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四葉先生の協力
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明日の小テスト本番に向けての勉強中。
「なあ。ここはどうやって解いたらいいんだ?」
星が七瀬にわからない部分について訊ねる。
しかし、七瀬は難しい表情をしたまま黙っていた。
「美麗、聞いてんのか?」
「悪いけど静かにしてもらっていいかしら。今集中してるから」
七瀬は自分自身の勉強に集中していて、星の勉強を見る余裕がないようだ。
明日が小テスト本番だから力が入るのは仕方ないか。
しかし、わからないまま放置されて星は手が止まってしまった。
白銀に聞こうにも白銀も自分の勉強に集中しているようで聞きづらそうだ。
星がスマホを弄りだす。
それに気づいた七瀬。
「星くん、勉強しなさい」
「でもわからねえんだって」
「教科書の解説を読めばわかるでしょ」
「読んでもわからねえ」
「だったらそこの部分は飛ばして次をしなさい」
それだけ言うと七瀬はまた自分の勉強に集中していく。
星のわからない問題が気になって、オレは星の問題集を覗き見る。
「零翔はわかんのか?」
「いや、オレもさっぱりだ」
星の間違え方から察するに、まず基礎がわかっていない。
星がよく間違えている数学の問題は、まず基礎の公式を理解していないと解けない問題ばかりだ。
つまり応用問題を星が解けないのは基礎を理解していないから。
だから、一度基礎に戻って教え直さないと効率よく覚えられない。
しかし、七瀬の教え方は間違えたところだけを教えるというもので、基礎が分かっていない星に応用を教えている。
七瀬も教師ではないので、間違い方からどこが理解できていないか察することはできない。
つまり、何が分からないのかが分からない状態。
わからない部分がわからないのだから、効率よく教えることはできない。
これが学生であるオレたちの限界。
やはり、経験を積んだ教師に教えてもらうのが一番。
オレは席を立つ。
「ちょっとトイレ行ってくる」
勉強を邪魔しないようにそっと椅子を引き、図書室を出る。
オレが向かったのはトイレではなく職員室。
「失礼します。四葉先生はいらっしゃいますか?」
四葉はなにやら問題集を作っていた。
「あれ?九条くんじゃない。どうしたの?今は勉強会の最中じゃなかったっけ?」
四葉はこちらの事情をある程度把握しているようだ。
「四葉先生にお願いがあります」
「勉強を教えてほしいという話かな?」
「わかっているなら話は早いですね」
勉強会でも四葉に教えてもらうことができれば、星の学力向上は今以上にのぞめるだろう。
「お断りだよ」
反応は予想通り拒否だった。
「学校もビジネスだからね。教師はボランティアじゃないんだよ。業務外の自主勉強会にまで教えなければいけない義務はないよね」
思いやりの欠片もない四葉。
やはり情に訴えかけても四葉は首を縦には振らない。
必要なのは四葉のメリット。
「ビジネスということは、四葉先生にもメリットがあればいいんですよね?」
「……………どういう意味かな?」
ここでオレは取引を持ち掛ける。
「面接のときに、その力が本物なら力を貸してほしい、って言ってましたよね?」
「言ったね」
「面倒なので力を貸すつもりはなかったんですが、先生がオレに協力してくれるなら、オレが四葉先生に協力することもやぶさかではありませんよ?」
四葉にメリットを提示してやれば、勉強会に参加してくれるかもしれない。
「取引だということかな?」
「そうです。四葉先生にも何か目的があるんですよね?」
「……………まあね」
「四葉先生の目的は大体察しがついてます」
それを聞くと、四葉は驚きのあまり目を見開く。
「……………私が何を求めているか、九条くんにはわかると?」
「この学校の教師をしている人間が求めるもの。仕事はビジネスだと完全に割り切ってる四葉先生の思考。それらを考えると一番妥当なのは、お金ですね」
今までの四葉の発言を聞いていると、仕事は面倒で、嫌々しているのがわかる。
