婚約破棄をされましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました。

はゆりか

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38、お義姉様とメイル兄様

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バルメルク公爵家はドイル国の筆頭公爵家とあって屋敷も広い。
飾られいる調度品も一級品ばかり。

でも、ゴチャゴチャした感じは一切なく品がある。

しばらく進んだ所で、一つの部屋の前でメイドは立ち止まると、私に頭を下げてから扉を開ける。

「こちらが皇女様にお使いになって頂く部屋になります」

来客室なのでしょう。
広さは申し分ない程あるけど、余計なものは一切置かずスッキリしている。

好みを選ばないシンプルな壁紙にスタンダードなベット。
そして、机とソファーと洋服ダンスのみが置かれている。

奥には…浴室とトイレかしら?
2つの扉がある。

バルコニーからは街が一望できる様になっている。

「素敵なお部屋ね。ありがとう」

私がメイドに言うと、お礼を言われるとは思っていなかったのか、メイドは驚いた表情を見せるとすぐさま頭をペコリと下げてすぐにどこかへ行ってしまった。


「ティナ様。このお部屋から右に曲がって3つ隣の部屋が私の部屋となります。もしよろしければ夕食時まで時間がありますし、私の部屋で少し一緒にお茶でもいたしませんか?」

メイドが去ったのを確認すると、お義姉様は私に近づいてきて何だかちょっとソワソワした感じで言う。

「えっ…とても嬉しいですが、お義姉様もお疲れでは?」
「私は大丈夫です。なんだかもっとティナ様とお話がしたくて…あっ…」

ちょっと恥ずかしそうにお義姉様は言葉を詰まらせると少し眉を寄せて頬を赤らめて困ったような笑みを向ける。


か…可愛い…
何ですか…この小動物感。
いつもの凜としたお義姉様ではなくこの圧倒的年下感

メイル兄様でなくても抱きしめたくなってしまいますよ。


「ごめんなさい。ティナ様はお疲れですよね。このように自宅に知り合いが来ることなんて今までなかったので、なんだか私浮かれてしまって…ちょっと憧れていたんです。自分のお部屋でのお茶会に…ティナ様の滞在中に一度できたら「やりましょう」

「えっ…」
「私全然疲れていませんし、お義姉様のお部屋でお茶会…しましょう」

私の答えにお義姉様はパァァァっと明るい表情をさせる。


自室に気の知れたお友達を呼んでお茶会をすることは貴族令嬢の誰もが通る道。
私もよくリラを招待してやっていた。

普通のお茶会とは違って作法も気にせず秘密の話をしたり、普段できない殿方の話をしたり…とにかく色々なしがらみの中に生きる貴族社会の女子にとって唯一の無礼講で息抜きできる催しでもあった。


そんな楽しい事を今までやったことがないなんて…
全力でやって差し上げたい気持ちになりますよ。


お義姉様は感謝するかのように私の手を取るとニッコリと満面の笑みを私に向ける。

「ユウキ。お茶の用意をお願い」
「かしこまりました」

お義姉様はユウキにそれだけ伝えると、私の手を繋いだまま少し小走りにお義姉様の部屋まで案内される。


嬉しそうに私を案内してくれるその姿は、ちょっと子供のようで可愛らしい。


こんな些細な事すら今まで出来ていなかったなんて…

うん。今回このように私のわがままをお義姉様に叶えてもらっているのだから、私もお義姉様が今まで出来なかったこと、今後やりたいと思っていること全て叶えてあげよう。

私は自らの心に決意した。


「ティナ様。ここがわたくしの部屋になります」

お義姉様の部屋の前まで来て、お義姉様が何の躊躇いもなく自身の部屋の扉を開けると…


「思ったより遅かったな」


なぜだかそこにメイル兄様がいた。

「メ…メイル様??」
「メイル兄様⁉︎⁉︎」

私もお義姉様も思いがけない人の登場で固まってしまう。

「そろそろ着く頃だと思ってな…」

そういってメイル兄様はお義姉様に近づいてそっとお義姉様を抱きしめる。

「あー。久しぶりのアエリアだ」
「メイル様…まだ3日も経っていませんよ」

あまり驚いた様子のないお義姉様。

なんで急に自身の部屋にメイル兄様がいて驚かないのですか?


