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絵画の中の女の子 ②
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サトコと黒須は、和室へと案内された。薄暗く年季の入った廊下は、昔ながらの彫刻や置物が飾られていた。歩く度に廊下はキシキシ音を立てる。いかにも何かが出そうな予感がし、サトコは身震いした。
ふと、脇の方へと目をやると、白地に花柄のワンピースの少女の絵が、飾られていた。
「あの…この子は…?」
「ああ、この子ですか?この旅館の子でして、不慮の事故で亡くなっちゃったんですよ。随分大事に育てられ、気立ても良くてね。まだ12歳なのに、可哀想に…」
女将はそう言うと、不憫そうに顔を濁らせていた。
しばらく歩き、突き当りの角を左に曲がると、座敷があり、女将はドアを開けた。
「こちらになります。」
部屋の中は広々としており、古めかしい狸の置物や水墨画が飾られていた。
「では、何かありましたら、この内線へとお電話ください。」
女将は、部屋の台座にある内線電話を指すと鍵を渡しドアを閉めた。
二人は、館内着を着ると部屋を出て大浴場まで向かった。サトコは、行く途中の絵画を極力視界に映さないように顔を埋めた。
幽霊は、いつからどうして怖いと認識するようになったのだろうー?
湯船に浸かると、サトコはふと気になり黒須に尋ねてみた。
「ねえ、思ったんだけど…黒須も、幽霊なんだよね…?」
「半分正解で半分違うかな。」
「どういう事ー?」
「私は、ゾンビのようなものだ。」
「え…?」
ゾンビという言葉に、サトコは拍子抜けしタオルを湯船に落としてしまった。
「私は、生前ゴタゴタがあって、死後、罰としてこうして無理やり身体を生かされてるんだ。」
「一度、死んだのに、魂が身体に戻された…って事…?」
「まあ、そう言う事だな…厳密には、死んで骨だけになった肉体が元に再生され、魂を封されたような状態になった訳だ。」
黒須は、どこからどう見ても身の人間のようだ。
顔も程よく火照っており血色が良いのに、何処がゾンビだというのだろうかー?
「黒須は、普通に寝て普通に食事してるよね…?」
「ああ…しようとすれば出来るさ。呼吸もね。心臓も動く。だが、肉体は一度死んでるから、生殖器は機能を成さないし肉体の成長も永遠にストップしたままだ。」
「ちょっと、触っていい?」
「ああ。」
サトコは、黒須の左頬に右手をかざした。頬は温かく柔らかいー。
彼女が、どうも一度死んでるようには見えないー。
寧ろ、一緒にいると強い安心感を覚える。
何らかの魔法の力が、働いているのだろうかー?
その日の夜ーサトコは、どうしても寝付けず、散歩をしようかと悩んでいた。
サトコは、どうしても不気味な雰囲気は苦手だ。幼少の頃より、敏感であり
すぐ側で寝ている黒須を起こそうとしたが、彼女は深い眠りについていた。
サトコは、黒須の寝顔を見ていて思った。時折、彼女から感じる隔たりは死者と生者の交わってはいけない壁のようなものなのだと…
サトコは、気晴らしに外の空気を吸おうと、旅館の外へと出た。何故、外へ出たのかは、分からないー。しかし、身体が磁石のように見えない力で引っ張られているような感覚を覚えたのだ。
サトコは、旅館の橋を渡り、茂みの向こう側まで歩いた。この辺りは無法地帯であり、赤く立ち入り禁止とペンキで殴り書きしてある看板がロープにぶら下がっていた。
サトコは、ロープを跨ぐとしばらく歩く。何もない森の中をひたすら歩くと、踏切がそこにあった。車で向かってる途中に見た踏切だ。寂れたレールは黒ずんでおり、もう、何年も使われてないかのようである。
すると、茂みの脇のほうから子供の足音が聞こえ、白いワンピースのランドセルを背負った女の子の後ろ姿が見えた。
すると、急に踏切が大きくカンカン鳴りだし、サトコはビクッとのけ反った。
こんな真夜中に何で子供がいて踏切も鳴るのだろうー?しかも、こんな時刻に…
服装も、違和感を感じた。大分昔の時代であろう、レトロな感じの花柄のワンピースを着ていた。しかも、この辺りは、とっくに廃墟だった筈である。
少女は、そのまま踏切を跨ごうとする。
「あ、危ない…」
すると、少女は、急にコチラを振り返ると笑みを浮かべていた。
その笑みは、何処となく不気味なものであった。左右不釣り合いであり口が裂けるほどの笑みである。サトコは、ゾクゾクしたものを感じ引き返そうとした。
しかし、次の瞬間、サトコは急に生気が薄れ、脚は自然と踏切の方へと向かっていった。
少女は、不気味に手招きしている。電車との距離は縮まっていくー。
サトコの瞳孔は死にかけていた。身体はマネキンのような無機質な状態で、少女の方へと向かっていった。
ふと、脇の方へと目をやると、白地に花柄のワンピースの少女の絵が、飾られていた。
「あの…この子は…?」
「ああ、この子ですか?この旅館の子でして、不慮の事故で亡くなっちゃったんですよ。随分大事に育てられ、気立ても良くてね。まだ12歳なのに、可哀想に…」
女将はそう言うと、不憫そうに顔を濁らせていた。
しばらく歩き、突き当りの角を左に曲がると、座敷があり、女将はドアを開けた。
「こちらになります。」
部屋の中は広々としており、古めかしい狸の置物や水墨画が飾られていた。
「では、何かありましたら、この内線へとお電話ください。」
女将は、部屋の台座にある内線電話を指すと鍵を渡しドアを閉めた。
二人は、館内着を着ると部屋を出て大浴場まで向かった。サトコは、行く途中の絵画を極力視界に映さないように顔を埋めた。
幽霊は、いつからどうして怖いと認識するようになったのだろうー?
