かつて、魔女だった君へ～異形の怪人と殺戮の乙女～

プロローグ

    群青の空の下、二つの人影が超高速で森の中を爆走していた。空から小雨がシトシトとふり続けている。
    長身の男はバイクの様な形状をしたマシンの上に乗って狼の背を追った。男は、黒の皮ジャンを着てい下は皮ズボンにとロングブーツを履いていた。なぜか狼も男のマシンも炎に包まれていたのだった。
    狼は急停止しクルリと180度振り返ると口から炎を吐き出した。長子の男はびっくりし、マシンを急停止させた。
    炎は踊るようにうねり、長身の男を覆いつくした。

「さあ、愉しくお祭りといこうじゃないか!」

狼は眉間にシワを寄せ、

「ふざけんな。こっちは、100パー愉快じねぇんだぜ。」

   男は彼の右腕から炎が迸り、両目は赤く光った。男は、右腕を大太刀の様に変形させた。体中に深く皺が刻み込まれ、悪魔のような姿になった。彼は全身バチバチ火花を散らしていた。二人は火花をまき散らし、互いに突進してきた。男の右腕に狼が噛みついた。男は右腕を鞭のように変形させ、振り回した。二人はもみ合いになり崖下の滝つぼへ落ちた。

   二人の男は濁流の中から浮上した。男はひたすら狼の頭を押さえつける。狼はしきりに男の右腕に噛みつきながら、バタバタもがき泡を吹いている。

-と、足に何かが絡みついた。

  樹木が出現し、青々と生い茂りその場を覆い尽くす。そして樹木の枝が大蛇のようにうねうね拡がり、男の右腕に巻き付いた。

ーと、冷ややかな突き刺す視線を感じ、気配の方へ目を向ける。すると、崖の上から、和装の少女が立っていたのが、見えた。


雨は次第に強くなるー。



「------貴様、フェイクか・・・？」

「残念だが、その時を待っていたのだよ。」

狼はほくそ笑んだ。

「クソ・・・いつからだ？」

「悪いが、サヨナラだぜ。カムイ君。ああ。仲間っていいねぇ。いいもんだぜ。」

狼はほくそ笑んだ。

「ふん、弱者の蟻ん子共の群れじゃねぇか?それに『魔王石』は渡さんぞ。」

   彼の背中から煙が吹き出し、動きも鈍ってきた。カムイと呼ばれた男は歯を噛み締め右腕を切断しようとしたが、間に合わなかった。

「しまっ------」

カムイと呼ばれた男の身体はみるみる石膏化しヒビがが入り、そして川の底に沈んだ。