それでも教師という仕事をするのは、四葉にとってメリットがあるから。
好きでもない仕事をする目的は、はっきり言ってお金だ。
給料を貰えるから仕事をする。
それだけだ。
「……………よくわかったね。はっきり言って驚いてるよ」
「生徒の力を借りて、お金を稼ごうとしてるんですよね」
「そうだよ」
四葉は諦めたように白状する。
「九条くんは色々と賢いようだね。目ざといとでもいうのかな。色々とわかってるね」
四葉が白状したところで、オレはさらに根幹へと踏み込んでいく。
「お金を稼ぐ具体的な方法も大体わかってます」
「……………………え?」
驚きを通り越して、言ってることが理解できないという顔になる四葉。
「生徒の力を借りて金を稼ぐ。優秀な生徒を自分のクラスに入れたい。それらを踏まえて、この学校の特殊なルールを考えると…………」
ある推測が成り立つ。
「一位のクラスは生徒だけではなく、教師もお金を貰うことができる。そうですよね?」
「……………………」
四葉は何も答えない。答えられない。
何故なら、オレの言ったことが正解だからだ。
今、オレの方が精神的に優位に立っている。
頃合いとみて、ここで仕掛ける。
「星が退学になったら、あんたも困るだろ。勉強会に参加してもらえますね?」
ほとんど脅しに近い取引を持ち掛ける。
最初、四葉は勉強を教えることを断り、オレを自分に協力させようとしていた。
勉強を教えてあげる代わりに、九条くんは私に協力しろ、ということ。
だが、星が退学になるのはオレのデメリットであると同時に四葉のデメリットでもある。
そのことを隠し取引を優位に進めようとしていた。
だが、それはオレが見破ったことでこちらが譲歩してやる必要はなくなった。
オレが四葉に協力しなくても、四葉は星に勉強を教える。
おそらく、オレが職員室に入ったときに作っていた問題集は星のためのものだったんだろう。
つまり、オレがお願いする前から星に勉強を教えるつもりだった。
「勉強会に参加するんですか?しないんですか?」
答えを催促する。
「…………わかったよ。教えてあげる」
「では急ぎましょう。時間は有限です」
オレと四葉は職員室を後にした。
「なあ。ここはどうやって解いたらいいんだ?」
星が七瀬にわからない部分について訊ねる。
しかし、七瀬は難しい表情をしたまま黙っていた。
「美麗、聞いてんのか?」
「悪いけど静かにしてもらっていいかしら。今集中してるから」
七瀬は自分自身の勉強に集中していて、星の勉強を見る余裕がないようだ。
明日が小テスト本番だから力が入るのは仕方ないか。
しかし、わからないまま放置されて星は手が止まってしまった。
白銀に聞こうにも白銀も自分の勉強に集中しているようで聞きづらそうだ。
星がスマホを弄りだす。
それに気づいた七瀬。
「星くん、勉強しなさい」
「でもわからねえんだって」
「教科書の解説を読めばわかるでしょ」
「読んでもわからねえ」
「だったらそこの部分は飛ばして次をしなさい」
それだけ言うと七瀬はまた自分の勉強に集中していく。
星のわからない問題が気になって、オレは星の問題集を覗き見る。
「零翔はわかんのか?」
「いや、オレもさっぱりだ」
星の間違え方から察するに、まず基礎がわかっていない。
星がよく間違えている数学の問題は、まず基礎の公式を理解していないと解けない問題ばかりだ。
つまり応用問題を星が解けないのは基礎を理解していないから。
だから、一度基礎に戻って教え直さないと効率よく覚えられない。
しかし、七瀬の教え方は間違えたところだけを教えるというもので、基礎が分かっていない星に応用を教えている。
七瀬も教師ではないので、間違い方からどこが理解できていないか察することはできない。
つまり、何が分からないのかが分からない状態。
わからない部分がわからないのだから、効率よく教えることはできない。
これが学生であるオレたちの限界。
やはり、経験を積んだ教師に教えてもらうのが一番。
オレは席を立つ。
「ちょっとトイレ行ってくる」
勉強を邪魔しないようにそっと椅子を引き、図書室を出る。
オレが向かったのはトイレではなく職員室。
