ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
19 / 290
第一章 アクセルオンライン

18話 戦闘狂(バトルジャンキー)

しおりを挟む

ダンジョンの入口をくぐると、目の前には地下に続く階段が伺えた。

壁面には青い松明が等間隔に並んでおり、階段の床を照らしているが、その長さはどれほどなのかわからない。

一目みるだけで不気味さが伝わってくるのだが、エレナはそんなことはお構いなしに階段を降り始めた。


「まずは1階層を踏破しましょう。」

「まっ…待てよ、エレナ!」


意気揚々と階段を降りていくエレナの後ろを、イノチは恐る恐る続いていくのであった。





「ここが1階層ね…」

「…けっこう長かったな。」


5分ほど降りると、階段が終わる。
どうやらフロアに着いたようだ。

前に目を向けると、別れ道はなくまっすぐと通路が続いていて、階段と同様に左右の壁には、青い松明が等間隔に掲げられている。

その先は暗闇が支配しており、状況は確認できない。ただ、青白い灯りがポツポツと床を照らしているだけだ。


「一本道なら、話は早いわね。」


エレナは相変わらずの歩調で進み始めた。それにイノチも続いていく。

階段もそうだったが、床は荒く削られた石でできており、ゴツゴツして歩きにくい。
そんな通路を、イノチは剣と盾を両手に歩きながら、エレナに話しかける。


「モッ…モンスターは、今のところいないみたいだな…」

「そうでもないわ…この先に気配がするもの。」

「げぇっ…マジですか…何がいるのかわかる?」

「たぶんだけど…ゴブリンぽいわね。でもまぁ、レベルも低いはずだから大丈夫でしょ。」

「ゴブリンか…」


エレナはそう話しながらも、どんどん進んでいく。

イノチはゴブリンと聞いてホッとしたのか、少しだけ足取りが軽くなり、エレナについていくのであった。

それから少し進むと、両側にあった壁がなくなった。

青い松明が壁に沿ってついており、広い空間に出たのだと認識できる。

広さは学校の体育館程度だろうか。
ただ、広間の中央までは青い光は届かず、暗闇が巣食っている。


「けっこう広いな。」

「…いるわ。」

「ゴッ…ゴブリンか?」


エレナはその中央の暗闇をジッと見つめていた。

その眼は獲物を見つけたというようにギラついていて、イノチも剣と盾を持つ手に力が入る。

しばらく見つめていると、少しずつ目が慣れ始めて、イノチの目は空間の中央あたりにうごめく何かを捉えた。

小さい背丈。
頭にはツノが生えていて赤い双眸がいくつも群がっているように見える。

それらはこちらには気づいておらず、何かに群がっているようだった。


「なにか…別のモンスターに群がっているようね…」

「えっ…それって…?」

「食べてるんじゃない?」

「うへぇ…!」


エレナの言葉にイノチは後退りをした。

そのとき、かかとに石が当たって、カツンッと音をたててしまったのだ。


「ちょっと…!BOSS!」

「やっ…やべ!」


そう思った時にはすでに遅く、複数の赤い双眸が、こちらを見ているのが目に入る。

それらはギャアギャアと言葉ではない何かを発すると、イノチたちの方に向かって一斉に襲いかかってきたのである。


「チッ…!奇襲を仕掛けるつもりだったけど、やるしかないか…BOSS!私の後ろに下がってなさい!」


エレナはダガーを両手に構える。
そして、踏み込んだ足に力を込めると、一気に前へと駆け出した。

その速さはまさに疾風の如く、群れの一番先頭を走っていたゴブリンを、一瞬で真っ二つに切り裂いた。

光の粒となり消えていくゴブリンを尻目に、エレナは次々と襲いかかってくるゴブリンたちを一蹴していく。


「やっぱ強いなぁ…エレナは…俺の出る幕はなさそうだな。」


構えていた剣と盾をだらんと下げ、エレナの獅子奮迅に戦う様子を、イノチは遠目に見てそう呟いた。

