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第三章 ランク戦開催
14話 寡をもって衆を制す
しおりを挟む舞い上がる砂埃を抜け、広間に出たスタンが目にしたものは、武装した集団から逃げ惑う仲間たちの姿であった。
笑い声を上げながら、次々と仲間たちを捕らえていく武装した男たち。応戦しようとした者に対しては、容赦なく得物を振るう彼らの様子は、まさにこの国の状況そのものを象徴していると、スタンは感じざるを得なかった。
容赦なく斬られ、その場に崩れ落ちていく仲間たち。
その悪逆非道の行いに、スタンはイラ立ちを隠せず、立ち向かおうとしたその時である。
「ちょっと待ちなさい。」
肩を掴まれ、振り返るスタンの前には、茶色い髪を揺らして、自身げな表情を浮かべるエレナが立っていた。
「あんたじゃ、あいつらは倒せないでしょ!ここは、あたしたちにまかせて!」
「しかし…」
「こういう時のために、わたくしたちがいるのですわ。」
「どの人が強そうかなぁ♪え~と…♪」
エレナの後ろに立つフレデリカとアレックスも、楽しげな笑みを浮かべて立っている。
突然、エレナたちの目の前に、レジスタンスの一人が吹き飛ばされてきた。
「大丈夫?」
「う…ぅ…」
エレナはうめき声を上げる彼を軽々と抱え上げると、スタンに預けてこう告げた。
「彼と一緒に隠れてなさい。他のメンバーはあたしたちが助けるから。」
「わっ…わかりました。」
焦りの表情を浮かべるスタンに微笑み、イノチから預かっていたポーションを手渡すと、駆け出すエレナ。
フレデリカとアレックスが後に続いていく。
「フレデリカは右側をお願い。アレックスは左ね。」
「了解ですわ。」
「了~解♪」
二人に指示を出すと、エレナは大きく笑みを浮かべて2本のダガーを抜き出した。
「相手はBOSSよりランクの低い奴らばっかりだから、余裕で制圧できそうね!さ~て、暴れるわよ!!」
◆
エレナがスタンを追っていった後、イノチはハンドコントローラーを起動して、何やらかがみ込んでいた。
手元にはいつものようにキーボードが現れていて、その上でカタカタと指を走らせている。
「プレイヤーは全部で…30人ほどか。ほとんど俺よりランク低いじゃん。エレナ、聞こえる?」
『…ザ…ええ、聞こえてるわよ…ザザッ…』
「プレイヤー自体は30人ほどいるけど、みんな俺よりランクは低い奴らばっかりだ。今の三人なら余裕だろ。」
『…何よ…ザ…張り合いがないわね…』
その言葉に、イノチはクスッと笑みをこぼす。
「そう言うなよ。むしろ、俺からしたらありがたいんだから。ただし、奥にいる三人には気をつけろよ。俺とランクが近いから…」
『そうなの?…ザザッ…どれくらい?』
「92と94…そんで、一番後ろにいる奴が95だな。」
『ザ…ふ~ん…どうするの?』
「無理にやらなくていいよ。俺も顔を見られたくないし…」
『…了解。とりあえずさっさと終わらして、ご退場いただきましょう。…ザ…』
エレナの言葉に「よろしく」とだけ返したイノチは、再びキーボードを叩き始める。
その目の前にあるウィンドウには、エレナたち三人や、レジスタンスたち、そして、相手プレイヤーの位置など、広間の状況が映し出されていた。
これはもちろん、『ハンドコントローラー』の能力であるのだが、エレナとの遠隔通信に加えて、戦況の把握まで行なえるようになったのは、『ハンドコントローラー』の強化を行なった影響によるものである。
ウンエイから受け取っていた強化素材を使い、『ハンドコントローラー』の強化を行なった結果、その性能は思いもよらないレベルに達していたのだ。
しかも、レアリティが『SR』から『SSR』に上がったことで、サブスキルまでついてきている。
