魔人狩りのヴァルキリー

RYU

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赤いワンピースの女の子 ③

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誰も居なくなった学校の校舎で、私は、音楽に包まれた幸せなひと時を過ごした。

そんなある日、何処かの企業の人達が来て、学校の解体作業を始めようとした。

私は、自分の砦をー、音楽室だけは何とか守りたくて、ひたすらメロディーを奏で脅かす敵たちを追い払った。そしたら、誰も来なくなったから、心の底から安堵した。

それからしばらくして、また別の解体業者が来たが、私はまたメロディーを奏で対抗した。

そしたら、それ以来、企業の人達は誰も来なくなった。

そして、ある日の事、男性一人がやってきた。

私は、胸を踊らせた。
少し、驚かせてやったけど、呆気なく死んでしまった。

私は、状況が分からなくてパニックを起こした。

そして、しばらくして人が検証しに来たが、突然、倒れ亡くなり、奇妙な現象が起きた。

そして、また、しばらくして人が来た。

男女のカップルだった。

私はまた、嬉しくなり驚かそうとしたが、二人とも黒焦げになって呆気なく死んでしまった。

また、検証の人が来たけが、私は怖かった。

もしかしたら、今度こそ本当に、私の砦が壊されるんじゃないかー?そんな不安に駆られてしまい、今度はもっと激しく歌いそして強く鍵盤を叩き対抗した。
熱く、熱く、これでもかというように、ビートを刻んだ。

そしたら、皆不気味がり、等々この学校には、誰も来なくなった。

私はせいせいした。
私の砦を脅かす者は、誰一人とも許さない。

私は、これからも自分の砦を守って生きていくつもりであった。


それから、長い時間を感じた…
もう、とっくに時間の感覚はなくなったが、もう自分はホントにひとりぼっちなんだ。誰も自分の歌を聴いてくれないんだ、ピアノを聞いてくれないんだ…と、悲壮感に暮れることもあった。

それから間もなくした、ある日の夜のことだった。

視線に青磁色の閃光が迸り、急に、私の脳内に過去の記憶が蘇った。

私は発作を起こしそうになって、狂ったようにピアノを演奏し大声で歌ってやった。

過去がフラッシュバックし、アレルギー反応を起こしたのだ。

私の深い意識の沼の底から悪魔が蘇り、天使が戦ってるんだ…そんな感じがした。

激しくメロディーを奏でていたら、思い出さずに済んだ。

私の中の守護天使が、勝ってくれたのだ。


それは、曇りで小雨がぱらぱら降り注ぐ朝のことだった。

そんなことは、私にはどうでもよかった。

私には、音楽さえあればそれでいいー


「中々の、歌だな。メロディーも独特で印象に残る。」

その声にハッとし、振り向くとそこに、一人の鎌を携えたボーイッシュの出で立ちの少女が、私の背後に立っていた。

彼女は、綺麗な黒髪をポニーテールにしてまとめた18歳位の少女だ。目指し帽を被った、クールな感じの子である。

足音どころか、気配すら感じなかったわ。
しかも、傍にはバイクまである。

バイクで校舎に突っ込むだなんて、気が知れないー

私は、その不思議な少女と向き合った。久しぶりに誰かに褒めて貰えて、嬉しかった。

「お前は、もう、死んでるんだ。地縛霊さん。」
彼女の深い焦げ茶色の瞳が、冷淡な眼差しでこちらを見ていた。
「褒めてくれたと思ったら、酷い言い方ね。私が地縛霊…?どう言うことかしら?」
私は、彼女の言葉の意味がよく分からず、不快な気持ちになった。
「お前は、死んでいるんだ。そして、この旧校舎の火災事故の被害者だ。そして、お前の魂は30年もの間、ずっとこの学校に縛られ続けているんだよ。」

私は、彼女のその言葉にハッとした。
胸が苦しくなり、全身に冷気が駆け巡るような感覚を覚えた。
「私は、私は死んでない…!死んでないよ!」
私は、眉間に皺を寄せ必死になって首を大きく振った。
「嘘よ…!」

私が死んでいる…!?

ふざけないで…!

