堕天使と悪魔の黙示録

RYU

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who is me ?

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深い古びた廃墟の中に、 1人の少年ががいた。歳は11、12位だろうかー。
少年はボロボロのパーカーとダブダブのズボンを履いていた。彼は倉庫の隅の方で兎の様にブルブル震えている。
    そして、倉庫の扉が重たく開いた。黒いザリガニ様なシルエットはガチガチした音を立てながら、ゆっくり近づいてくる。
   少年は息を潜めている。すると少年の影がスライムの様にいびつな形状になった。そしてザリガニの鋏の様な形を造り、鋏の様な手が少年を脇をかすったのだ。まるで研いだばかりの斧の様なキレのよい攻撃である。しかし、少年左腕からは血が出ていない。鋏は少年の頭より一回り程大きい。少年は悲鳴を堪え、わなわな震えていた。ザリガニの様な影はカチカチ音を立てながら、少年に近付いてくる。少年はお守りを握りしめながら、体育座りをした。その時、少年は重苦しさを感じた。何か強風が背中を叩きつけられてる様な感じである。マシンの影は動きを停止し、きしんだ重い音を立てながらゆっくり倒れこんだ。
     少年が物陰から出てくると、マシンがペシャンコになっているのが見えた。ダンプにひかれたように見事に薄く延びていた。
    暗い物陰からガンマン風の男が姿を現した。彼は季節外れの年季の入ったブカブカの帽子をぶっており、マフラーにトレンチコートを羽織っていた。歳は30前後位だろうかー。左脚を怪我しているらしく、ややぎこちなさそうに歩いている。
「…あ、ありがとうございます。」
少年は安堵の顔をしている。
「いいさ。通りかかっただけだ。この辺りはマシンがうろついてて危険だ。家まで送るか?」



男はジープ型の電動カーを運転すると、窓を開けた。辺り一面、殺風景な街である。人の姿が何処にも見当たらない。
「実は、俺の家族さマシンに殺られちゃて…。家も潰されちゃったんだ…。それで、今日奴の情報が掴めたからー。」
「…で、仇をってかいー?」
「…。」
少年は、気まずそうに脇見をしている。
「それは、危険な思想だ。」
「何でー?」
「過去に魂を売ろうとしてるのか?」
「意味分かんないよ。お兄さん。」
「お前の、目を見れば分かる。」
「何で?」
「遠い星に住んでいた頃ー、過去に仲間を復讐で命を落としたんだ。彼等はまだ未熟だった。己の力量を客観視出来ない馬鹿だ。その場の強い感情に溺れ、そして見事に散りやがった。」
「何でー?死んだ人を馬鹿にするなんてー」
「悪い。」
「お兄さんは、仲間の仇を打ちたいと思わないのー?」
「執着はしない事にしてんだ…」
「何で?自分の生まれ故郷でしょ?いくら機械じみた街だからって…」
「いいんだ。1つの物に囚われると、周りが見えなる。広い空だって濁って見えちまうんだ。大地も腐り果てて見える。かつての俺の仲間達みたいになー。だからもう、こりごりなんだよ。俺はもう、守るべきものはない。」
「お兄さん、その右手ー。」
ガンマンは義手だったー。両腕は鋼鉄の様な造りになっており、複雑な配線や電子版等が剥き出しになっていた。手はギザギザした鋏の様な形状をしており、まるでザリガニの手の様である。
「…コレは、その代償だー。」
ガンマンは手をカチカチ鳴らしながら、煙草に火を点けた。
「…さっきの話で思い付いたんだけどさ。何回も時間を巻き戻せる能力を持った女の人がいるみたいだよ。彼女もある意味、執着してるよね。」
少年はクスリと笑った。
「…何処で知った?」
ガンマンの顔は荘厳な雰囲気を漂わせていた。
「アンタ、あの時のVXかー?」
ガンマンは、電気砲|《バズーカ》を取り出した。
「…え?何の事ー?VX?俺がー?」
少年はきょとんとした感じで、首をかしげた。
「アンタ、シラを切るのがうまいよな…」
ガンマンは溜め息をつくと、帽子を被り直した。
「ー嘘だ!俺がマシンな訳が無い!心だってある!」
少年は、青ざめてしきりに首を横に振っている。ガンマンは車を停めると、腕組みをしながら振り返っている。
「…」
「シラを切る気かー?あんたは自身の気配を隠すのは巧妙だ。この俺すら感じ取るのは難しかったぜ。しかしな、知恵が足りない様だったな。彼女に関する情報は、組織の者とごく一部のジェネシスにしか知りえない事なんだー。しかもアンタは彼女の能力を体感出来るのだろう。実は俺もなんだよ。あの時、彼女がループを繰り返して15回目に、微妙な身体の動きの変化を表した奴がいた。坊やには退屈で、さぞ辛かっただろう?当然だろうな。」

