41 / 57
本当の恋人
しおりを挟む思いが通じ合った後、ユシン様の従者レックスが私達を探しに来るまで私とユシン様はただただ思いを確かめる様に互いにキツく抱きしめてキスをした。
「やはりこうなりましたか。思ったよりも早かったですね。」
私達を見たレックスはニヤニヤしながらも私達を祝福してくれた。
レックスが来たことで現実に引き戻されて一気に羞恥心が出て来る。
恥ずかしさの中でも確実に幸せを感じている。
でも、この状況に頭がついていかなくてずっとぼーっとしている。
「離れがたい」「このまま王城に来ればいい」と言うユシン様をレックスがなだめて渋々ながらもユシン様は私を家まで送り届けてくれた。
嬉しさや恥ずかしさ…色々な気持ちが渦巻く中、ユシン様は決して私の手を離さない。今までとは違うひたすら甘くて優しいユシン様に私の心臓は全く休まらない。
そして、当たり前のようにその日は興奮で一睡もできなかった。
ユシン様と本当の恋人同士…本当の婚約者になった。
好きだと自覚してからあっと言う間の出来事で頭が追いつかない。
信じられないという気持ちと、どうしようもなく嬉しい気持ちと、生まれてはじめて感じる幸せ。
ユシン様を好きだと自覚して…でもこの気持ちを封印しなくてはと思って覚悟をしたのに、早々こんな結果になるなんて誰が想像できただろうか。
もしかしたらこれは都合のいい夢なのかもしれない。
でもそう思ってもユシン様に抱きしめられた熱が身体に残っている。
現実なんだ…
思わず頬が緩んでしまう。
-------
「マリア様。ご機嫌は宜しい様ですが、昨日は眠れませんでしたか?」
最近やっと慣れてきた朝のメイクタイムで上の空だった私はレイシアに指摘されて思わず頬を染めてしまう。
そんな私の顔を見て、レイシアは一瞬驚いたような表情をしてから何かを察した様にニコリと笑う。
「ユシン殿下と仲の良い様で安心致しました。喜ばしい事ですね。おめでとうございます。体調は大丈夫ですか?初めてですと身体がお辛いのではないですか?今日はお休みなられた方が良いのでは?」
「は?」
「昨日は帰宅も遅かったですし、殿下も隅におけませんね。でもまだお互い学生の身ですし、婚約したばかりなので避妊はきちんとなさって下さいね」
ひ…にん?
…は?はっ?
はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?
「ちっ…違うわよっそんな事するわけないじゃない。勘違いしないで」
「そうなのですか?申し訳ありません。マリア様のお様子を見てそうなのかと思ったのですが…愛する2人の男女でしたら決して恥ずかしい事では無いですよ」
私の否定の言葉を信じていないのか唇に人差し指を立ててニッコリ微笑むレイシアに思わず身体中に熱をもつ。
絶対信じてませんよね。
身体中が瞬間湯沸かし器の様に急激に熱くなる。
きっと今、私は真っ赤な顔をしてるに違いない。
これじゃ余計疑われてしまうわ。
レイシアはエリカ様の侍女だからここで疑われたらきっとエリカ様の耳にも偽りの情報が入ってしまう…断固否定しなきゃ
「違うわ。本当に違うから。ただ…」
「ただ?」
なんて言ったらいいのかな…
“偽の婚約者から本当の婚約者になりました”なんて言えないし…
言葉に詰まってしまい、思わず自分の唇に手を当ててユシン様との口づけを思い出す。
「き…」
「き?」
「キスを…」
「キス?」
私は思わず言ってしまった事の恥ずかしさのあまりにレイシアから目を逸らす。
「ふふ。そうですか」
レイシアは何かを感じ取ったのか、それだけ言うと上機嫌にヘアメイクに取り掛かる。
「マリア様。いかがですか?」
レイシアにそう言われて鏡を見ると思わず固まってしまう。
「…ちょっといつもより…何というか…」
「はい。マリア様があまりにも可愛らしかったので。大人への第一歩という事で少しセクシィな感じに仕上げて見ました。お綺麗ですわ。ユシン殿下もきっと放って置けないでしょうね。楽しみです」
楽しみ?
何が???
「いや…レイシア。私はいつも通りで…」
「あっ。もうお時間がありません。ご準備を」
「えっ…ちょっ…レイシア流石にこれで学園に行くのは…」
明らかにいつもより派手目のメイクでこれじゃ夜会に行くみたいだわ。
コンコン
「マリアお嬢様。ユシン殿下がお迎えに来られています」
「えっ?」
メイクを直してもらおうとしたちょうどその時、ノリエがドアをノックする。
「ちょうどよかったですね」
「えっ…」
レイシアは満面な笑みを浮かべて私に向けて小さくガッツポーズを決めると、メイクを直す事なくそのまま玄関先まで私を連れて行く。
玄関先ではユシン様がお母様と何かを話していた。
「お待たせ致しました」
レイシアが声を掛けると、ユシン様は柔らかな笑みを私に向けてそのまま固まった。
2
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる