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氷の悪魔と死の輪舞曲 ③
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サトコは、暗いジメジメした鬱蒼とした森の中をひたすら歩いていた。
何時間くらいも歩いたような感覚もあるが、さほど疲労感はない。喉の乾きも空腹もない。眠気もない。
時間の感覚も、全くない。
そこはただ、果てしなく深い森が広がっている。宇宙のように広大な森には、所々に人 に似た形を成した樹が生えており、うめき声 を上げ続ける。闇夜の如く暗い森である。高 くそびえ立つ木々の葉の隙間から、薄墨色の 空が微かに光を照らしていた。寒く、じめじ めした森である。
迷える魂はただひたすら救いを求める。 群れからはぐれた狼の如く一。
しかしそこには、底なしの闇が広がっていた のだった。
ーと、向こう側から此方の方へと向かって歩いてくる者の姿があった。
徐々に、こちらに向かって近づいてくる。
ーと、サトコは息を飲んだ。
サトコは自分そっくりの少女と対峙したのだ。
だが、雰囲気は自分と対極的である。
その少女は、和装を装い黒髪を後ろに束ねた上品な装いをしている。少女は、眉を釣り上げ凛とした表情で佇み此方を見詰めている。彼女の大きく深い焦げ茶色の瞳が、じっとこちらを捉えている。
怒っているのだろうかー?いや、違うー。
何か、訴えかけているように見える。
「あなたは、誰…?」
サトコの問いに、彼女は応えない。
ただ、彼女の鋭い視線が此方を捉えている。
彼女と自分との距離は、十メートルほどだろうかー?
だが、二人の心理的な距離は近くにある、そんな奇妙な
それは、まるで、ソウルメイトに会ったかのような、鏡の前に立っているかのような、摩訶不思議な感じがしたのだ。
アオイの表情や佇まいから、聡明で気の強さも感じられた。
彼女と自分は、全く異なる性格をしている。
だが、意識の根の奥深いところで、繋がりがあるかのようだった。
アオイの胸の奥に、何やら熱い想いが秘められているようにも見えた。
サトコは既視感を覚え、全身の核の部分の脳髄に触れるかのような、奇妙なざわめきを覚えた。それは、サトコの深層心理の琴線に触れたのだった。
だが、アオイは、それが極当たり前であるかのような表情を見せている。
「一体、何なの…?!」
サトコは、瞠目しながら瞳を小刻みに揺らしていた。
ーと、彼女は、乳白色に輝くボールのようなものをサトコに投げ渡した。
「うわっ…」
サトコは、慌てて両手でそれをキャッチした。
その奇妙な玉は、熱くエネルギーのようなものが身体の核の部分から湧き上がっていくかのようだ。
普段、運動音痴な筈であったサトコが何故、ボールを避けずにうまくキャッチしたかは分からない。だが、サトコは、何らかの大きな魔法のエネルギーなのだと、感じたのだった。
サトコは、アオイに質問する。
「ここは何処…?私に何か、用なの…?」
だが、彼女は、無言で此方を見つめたままだ。
サトコは、段々不安になっていき、もう一度尋ねてみる。
「あなたは、誰…?」
「私は、アオイ。」
「私に、何か用ー?」
「…」
「私は、誰なの?」
「あなたは、私の…」
アオイは、凛とした表情を崩さず、徐に唇を横に開いた。
ふと、木の間から微風が差し込んだ。木の葉のカサカサという音で、アオイの言うことは聞こえなかった。
だが、彼女の唇の動きからサトコはハッとした。
「え…どういうこと…!?」
ーと、辺りを強風が吹き荒れサトコは眼を閉じ顔を塞いだ。
五分ほどの轟音が続き、そして、次第に風が弱まり出した。
恐る恐る眼を開けると、アオイの姿はそこになかった。
眼を開けると、何かに強く圧迫されているような気がして、サトコは息が苦しくなった。
「あれは、夢…!?」
恐る恐る辺りを伺うと、眼前に巨大な女の子…リアナの顔がそこにあった。
全身が、熱く火照る。
さっきまでの恐怖心や疲労感は、まるで嘘であるかのようにすっかり無くなっていたのだ。
ーそうだ…!アスナちゃんは…
恐る恐る左側に視線を移すと、アスナそっくりの人形が、リアナの右手でギュッとキツく握り締められていたのが見えた。
「アスナちゃん…!?」
アスナの身体は、大きく項垂れプランプランと揺れていた。
頭が、クラクラする。
幻覚を見せられるのだろうか?それとも、洗脳させられるのだろうか?
