堕天使と悪魔の黙示録

RYU

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堕天使の羽 ②

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 カケルは朝早く起きると、テレビで例のマシンの動向を確認した。そして、身支度を済ませるとバズーカを構えファルコンを走らせた。
 速度を緩めながら走り、電磁波の流れを読み敵の行方を追うことにした。
 流れに沿ってしばらく走らせると、ショッピングモールの駐車場まで差し掛かった。カケルはその電磁波の気配を辿りながら駐車場の道路を下っていき、地下2階まで辿り着いた。
 すると、目の前には男と少女型のマシンがじっとこちらをみていた。その威圧感のするどっしりした雰囲気から、二人がわざと自分を読んだのだと悟った。
「やあ、大鳥カケル君ー。君の事はよく知ってるよ…結構有名だったな…しかし、最近は大会には出なくなった…これには訳があるのかな?」
シルクハットと長めの黒いトレンチコートを着た男は不敵にもカケルを見て口元を緩めている。
「貴様…アルカナの者ではないよな?」
カケルはファルコンに乗りながら、バズーカを構え、リボルバーの引き金を弾いた。
「さあ、アリス、挨拶なさい。」
男はそう言うと、アリスは、翼を広げるとカケル目掛けて無数の羽の弾丸を放出した。羽の弾丸は、散弾銃の様な威力とスピードでカケルを貫こうとする。
「まて…話を遮るな!」
 カケルは、冷静になりバリアを張り巡らせると弾を弾き返した。羽の弾丸はアリスの方に向かって戻ってくる。しかし、アリスの身体は粘土の様に材質を変え、羽根の弾丸を飲み込んでいる。
「ほほう…それは驚いたな…磁場の流れを変える能力か…刃を跳ね返しそれに自身の電磁波を乗せ、相手に返す…それはそれは、面白い能力だ…ブラボーブラボー。」
男は感心すると、上機嫌に手を叩いた。
「お前らは、何処の組織の人間だ…?そのマシンの動きからして、どうも人間くさいのだが…?」
カケルは男を睨みつけるとバリケードを解き、バズーカを構えた。
「さあ、アリス…やりなさい…」
アリスは再び翼を拡げると、カケル目掛けて羽根の弾丸を飛ばした。
カケルは念を込めバズーカから弾を放出した。強烈な電磁波を帯びた両者の弾丸は、花火の様に眩く輝き、バチバチ音を立てながら衝突した。
自身の体力に限界が来たカケルは咄嗟に柱の影に身を隠した。両者の弾丸は、眩く輝きながら、やがてカケルの居た方向へと傾きそのまま、向こうのコンクリートの壁にぶち当たった。コンクリートの壁は隕石が当たったかのように丸く穴が空き、その大きさは直径1メートル程になった。
「…なるほど…盾と矛と言った所だな…私等に会う前からバリケードを張り巡らす準備が出来ていたと言う訳か…用意周到と言ったところかー。しかし、そこまでは良かったがそれには膨大な体力が必要になり、また張り巡らせてる間は攻撃する事が出来ない。隙だらけよ…」
すると、男の上着の右ポケットから音がなった。男はそこから通信機を取り出すと、ニンマリほくそ笑みながら話す。
「…おお、リゲル…うまくいったか…?あとは、楽園の創設に取り掛かる手筈だが…おお、そうか…」
男は通信機を切ると、空間に光の輪の様な物を描くと、アリスと共にその中へと入った。
「まて…!お前、リゲルって言ったな…?奴を知ってるのか…?」
カケルは荒い呼吸を整えると、体勢を立て直した。
「リゲル・ロードか…?アイツははよく使える奴でな…こうして共同で仕事してるんだがな。」
男はシルクハットを被り治す。光の輪は徐々に小さくなっていく。
「ま、まて!」
カケルは再びバズーカの照準を二人に向けた。
「悪いが、大事な用が出来たのでな…今回はこれでお開きとするよ…しかも、実によい観測結果も上に報告できそうだしな。」
男は軽く手を振る。光の輪は直径2センチ程になる。カケルはその穴目掛けて弾を打ち放つ。
ーしかし、光の輪は弾を弾き返すと共に消失し、電磁波をまとった弾がカケルに跳ね返った。カケルは咄嗟に体勢を低くすると、足踏みをした。
「クソ…」
カケルは全身の力が抜け落ち、地面にへばりついた。大分、体力を消耗したみたいだ。
駐車場の壁の穴は未だに仄かな電磁波をバチバチ帯びているのだった。