残り1匹…

エレナが最後の1匹に一撃を入れようとしたその時である。


「グオォォォォォォォォォ!!」


大きな咆哮が響き渡る。
どこから現れたのかわからないが、ゴブリンよりも一際大きいモンスターが突如として現れ、手に持っている棍棒を地面へと叩きつけた。

その衝撃波は、まるで地中を何かが這っているかのように地面を砕きながら、とてつもない勢いでエレナに襲いかかる。


「…っ!?」


エレナは、ゴブリンに向けたダガーを止めて、自分に迫りくる衝撃波を見る。


「エレナっ!!」


イノチが声を上げる。

しかし、その心配も無用というように、エレナは地面をトンッと蹴り上げて、ひらりと宙を舞ってかわしたのである。


「なんなのよもう…!仕留め損ねたじゃない!」


着地と同時に悪態をつくエレナに、イノチが近寄ってきた。


「エレナ、大丈夫!?ったく…なんなんだあいつは…」

「ホブゴブリンね…あれは。」

「ホブゴブリンって…ゴブリンの上位種のか?」

「ええ、そうよ…」


エレナは立ち上がり、服をはたきながらホブゴブリンをジッと見据えて、イノチの問いに答える。

唸り声をあげながら、こちらを品定めするように見ているホブゴブリンに、イノチも顔を向けた。

小さくひ弱そうなゴブリンと比べれば、筋肉質な腕や、丸太のような太ももは筋骨隆々で、まるで同種とは思えないほどだ。

口元には、下顎から長く生えている牙が見えており、それがより凶暴さを強調している。


「だけど、所詮はゴブリンよ!あたしの相手じゃないわ!」

「…自信満々で何よりだ…俺は隠れとこうかな。」

「それで問題ないわ!ただし…」


エレナは再びダガーを構えると、一言だけイノチに告げる。


「さっき逃したゴブリン…見失ったのよ。BOSS…気は抜かないでね!」

「おっ…おう!」


そう言って駆け出すエレナに、イノチは相槌を打つ。そして、剣と盾を構え直して、あたりをキョロキョロと見回し始めた。


「はぁぁぁぁぁっ!」


両手にダガーを構えたまま、ホブゴブリンに向かって、エレナは疾風の如く、一直線に突っ込んでいく。

対するホブゴブリンは、棍棒を構えて雄叫びを上げると、突進してくるエレナに向かって、それを振り下ろした。

地面を砕く鈍い音が響き渡り、舞い上がる土煙りとともに、砕けた石のかけらがあたりに飛び散っていく。

周囲には、その衝撃で地割れが発生していく。

ホブゴブリンは醜悪な笑みを浮かべていて、どうやら手応えを感じているようだ。

しかし、土煙りが少しずつ晴れていき、叩きつけた棍棒の姿が現れると、そこにエレナの姿はどこにもなかった。

ホブゴブリンは動揺して、あたりをキョロキョロと見回す。しかし、エレナはどこにもいない。

左手の人差し指でボリボリと頭をかいて、不思議そうにしているホブゴブリン。

だが、イノチはその真上、天井にギラリと光る眼があることに気づいていた。


(あっ…あの眼…前にどこかで…)


獲物を狙う鷹のように鋭く、獅子のように威圧的で、蛇のように狡猾さを携えたギラついた眼。


(そうだ!ビッグベアを倒す時にも見た眼だ!)


イノチはそれに気づいた時、エレナがどうしてダンジョンに頑なに入りたがっていたのか、理由がわかってしまった。


(エッ…エレナって…もしかしてバトルジャンキー?)


イノチがそう思った瞬間、エレナは天井を蹴り、ホブゴブリンに一直線に飛びかかる。

そして、ホブゴブリンはエレナに気付くことなく、真っ二つに裂かれて、光の粒となり消えていった。

その光景に、イノチは少しだけ背中に冷たいものが流れていたことに気づく。

目の前には、こちらに背中を向けて立ち尽くすエレナの姿が見える。

そして、その横顔には笑みが浮かんでいるように見えたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...