「ねぇ、今度は、おままごとしようよ。」
リアナは、口端を大きく横に広げニンマリほくそ笑む。
「え、おままごと…!?」
サトコは、困惑した。
だが、恐怖心は全くなかった。
心の底から、自分は、身体の核の部分から、力強い味方を得たような気がしたのだ。
こういう時、黒須なら、どうするんだろうー?
サトコは、アオイと会ってから、不思議と恐怖心は薄れて力もみるみる増大していった。
彼女が、『もう、大丈夫だよ。』『私を信じて。』と、自分に勇気をくれているかのようにも感じた。
自分は、彼女とリンクしているようにも感じた。
私達は、一心同体。
互いに、あわせ鏡のような存在だ。
ーそうだ…!私は、
霊気を読んで、その流れを読むんだ!
サトコは、全身を踏ん張り出した。ーやや力を込めただけで、右手が解放された。
プラスチックの身体に流れている、膨大な禍々しい霊力。
彼女は、今まで何百もの霊を吸収してきたのだ。
いまなら、はっきりわかる。
サトコは透視能力でも身に付いたのか、自ずと流れが分かる。
自分がまるで、エスパーになったような気分になっている。
右の掌が熱くなっている。
手を拡げると、そこにはアオイから貰った白い光状のボールがある。
サトコは、勢い良くリアナの顔面に、それを思いっきり叩き付けた。
「ギャーーーっ!!!」
リアナは、大きな悲鳴を上げた。
サトコは、もう一度、それをリアナの顔面に強く押し当てた。
「お、お前ーーーっ、よくも…」
リアナは、鬼のような形相をし顔を真っ赤にさせている。
プラスチックの顔面が、みるみる溶け出していく。
「あなたのしていることは、理に反します。自然の摂理を乱す悪しき霊は、土に還りなさい。」
ふと、意とは異なる言葉が自分の口から出た。
アオイが、自分を通じて目の前の悪霊に説いているのだろうか?
サトコは、アオイと自分が重なったような気がした。
ーと、サトコとアスナの身体はたちまち元の人間の姿形に戻り、身体のサイズも元通りになった。
リアナは、憤怒の表情のまま圧倒され動きを停止している。
彼女の身体にひびが生え、その隙間から白い光が溢れ出てくる。脆くもけたたましい破裂音が、迸る。
ーと、白い光に覆われた身体は、一瞬で崩れ散り灰の塊が出来た。
何時間くらいも歩いたような感覚もあるが、さほど疲労感はない。喉の乾きも空腹もない。眠気もない。
時間の感覚も、全くない。
そこはただ、果てしなく深い森が広がっている。宇宙のように広大な森には、所々に人 に似た形を成した樹が生えており、うめき声 を上げ続ける。闇夜の如く暗い森である。高 くそびえ立つ木々の葉の隙間から、薄墨色の 空が微かに光を照らしていた。寒く、じめじ めした森である。
迷える魂はただひたすら救いを求める。 群れからはぐれた狼の如く一。
しかしそこには、底なしの闇が広がっていた のだった。
ーと、向こう側から此方の方へと向かって歩いてくる者の姿があった。
徐々に、こちらに向かって近づいてくる。
ーと、サトコは息を飲んだ。
サトコは自分そっくりの少女と対峙したのだ。
だが、雰囲気は自分と対極的である。
その少女は、和装を装い黒髪を後ろに束ねた上品な装いをしている。少女は、眉を釣り上げ凛とした表情で佇み此方を見詰めている。彼女の大きく深い焦げ茶色の瞳が、じっとこちらを捉えている。
怒っているのだろうかー?いや、違うー。
何か、訴えかけているように見える。
「あなたは、誰…?」
サトコの問いに、彼女は応えない。
ただ、彼女の鋭い視線が此方を捉えている。
彼女と自分との距離は、十メートルほどだろうかー?