「失礼します。四葉先生はいらっしゃいますか?」
四葉はなにやら問題集を作っていた。
「あれ?九条くんじゃない。どうしたの?今は勉強会の最中じゃなかったっけ?」
四葉はこちらの事情をある程度把握しているようだ。
「四葉先生にお願いがあります」
「勉強を教えてほしいという話かな?」
「わかっているなら話は早いですね」
勉強会でも四葉に教えてもらうことができれば、星の学力向上は今以上にのぞめるだろう。
「お断りだよ」
反応は予想通り拒否だった。
「学校もビジネスだからね。教師はボランティアじゃないんだよ。業務外の自主勉強会にまで教えなければいけない義務はないよね」
思いやりの欠片もない四葉。
やはり情に訴えかけても四葉は首を縦には振らない。
必要なのは四葉のメリット。
「ビジネスということは、四葉先生にもメリットがあればいいんですよね?」
「……………どういう意味かな?」
ここでオレは取引を持ち掛ける。
「面接のときに、その力が本物なら力を貸してほしい、って言ってましたよね?」
「言ったね」
「面倒なので力を貸すつもりはなかったんですが、先生がオレに協力してくれるなら、オレが四葉先生に協力することもやぶさかではありませんよ?」
四葉にメリットを提示してやれば、勉強会に参加してくれるかもしれない。
「取引だということかな?」
「そうです。四葉先生にも何か目的があるんですよね?」
「……………まあね」
「四葉先生の目的は大体察しがついてます」
それを聞くと、四葉は驚きのあまり目を見開く。
「……………私が何を求めているか、九条くんにはわかると?」
「この学校の教師をしている人間が求めるもの。仕事はビジネスだと完全に割り切ってる四葉先生の思考。それらを考えると一番妥当なのは、お金ですね」
今までの四葉の発言を聞いていると、仕事は面倒で、嫌々しているのがわかる。
それでも教師という仕事をするのは、四葉にとってメリットがあるから。
好きでもない仕事をする目的は、はっきり言ってお金だ。
給料を貰えるから仕事をする。
それだけだ。
「……………よくわかったね。はっきり言って驚いてるよ」
「生徒の力を借りて、お金を稼ごうとしてるんですよね」
「そうだよ」
四葉は諦めたように白状する。
「九条くんは色々と賢いようだね。目ざといとでもいうのかな。色々とわかってるね」
四葉が白状したところで、オレはさらに根幹へと踏み込んでいく。
「お金を稼ぐ具体的な方法も大体わかってます」
「……………………え?」
驚きを通り越して、言ってることが理解できないという顔になる四葉。
「生徒の力を借りて金を稼ぐ。優秀な生徒を自分のクラスに入れたい。それらを踏まえて、この学校の特殊なルールを考えると…………」
ある推測が成り立つ。
「一位のクラスは生徒だけではなく、教師もお金を貰うことができる。そうですよね?」
「……………………」
四葉は何も答えない。答えられない。
何故なら、オレの言ったことが正解だからだ。
今、オレの方が精神的に優位に立っている。
頃合いとみて、ここで仕掛ける。
「星が退学になったら、あんたも困るだろ。勉強会に参加してもらえますね?」
ほとんど脅しに近い取引を持ち掛ける。
最初、四葉は勉強を教えることを断り、オレを自分に協力させようとしていた。
勉強を教えてあげる代わりに、九条くんは私に協力しろ、ということ。
だが、星が退学になるのはオレのデメリットであると同時に四葉のデメリットでもある。
そのことを隠し取引を優位に進めようとしていた。
だが、それはオレが見破ったことでこちらが譲歩してやる必要はなくなった。
オレが四葉に協力しなくても、四葉は星に勉強を教える。
おそらく、オレが職員室に入ったときに作っていた問題集は星のためのものだったんだろう。
つまり、オレがお願いする前から星に勉強を教えるつもりだった。
「勉強会に参加するんですか?しないんですか?」
答えを催促する。
「…………わかったよ。教えてあげる」
「では急ぎましょう。時間は有限です」
オレと四葉は職員室を後にした。
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