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第一章 アクセルオンライン
プロローグ
しおりを挟む雨が降り注ぐ街。
テレビでは人気の女性キャスターがニュースを読み上げている。
『…次のニュースです。埼玉県神賀谷市でまた、20代男性の失踪事件が発生しました。』
画面が切り替わり、その現場であるマンションが、下から見上げるように映し出される。
『行方不明となったのは、会社員の〇〇さん25歳。ご両親と同居しており、母親が仕事から帰ると本人の姿は見当たらなかったと言うことです。』
画面は再び女性キャスターに切り替わった。
『当時、母親が帰宅する直前に本人から、家に着いたとLINEが届いており、警察は拉致事件の可能性を含め捜査している、という事です。』
キャスターはそこまで言うと、隣に座っていたジャーナリスト風の男に意見を求めた。
『…最近、若者の失踪事件が多発している件について、〇〇さんはどう思われますか?』
『今の若者は過敏ですからねぇ…』
画面に映る眼鏡をかけた初老の男性が、あたかも理由を知っているかのように、満足げに持論を述べている。
幸せな奴らだ…
自分たちはなんでもわかっていると思っている…
人智を超えた存在の手のひらで踊らされていることも知らずに…
男はテレビの画面を消した。
暗闇が映る画面に薄っすらと自分の顔が見える。
この世界は俺がいるべき場所ではない…
また…またあそこへ…行くのだ…
神の国…バシレイアへ…
男は手に握る女神の像をぎゅっと握りしめる。
外は変わらず雨が降り注いでいた。
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