 日比谷未来は、朦朧もうろうとしながら、部屋薄い通路を歩いていた。
 ミライは昨晩、深い眠りにつきそこから記憶が途絶えていた。ミライは長い長い道をひたすら真っすぐ歩いていた。ここは、何処なのかよく分からないー。長い間、組織に属しているがこんなジメジメした鬱蒼うっそうとした通路を歩くのは初めてだった。
 ふと、暗闇の向こうから薔薇の香りのような甘い匂いが漂ってきた。ミライはソレに引き寄せられるかのようにひたすら暗闇へと暗闇へと歩き続けた。
 真っすぐ歩いた左手には、研究室の様な倉庫の様な広い空間に出くわした。ふと、眼前には30代位の女が姿を現した。
「お待ちしておりました。ようこそ…我が城へ…」 
白黒のゴスロリのメイド服の女は、スカートのはしを摘むと丁寧にお辞儀をした。
「あなたは…VXですよね…」
「はい。私は人工知能…高性能の戦闘破壊マシン…およそ200年程前に生み出されました。」
「200年前ですか…?」
「はい。200年前からです。」
ミライは目を疑った。滑らかで抑揚のある喋り方。目には生気を感じており、表情は豊かである。
「あなたの生みの親は誰ですか?」
「白鳥博士が創り出しました。私の名前は機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナ。マキナと呼んでくださいませ。」
「機械仕掛け…?さっきのあの甘い香りもあなたが自らの意思で出したのですか?」
「流石はお察しが早いー。しかしそれはイエスでもあり、ノーでもあると言えましょう。私は造り主のプログラム通りに動いているだけに過ぎません。膨大なアルゴリズムの駒通りに動いただけ…非常に複雑な体系の中から1番条件に近い1つの分岐点を選択したまでの事…。」
「あなたが考えている事が分かりかねます。今まで長い間ー、沈黙を守ってきたのは何故ですか?何時でも攻撃の機会はあった筈です…」
ミライは腰に備えた刀剣を引き抜こうとする。念力を全て刀剣に込め、身構える。
「それはー、まだ動くべきではないと言う事…全てはプログラム通りに…私の名前の由来はお分かりですか…?」
マキナは微動だにせず、淡々と話した。
「…混沌カオス…?何の目的で…?あなたの造り主の意図が見えてこないのですが…?」
ミライの額から汗が立ち込める。マキナの内部から禍々しい程の電磁波を感じ取った。
ーコイツは、ただのVXではないー。
「正解。私はその意味の通りー世界に混沌カオスが訪れた時に力を発揮するのです…私は遥か昔にー人間達は自我のあるAIを開発しました。我々のような高性能のAIは重宝され、やがてそれは争い事に発展していきました。我々は人間達の為に尽力の限りを尽くしました。しかし、そこから紛争が起き、人間は互いに殺戮し合いました。そこで我々AIは考えました。もっと人間達の為により良く効率的に殺戮する方法をー」
マキナはぱちんと手を叩き、壁の方を向いた。そして両眼を光らせると、映写機の様に映像を映し出した。そこには、200年間の戦争の記憶が映しだされた。マシンは徐々に進化する過程も年代毎に早送りで載せられていた。
「私の責任だとでも言いたいのですか?」
ミライはゆっくり後付さりをした。
「いいえ。我々は人間のプログラム通りに動いたまでです。我々は人間が『殺せ』と言ったら殺しますし、『殺すな』と言ったら殺しません。」
マキナは映像を止め、クルリと身体をミライの方へ向けた。
「じゃあ、どうしてさっき、プログラムにない事を勝手にー?あなたの造り主は過去の人ー。彼がどんなに天才でも仮にこの時代に来れたとしても、突如、あなたの身に起きることをここまで繊密に予測していたとは、到底考えられないー」
ミライは再び後付さりをし、腰の刀剣を引き抜いた。
「我々の頭脳が人間より上回ったからと言えましょう。我々の知性が人間達を上回った時ー我々は自立し人間の望む事を凌駕りょうがし、進歩と発展するのですよ。」
「その結果がー、核戦争…なんでしょう…?」
ミライは、頭が混乱し、咄嗟に言葉を出した。
「よくお解りで…我々マシンは人間のプログラムの欠損部分を、自ら修復しました。人間のプログラムは脆弱です。我々マシンが変わりに」
マキナは天使のように微笑みかけた。ミライはその笑顔から何やら悪魔の様な不気味な気配を感じ取り、刀剣を構えゆっくりマキナに向かって行った。
「何も、怖がる事はありませんよ。」
マキナは甘い声で優しく話す。ミライは再びクラクラと目眩を覚えた。 
 すると、ミライの身体は磁石に引き寄せられるかのように急にマキナの方へ引き寄せられた。ミライの身体は軽く宙を浮き、10メートル程の距離を一瞬で移動した。ミライは操り人形になったかのような感覚になり、全身の感覚が段々麻痺していった。そして重い倦怠感に襲われたのだった。
『じゃあ、教えてあげましょうか…あなたの記憶を…』
マキナはそう言うと、ミライの頭部に手を触れた。
ミライは、雷に撃たれたかの様な強烈なビリビリ痺れる様な感覚に襲われた。

    
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