事なんてないさ。」



シリウスは、一切、こちらを振り向かない。



「シリウス、さっき、アーロンから何言われたの!?普段、こんなんじゃないでしょ!?」



シリウスは、一瞬立ち止まるも、こちらを振り向く事なく再び歩き始めた。



やっぱり、彼はすっかり向こう側の人なんだ……



彼が、自分に心を開いてくれない、

昔のようには話せないのか、自分には何も出来ないのか……と思うと、セイラは胸が苦しくなった。
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