湯船に浸かると、サトコはふと気になり黒須に尋ねてみた。
「ねえ、思ったんだけど…黒須も、幽霊なんだよね…?」
「半分正解で半分違うかな。」
「どういう事ー?」
「私は、ゾンビのようなものだ。」
「え…?」
ゾンビという言葉に、サトコは拍子抜けしタオルを湯船に落としてしまった。
「私は、生前ゴタゴタがあって、死後、罰としてこうして無理やり身体を生かされてるんだ。」
「一度、死んだのに、魂が身体に戻された…って事…?」
「まあ、そう言う事だな…厳密には、死んで骨だけになった肉体が元に再生され、魂を封されたような状態になった訳だ。」
黒須は、どこからどう見ても身の人間のようだ。
顔も程よく火照っており血色が良いのに、何処がゾンビだというのだろうかー?
「黒須は、普通に寝て普通に食事してるよね…?」
「ああ…しようとすれば出来るさ。呼吸もね。心臓も動く。だが、肉体は一度死んでるから、生殖器は機能を成さないし肉体の成長も永遠にストップしたままだ。」
「ちょっと、触っていい?」
「ああ。」
サトコは、黒須の左頬に右手をかざした。頬は温かく柔らかいー。
彼女が、どうも一度死んでるようには見えないー。
寧ろ、一緒にいると強い安心感を覚える。
何らかの魔法の力が、働いているのだろうかー?
その日の夜ーサトコは、どうしても寝付けず、散歩をしようかと悩んでいた。
サトコは、どうしても不気味な雰囲気は苦手だ。幼少の頃より、敏感であり
すぐ側で寝ている黒須を起こそうとしたが、彼女は深い眠りについていた。
サトコは、黒須の寝顔を見ていて思った。時折、彼女から感じる隔たりは死者と生者の交わってはいけない壁のようなものなのだと…
サトコは、気晴らしに外の空気を吸おうと、旅館の外へと出た。何故、外へ出たのかは、分からないー。しかし、身体が磁石のように見えない力で引っ張られているような感覚を覚えたのだ。
サトコは、旅館の橋を渡り、茂みの向こう側まで歩いた。この辺りは無法地帯であり、赤く立ち入り禁止とペンキで殴り書きしてある看板がロープにぶら下がっていた。
サトコは、ロープを跨ぐとしばらく歩く。何もない森の中をひたすら歩くと、踏切がそこにあった。車で向かってる途中に見た踏切だ。寂れたレールは黒ずんでおり、もう、何年も使われてないかのようである。
すると、茂みの脇のほうから子供の足音が聞こえ、白いワンピースのランドセルを背負った女の子の後ろ姿が見えた。
すると、急に踏切が大きくカンカン鳴りだし、サトコはビクッとのけ反った。
こんな真夜中に何で子供がいて踏切も鳴るのだろうー?しかも、こんな時刻に…
服装も、違和感を感じた。大分昔の時代であろう、レトロな感じの花柄のワンピースを着ていた。しかも、この辺りは、とっくに廃墟だった筈である。
少女は、そのまま踏切を跨ごうとする。
「あ、危ない…」
すると、少女は、急にコチラを振り返ると笑みを浮かべていた。
その笑みは、何処となく不気味なものであった。左右不釣り合いであり口が裂けるほどの笑みである。サトコは、ゾクゾクしたものを感じ引き返そうとした。
しかし、次の瞬間、サトコは急に生気が薄れ、脚は自然と踏切の方へと向かっていった。
少女は、不気味に手招きしている。電車との距離は縮まっていくー。
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