【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。

はゆりか

文字の大きさ
2 / 3

中編

しおりを挟む
この世界で1番自分が美しいと信じて疑わなかったバロック様は、初めて私と顔合わせした時、私の幼ながらにも人間離れした美しさに嫉妬した。

バロック様6歳。私が4歳の時、ナルシストの幼いバロック様は私の美しさに見惚れるのではなく、ただただ嫉妬心を燃やしてしまった。そして、私の見た目を普通以下にする事によって自分自身が誰よりも美しいという自尊心を保っていた。

成長と共に美しさを讃えられる自分と、「ブス」と見た目を貶される私を見て満足感を得たバロック様は本来の私の姿など過去のものとして記憶から消し去っていたのだろう。


バロック様も18歳になりナルシストな自己中心的な性格は変わっていないけど、自身が美しいと感じたものに嫉妬するのではなく、美しい物をどんな手を使っても集めるという事が趣味となっている。

美しい自身を引き立てるのは美しいもの。
美しい者の近くには美しいものしか存在が許されない。
そんなおかしな理論を持っている。

もちろん女性もその一つ。
バロック様は美しい女性に目がない。
婚約者の私がいながら美人と言われている色々な令嬢との噂が絶えなかった。

近くにいる現在の私の本来の姿を知ろうともせず……



私は周りの声に惑わされず、自分自身を見失わずに自分磨きを常に行ってきた。

ひっつめ髪のお団子頭で髪の毛を隠しながらも毎日ケアを欠かさず綺麗に伸ばして来た金色の長い髪。

大きい眼鏡に隠されているけど、どんなに忙しくてもスキンケアをしっかりおこなってきた透明度の高い白い絹のように滑らかな肌。

ひっつめ髪で吊り上げられていたキツめな目は本当はクッキリとした優しい印象を与える大きな目。

例えドレスが地味なものでも、アクセサリーなど付けていなくても私が身につけているものは全てが美しく華やかな印象になる。

本来の私の美しさに誰もが目を奪われ、言葉を失う。


「ア……アリーネ……本当にお前なのか? いや……そんなはずは……」
「正真正銘わたくしはアリーネですよ。婚約破棄、確かに承りましたので今まで我が家が行ってきた支援に関しては再度お父様に検討していただきますね」
「いや……ちょっと待て。婚約破棄は冗談だ。ちょっとした余興だよ。友人の夜会を盛り上げたくて……」

……婚約破棄で夜会が盛り上がる? その考えは一体どこからくるのでしょうか? 逆に周りの皆様はこの状況に若干引いている感じがしますが……


「バ、バロック様……私との約束は? お腹には貴方の子がっムグッ……」

私に対して弁解するバロック様にマリアが焦った声を上げる。
そんなマリアの口をバロック様が慌てて手で塞いだ。

でも、しっかり聞こえていましたよ。
見た目だけのナルシスト最低男だとは思っていましたが、まさかここまでクズ男に成長するとは……


温厚な近衛騎士団長として有名なバロック様の父上のターミネド公爵も流石に今回の事は黙っていられないでしょう。



ここ数十年。力ある我が家マルチナ辺境伯騎士団のお陰でこの国は他国からの侵略も国境付近で全て完結して、王都は安全そのもの。

治安が安定して平和な我が国は王都にいる近衛騎士団を始め、王都にいる騎士達は力を奮う機会が少ない。

そうなるといくら鍛錬をしても自然と王都に所属している騎士そのものの実力も士気も下がって来てしまう。

それを阻止する為に、辺境伯であるお父様は近衞騎士団を中心に王都にいるの騎士を辺境地区で無償で預かり鍛錬させて、いざという時の為に実施訓練をさせている。

もちろん、お父様が自発的にやっているのではなく騎士団を統括するターミネド公爵と国王から頭を下げられての事。そんな中で国王主導でほとんど無理矢理結ばれた私とバロック様の婚約。

要は私は人質のようなもの。

力ある辺境伯とはいえ、王族や王都の騎士を敵に回すのは流石によろしくない。

我が家から断る事も無碍にする事も出来ず、お父様も頭を悩ましていた私とバロック様の婚約。きっと、お父様はバロック様からの婚約破棄を喜ぶ事でしょう。


「バロック様、ご自身が一度口にした事。崇高な騎士ならば責任を持ってください。婚約破棄は確かに承りましたのでマリア嬢とお幸せに」

「ま……待てっ‼︎ アリーネっっ‼︎」

私がバロック様とマリアに対して笑みをむけると、バロックは隣にいたマリアを軽く突き飛ばして顔を赤らめながら私の手を掴んできた。

私は咄嗟に掴まれた手を捻り、自身の体を回転させてバロック様の背後をとると、空いている手でバロック様を床に叩きつけるように押さえ込む。

素早い身のこなしに、周りでこの状況を眺めていた皆が息を呑む。

「私はこの国1番の兵力を持つマルチナ辺境伯の娘です。それなりに武術も身につけていますのよ。まぁ……代々この国の騎士団をまとめ上げているターミネド公爵家の唯一無二の後継者であるバロック様にはこのくらいかわして頂きたかったのですが……」