そのスキルについては、後ほど紹介することになるのだが、ここまで性能が向上したことに一番驚いたのは、イノチ自身であった。
対象の状態を把握する『解析』。
そこから弱点などを調べる『分析』。
対象の性質を変える『書換』。
新たな性質を付け加える『開発』。
今まで個別にしか使えなかった能力を、組み合わせて使うことができるようになり、汎用性の高い武器に生まれ変わったのである。
「さてと…スタンさんは避難させたみたいだな。」
イノチが見ているウィンドウでは、赤、青、緑の3種類の点が各々の動きを見せている。
その中で、入り口付近の二つの青い点が端の方に移動を始め、その近くにいた緑の3つの点が、散り散りに動き回り始めたのだ。
緑の動きに合わせて、赤い点がどんどんと姿を消していく。
青色の点に近づく赤点を、緑が蹴散らしていく様子が見てとれる。
そうしているうちに、赤色の点はみるみるとその数を減らしていったのである。
「よし…なんとか守りきれそうだ。さすがだな!」
イノチはそうつぶやくと、ウィンドウを開いたまま立ち上がり、ゆっくりと広間へ向かい始めた。
◆
一人のプレイヤーが、ハーデの前に転がり込んでくる。
「支部長!あいつら、つっ…強すぎる!!」
その言葉を聞きながら、ハーデは青筋を立て、突然現れた三人の女を見ていた。
自分の部下たちが、小さな幼女や細身の女性たちにどんどん吹き飛ばされていく。
「あいつら…プレイヤーじゃねぇな。」
「ええ、ネームタグがありませんし。しかし、あの強さは…」
その横でメテルも無表情で、様子を窺っている。
「なら…『キャラ』か?」
「その可能性は高いでしょうね…」
ハーデは再び三人を見ると、小さく笑みを浮かべた。
そして、目の前の部下を見て、口を開いた。
「奴ら…誰くらい強えんだ?」
「かっ…かなり。俺たちじゃ手に負えないです。」
ドコォォォンッ
話している途中で、別のプレイヤーが近くに吹き飛ばされてきた。
目を向ければ、すでに仲間のほとんどがやられてしまい、暴れていた三人が、こちらに向かって歩いてきているのがうかがえる。
「ガハハハ!副団長、どうするよ?!」
ハーデが後ろを向くと、アカニシは謎の三人の女性を嬉しそうに眺めていた。
そして、にんまりと笑ってつぶやく。
「ククク…このまま見てるのもつまんねぇし、逃げるのなんて論外だろ…?俺たちで相手をする。」
「そうこなくちゃなぁ!!」
「はぁ…やはりこうなるのですか…。」
アカニシの言葉に、笑うハーデとため息をつくメテル。
その二人の間に立ったアカニシは、自分たちの目の前に来た三人に向かって話しかける。
「お前ら、何もんだ?」
「誰でもいいじゃない。」
茶髪の女は、腕を組んで偉そうに仁王立ちをしたまま、鼻を鳴らして答えた。
「レジスタンスの仲間か?プレイヤーじゃねぇのは間違いないな。」
「わたくしたちのことなんて、どうでもよろしいのですわ。あなた方の仲間は皆、戦闘不能…どうされますですわ?」
桃色の髪をした女が、振り返ることなく親指で自分の後ろを指差した。
「別にそいつらがやられたからって、俺らが逃げる理由にはならねぇよ。」
笑いながら剣を抜くアカニシ。
それを見て、茶髪の女は大きくため息をつくと、腰にあるダガーを抜きながら告げる。
「間違って死んじゃっても、恨まないでよね!」
その言葉にうなずいて、指をポキポキと鳴らす桃髪の女と、キラキラと翡翠色の目を輝かせて、楽しげにしている銀髪の幼女。
双方の間に、緊迫した雰囲気が漂い始める。
そして、アカニシが顔を歪ませて笑い、大きく叫んだ。
「これだ、これ!!俺がやりたかったのは!!反抗勢力を押さえ込むことなんかじゃねぇ!!こういうヒリヒリしたバトルなんだよ!!」
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