「…お前、俺を試したのか?」
少年の形相がみるみる変貌した。彼は鬼の様な顔つきになり、ガンマンを睨み付けた。
「アンタを探すのは手間がかかったよー。何せ、姿を変幻自在に変えることが出来るんだからな。今までの一連のやり取りも演技だったんだろ?アンタはあの時わざと弱いふりをして、何らかの形で俺が来るように誘導したんだ。」
「ふん。なんなら、どうだって言うのさ!」
少年は、背中から蟹の手足の様な触手を四方八方に拡げた。一部の触手は車のガラスを貫いている。ガンマンは車から降りると、少年と間合いを取った。触手は黒く淀んだ渦を放出した。
「お前だって、こうやって簡単に喰らう事が出来るんだ。」
黒い渦は徐々に濃くなり、ガンマンの姿を完全に覆い尽くした。
「悪りいな。アンタがどんなにかつて殺めた同胞の能力をパクっても、俺には効かないんだぜ。何せ、俺の能力はー」
「それは、残念だな。愉しい序曲の幕開けだってのにさ。」
ガンマンの言葉を遮り、少年は挑発的に笑った。
「どーせ、この姿もこの能力もこのセリフもパクリなんだろ?」
ガンマンのその言葉に少年は動きを止めた。
「とっくの昔からアンタはアンタじゃないんだ。アンタは元はひ弱なマシンだった。しかし、アンタの能力はジェネシスやマシンの能力|《スキル》を乗っとる事だー。姿も性格とかもな。アンタはおよそ300から500回位、それを繰り返してきたんだろう。それで、今じゃあ敵無しってかー。」
「は、つまり何が言いたい訳?」
「こう強くなってもな。元から、ホントのアンタは何処に無いんだよ。」
その言葉に少年は頭をカクカク震わせた。
「ねぇ、本当の僕は何処ー?分からないんだ…自分が存在してるという、実感も持てないんだ…誰も僕を見ようとしない。誰も僕に気づいてくれない。僕は、何処なのー?昔から、探してるんだ。本当の僕をー。しかし、何処にも無いんだ!」
少年は困惑して、錯乱状態に陥っている。
「『俺』だったり『僕』だったりするんだな。」
煙草を咥えながら、電気砲|《バズーカ》の引き金を引いた。
とてつもなく重くどす黒い砲弾は、渦を巻きながら少年の胸に直撃した。少年は仰向けになり倒れだが、何とか体勢を取り直した。彼は何かに押し潰されたかのように地面にへばりつき、ゼェゼェしている。
「…や、やめて…力を使わないで…俺だって、訳が解らないんだ…自分がどうしてこうなったかも。」
少年はブルブル震えている。ガンマンは帽子のつばから冷徹な眼差しで少年を見下ろしている。少年は悲鳴をあげた。彼の身体は徐々につぶれていき、下敷きの様に薄く延びた。彼は動きを停止させると、徐々に輪郭が薄くなり、消滅していった。少年の視界はぼんやりとし、暗くなった。

      それは、2ヶ月ぶりの青空だった。

     鉛一色だった景色はカラフルに彩り、色鮮やかな緑が優しくざわめき、木の葉の隙間から太陽がギラギラのぞかせていた。

      ガンマンは少年の脇に落ちているボロボロの御守を拾った。
「ここにちゃんとあるじゃねぇか。アンタでいる証拠が…」
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