私の言葉にバロックは先程とは違った意味で顔を赤らめた。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

平民ですが何か?私、貴族の令嬢ではありません…

クロユキ
恋愛
「イライザお前と婚約破棄をする」 学園の朝の登校時間にルーカス・ロアン子息子爵から婚約破棄を言われたイライザ。 彼の側には彼女のロザンヌ男爵令嬢がいた。 ルーカスから一方的に婚約破棄を言われたイライザ、彼とは婚約はしていないのに「先に言っておく」と婚約破棄を言われたイライザ、その理由がルーカスの母親が腹痛で動けない時イライザと出会いイライザは持っていた自分の薬をルーカスの母親に渡し名前も言わずにその場を離れた。 ルーカスの母親は、イライザの優しさに感動して息子のルーカスに婚約を考えていた。 誤字脱字があります更新が不定期です。 よろしくお願いします。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

お母様と婚姻したければどうぞご自由に!

haru.
恋愛
私の婚約者は何かある度に、君のお母様だったら...という。 「君のお母様だったらもっと優雅にカーテシーをきめられる。」 「君のお母様だったらもっと私を立てて会話をする事が出来る。」 「君のお母様だったらそんな引きつった笑顔はしない。...見苦しい。」 会う度に何度も何度も繰り返し言われる言葉。 それも家族や友人の前でさえも... 家族からは申し訳なさそうに憐れまれ、友人からは自分の婚約者の方がマシだと同情された。 「何故私の婚約者は君なのだろう。君のお母様だったらどれ程良かっただろうか!」 吐き捨てるように言われた言葉。 そして平気な振りをして我慢していた私の心が崩壊した。 そこまで言うのなら婚約止めてあげるわよ。 そんなにお母様が良かったらお母様を口説いて婚姻でもなんでも好きにしたら!

婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください

八代奏多
恋愛
 伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。  元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。  出ていくのは、貴方の方ですわよ? ※カクヨム様でも公開しております。

婚約破棄されましたが、私はあなたの婚約者じゃありませんよ?

柴野
恋愛
「シャルロット・アンディース公爵令嬢!!! 今ここでお前との婚約を破棄するッ!」  ある日のこと、学園の新入生歓迎パーティーで婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロット。でも……。 「私はあなたの婚約者じゃありませんよ? どなたかとお間違いなのでは? ――そこにいる女性があなたの婚約者だと思うのですが」 「え!?」 ※ざまぁ100%です。 ※小説家になろう、カクヨムに重複投稿しています。

婚約破棄されるのらしいで今まで黙っていた事を伝えてあげたら、一転して婚約破棄をやめたいと言われました

睡蓮
恋愛
ロズウェル第一王子は、婚約者であるエリシアに対して婚約破棄を告げた。しかしその時、エリシアはそれまで黙っていた事をロズウェルに告げることとした。それを聞いたロズウェルは慌てふためき、婚約破棄をやめたいと言い始めるのだったが…。

公爵令嬢の苦難

桜木弥生
恋愛
公然の場で王太子ジオルドに婚約破棄をされた公爵令嬢ロベリア。 「わたくしと婚約破棄をしたら、後ろ楯が無くなる事はご承知?わたくしに言うことがあるのではございませんこと?」 (王太子の座から下ろされちゃうから、私に言ってくれれば国王陛下に私から頼んだことにするわ。そうすれば、王太子のままでいられるかも…!) 「だから!お嬢様はちゃんと言わないと周りはわからないんですって!」 緊張すると悪役っぽくなってしまう令嬢と、その令嬢を叱る侍女のお話。 そして、国王である父から叱られる王子様のお話。

【完結済み】私を裏切って幼馴染と結ばれようなんて、甘いのではありませんか?

法華
恋愛
貴族令嬢のリナは、小さいころに親から言いつけられた婚約者カインから、ずっと執拗な嫌がらせを受けてきた。彼は本当は、幼馴染のナーラと結婚したかったのだ。二人の結婚が済んだ日の夜、カインはリナに失踪するよう迫り、リナも自分の人生のために了承する。しかしカインは約束を破り、姿を消したリナを嘘で徹底的に貶める。一方、リナはすべてを読んでおり......。 ※完結しました!こんなに多くの方に読んでいただけるとは思っておらず、とてもうれしく思っています。また新作を準備していますので、そちらもどうぞよろしくお願いします! 【お詫び】 未完結にもかかわらず、4/23 12:10 ~ 15:40の間完結済み扱いになっていました。誠に申し訳ありません。

処理中です...