「お前にとって、幼少期から学生時代は、地獄だったのだろう。
アイドルになりたくても、この容姿じゃ到底夢は叶わないー。
そして、教員になり音楽の先生になった。自分が自分らしく居られる場所、音楽室こそがお前の唯一の居場所だったんだよ。」
彼女の言葉に、私の心臓が激しく脈を打った感じになったわ。
どうしてかは、自分がよく知ってる筈なのに、本能がそれを拒んだ。

「…な、何よ…」

「死ぬと、魂は肉体から解放され、己の願望がそのまま容姿として現れる場合もあるからな。お前は、無意識のうちに真実から目を背けている。過去の自分にもな。お前は、死んで多くの生者から精力を奪い存在の力を強めていった。」

彼女の深い栗色の目が、私をじっと見つめて離さないー。

私は、もう逃れられない苦しみに、駆られた。

ハッとして、傍にあった姿見に視線をやった…

不安になったから?いや。直感かもしれない…

「な、何よこれ…」

私は、わなわな震えた。

鏡に映っている自分の身体が、ドロドロに溶けてそしてみるみるやせ細った不細工な顔面と貧相な身体が出現した。そばかすだらけで、分厚い一重まぶた、異様な存在感を発揮した団子っ鼻。まな板のような、あるかないか分からない胸ー。
鮮やかな栗色のボブカットの髪が、くせ毛がかったパサパサの黒髪に変貌していく。

「これが、生前のお前の姿だよ。」
彼女は、尚も容赦しない。

「な、何よ、これ…!?」
「お前は、過去を無かった事にした。容姿のせいで、惨めな思いをしてきたからな。性格は、内気で引っ込み思案になっていった。そんなお前を変えたのは、音楽だった。そして、幸せの絶頂に、火災事故があった。」

「え…?!」
彼女のその言葉に、私の思考はフリーズしたわ。

急に、傍にあった姿がメラメラと燃えて、わたしはびっくりしたわ。

ーこれは、火…!?

ーあ、思い出した…あの時、私は音楽室の忘れ物を取りに戻ろうとしてたんだ…頑張り過ぎて、疲れて頭が回らなくなっていたのね…

ガス室の傍を通ろうとした瞬間、蒸気と煙が暴発し、私の意識はそこからハッキリしていない。

すると、過去の苦い思い出が蘇った。泥水を啜った、孤独で苦々しい過去ー。

私は外見を飾られ、卑屈で陰気な性格になったいった。

「自分の理不尽な境遇に抗いたくなる気持ちは、よく分かる。私は、今までそう言う魂を沢山見てきたからな。だが、このまま逃げ続けると、お前は徐々に手に負えない魔物へと変貌していくんだよ。そして、転生は永久に望めなくなる。」

彼女は、厳しく力強い声でそう言い放った。

「あなた、何者なの?し、死神気取り…?ふざけないで頂戴。」

私の声が、徐々に低くしゃがれていく。

私の顔面は、みるみる青紫色に変色していく。

だけど、私はそれ所ではなかった。

自分の楽園を踏み躙る敵を追い払うことで、頭がいっぱいだった。

私の髪はにょきにょき延び、彼女に襲いかかる。

「悪い。私は、その死神なんだ。」

死神は、鎌を構えた。

私の樹木の幹のようにうねうね伸びた髪の毛が、音速の如くスピードで彼女を狙う。

だが、彼女は表情微動だにせず、器用に交わすどころか、疾風のごとくスピードで曲麗に弧を描きそれを断ち切った。

私が唖然としていると、彼女は私の髪を掴んで、そして言った。

「私は、死神の黒須と言う者だ。これからお前を冥土へと案内する。」

彼女の刃が私をスライスチーズのように真っ二つに切り裂いた。


私は、光の粒の塊になった。

そして、彼女の胸ポケットにある奇妙な人形に私の魂は吸い寄せられたわ。
私は、とても悔しかった。

悔しくて泣きじゃくった。



彼女の走る奇妙なバイクは、学校の窓をすり抜け宙を舞った。

私は、楽園から離れて、もう二度と戻ってこれないんだと言う悲しい気持ちになった。

「あの世で、歌える?ピアノも弾けるの?」
私は、早口で彼女に捲し立てた。

「沢山聞いてやるよ。 お前は、生者に手を掛けた。その償いも、次いでにして貰うぞ。」

死神は、私の方を見ようとはせず、厳しい口調で言った。

私は、彼女の胸ポケットの人形の中で、尚も発狂し続けた。

「私から、砦を奪わないでよ!音楽が私の生き甲斐なの!」

黒須と言う死神は、無反応でバイクを飛ばし続ける。
私は怒りで爆発しそうになった。
何か、力を振り絞り彼女に襲いかかろうと、ひたすらもがいた。

だが、忌々しい人型の塊の中に閉じ込められた私の魂は、声を絞り出す事だけで精一杯だった。

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