だが、二人の心理的な距離は近くにある、そんな奇妙な
それは、まるで、ソウルメイトに会ったかのような、鏡の前に立っているかのような、摩訶不思議な感じがしたのだ。
アオイの表情や佇まいから、聡明で気の強さも感じられた。
彼女と自分は、全く異なる性格をしている。
だが、意識の根の奥深いところで、繋がりがあるかのようだった。
アオイの胸の奥に、何やら熱い想いが秘められているようにも見えた。
サトコは既視感を覚え、全身の核の部分の脳髄に触れるかのような、奇妙なざわめきを覚えた。それは、サトコの深層心理の琴線に触れたのだった。
だが、アオイは、それが極当たり前であるかのような表情を見せている。
「一体、何なの…?!」
サトコは、瞠目しながら瞳を小刻みに揺らしていた。
ーと、彼女は、乳白色に輝くボールのようなものをサトコに投げ渡した。
「うわっ…」
サトコは、慌てて両手でそれをキャッチした。
その奇妙な玉は、熱くエネルギーのようなものが身体の核の部分から湧き上がっていくかのようだ。
普段、運動音痴な筈であったサトコが何故、ボールを避けずにうまくキャッチしたかは分からない。だが、サトコは、何らかの大きな魔法のエネルギーなのだと、感じたのだった。
サトコは、アオイに質問する。
「ここは何処…?私に何か、用なの…?」
だが、彼女は、無言で此方を見つめたままだ。
サトコは、段々不安になっていき、もう一度尋ねてみる。
「あなたは、誰…?」
「私は、アオイ。」
「私に、何か用ー?」
「…」
「私は、誰なの?」
「あなたは、私の…」
アオイは、凛とした表情を崩さず、徐に唇を横に開いた。
ふと、木の間から微風が差し込んだ。木の葉のカサカサという音で、アオイの言うことは聞こえなかった。
だが、彼女の唇の動きからサトコはハッとした。
「え…どういうこと…!?」
ーと、辺りを強風が吹き荒れサトコは眼を閉じ顔を塞いだ。
五分ほどの轟音が続き、そして、次第に風が弱まり出した。
恐る恐る眼を開けると、アオイの姿はそこになかった。
眼を開けると、何かに強く圧迫されているような気がして、サトコは息が苦しくなった。
「あれは、夢…!?」
恐る恐る辺りを伺うと、眼前に巨大な女の子…リアナの顔がそこにあった。
全身が、熱く火照る。
さっきまでの恐怖心や疲労感は、まるで嘘であるかのようにすっかり無くなっていたのだ。
ーそうだ…!アスナちゃんは…
恐る恐る左側に視線を移すと、アスナそっくりの人形が、リアナの右手でギュッとキツく握り締められていたのが見えた。
「アスナちゃん…!?」
アスナの身体は、大きく項垂れプランプランと揺れていた。
頭が、クラクラする。
幻覚を見せられるのだろうか?それとも、洗脳させられるのだろうか?
「ねぇ、今度は、おままごとしようよ。」
リアナは、口端を大きく横に広げニンマリほくそ笑む。
「え、おままごと…!?」
サトコは、困惑した。
だが、恐怖心は全くなかった。
心の底から、自分は、身体の核の部分から、力強い味方を得たような気がしたのだ。
こういう時、黒須なら、どうするんだろうー?
サトコは、アオイと会ってから、不思議と恐怖心は薄れて力もみるみる増大していった。
彼女が、『もう、大丈夫だよ。』『私を信じて。』と、自分に勇気をくれているかのようにも感じた。
自分は、彼女とリンクしているようにも感じた。
私達は、一心同体。
互いに、あわせ鏡のような存在だ。
ーそうだ…!私は、
霊気を読んで、その流れを読むんだ!
サトコは、全身を踏ん張り出した。ーやや力を込めただけで、右手が解放された。
プラスチックの身体に流れている、膨大な禍々しい霊力。
彼女は、今まで何百もの霊を吸収してきたのだ。
いまなら、はっきりわかる。
サトコは透視能力でも身に付いたのか、自ずと流れが分かる。
自分がまるで、エスパーになったような気分になっている。
右の掌が熱くなっている。
手を拡げると、そこにはアオイから貰った白い光状のボールがある。
サトコは、勢い良くリアナの顔面に、それを思いっきり叩き付けた。
「ギャーーーっ!!!」
リアナは、大きな悲鳴を上げた。
サトコは、もう一度、それをリアナの顔面に強く押し当てた。
「お、お前ーーーっ、よくも…」
リアナは、鬼のような形相をし顔を真っ赤にさせている。
プラスチックの顔面が、みるみる溶け出していく。
「あなたのしていることは、理に反します。自然の摂理を乱す悪しき霊は、土に還りなさい。」
ふと、意とは異なる言葉が自分の口から出た。
アオイが、自分を通じて目の前の悪霊に説いているのだろうか?
サトコは、アオイと自分が重なったような気がした。
ーと、サトコとアスナの身体はたちまち元の人間の姿形に戻り、身体のサイズも元通りになった。
リアナは、憤怒の表情のまま圧倒され動きを停止している。
彼女の身体にひびが生え、その隙間から白い光が溢れ出てくる。脆くもけたたましい破裂音が、迸る。
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