「ど…どうしてメイル兄様がお義姉様のお部屋にいらっしゃるのですかっっ⁉︎」

誰もこの状況に突っ込まないので私が思わず突っ込んでしまう。

「ティナ…あまり騒ぐな」
「騒ぐなって…普通驚くでしょう?」

私、間違っていませんよね。
誰だってこんな状態普通なら驚きますよっ

「驚くと言われてもな…バルメルク家内で転移ができるのがアエリアの部屋になっているからな」

平然と言うメイルお兄様に私は唖然としてしまう。

転移…

そういえばそんなこと言っていましたね。

でも…でも…

「いくらメイル兄様とお義姉様が婚約者とはいえ、乙女の部屋に本人不在のうちに入っているなんて…メイル兄様は何を考えているのですか?お義姉様も何受け入れているのですかっっ」


私が真っ当な意見を述べると、メイル兄様は少し険しい表情を見せる。

「お前は本当に少し母上に似てきたな…」
「ティナ様…わたくしは別に…」

「わたくしは間違った事を言っていませんよね?お義姉様が驚かないって事はこの様な事が今までも何度もあったのでしょう?メイル兄様。女性には女性の時間があるのです。乙女の部屋は殿方がどんな理由があれ勝手に入ってはならない領域です。流石に見逃せませんわ」


あまりの事に私が言い切ると、メイル兄様の後ろに控えていたランがクスクスと笑い始める。

「確かに、ティナ様の仰っていることが正しいですね。」
「ラン…お前…」

「ティナ様。アエリア様この度は急な出現をしてしまい申し訳ございません。ただ、ティナ様。一つ訂正させてください。確かにメイル様のバルメルク侯爵家の転移先はアエリア様の自室内となっていますが、メイル様もそうそう自分勝手に転移はしていません。アエリア様がまだドイル国にいらっしゃった際も日時を決めて約束通りの時にしか転移してお会いしていませんでした。

今回の事は私の不徳の致すところでございます。

になってしまったメイル様がそろそろお二方がドイル国に着くはずだとソワソワし始めて業務が疎かになりそうだったので私が転移をしてアエリア様の到着をお待ちする事を提案いたしました。」

ランは私の前まで来ると、サッと頭を下げてからニコリと笑みを向ける。

「メイル様はアエリア様から元気を頂きましたら、すぐに業務に戻りますので今回は大目に見て頂けませんか?」


まぁ…そう言われて見ればメイル兄様はお義姉様が帝国に来てからこんなに離れていたことがないから気持ちは分からなくないですが…


この状況を作ってしまっているのは私のせいでもあるし…

常識とはいえ、私がメイル兄様に対して強く言える立場ではないわよね…


「…と、こんなお話をしている場合ではありませんね…メイル様…そろそろ行きませんと大臣との会談が5分後となっております」

「あぁ。わかった」

メイル兄様はランに対して返事をすると同時に再びお義姉様をぎゅっと抱きしめて額にキスをする。

「3日後のエリックの式の際にまた来る」
「はい。お待ちしております」
 
2人は微笑み合うと周りにお構いなしに自然に口づけをすると、メイル兄様はランと共にスッと姿を消した。



…何だったの?
メイル兄様は本当に何しに来たの?
本当にお義姉様チャージに来ただけ?


「…お義姉様…やはりメイル兄様の愛情…重すぎません?辛くありませんか?」

「メイル様のお気持ちは私にとっては嬉しい物ばかりです」


そう言って笑うお義姉様は幸せそう…

うーん…この2人の絆は強いのだろうけど、私には理解し難い部分があるかも。

お義姉様が良いのであれば私が口を挟む部分ではないか…
あまり考えないようにしよう。

まぁ…今はとりあえずメイル兄様は嵐のように去っていったし…

「お義姉様…お茶会でもしましょうか」
「ええ。そうですね」


ドイル国到着早々色々ありまくりですが、とりあえず私は一度落ち着きたいです。
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