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第三章 ランク戦開催
81話 想う心の在り方
しおりを挟むゼンが大きく口を開き、八岐大蛇の首へと噛み付いた。
「ぐっ…はぁぁぁぁ!」
対して、八岐大蛇はその痛みに小さく呻き声をあげながらも、ゼンに噛み付かれた首を大きく引き上げる。
強い力で体ごと持ち上げられたが、ゼンはしっかりと噛み付いた口を離すことはない。
しかし…
「ぐはぁっっっ!!」
突然の衝撃がゼンを襲った。
引き上げた反動を利用して、八岐大蛇がゼンの胴体を自らの尻尾で撃ち抜いたのだ。
強烈な一撃に、ゼンは堪らず口を離してしまった。
そんなゼンに対して、八岐大蛇は尻尾でさらに追撃する。
「ガッ…!」
大きく吹き飛ばされたゼンは、木々を薙ぎ倒し、地面を削りながらもすぐに体勢を立て直す。
そして、八岐大蛇へと視線を向けると、大きく口を開いている奴の姿が映った。
「ちっ!オロチめ!」
ゼンがすぐに口を大きく開いて、ブレスの準備を行うと同時に八岐大蛇の口から紫色のブレスが放たれる。
ゼンもそれにぶつけるように赤く燃え盛るブレスを放った。
紫と赤のエネルギーの塊がぶつかり合い、大きな衝撃波を生み出す。
それらは周りの地面を大きく削り、草木を吹き飛ばすほど強力なものであった。
八岐大蛇がゼンに思念を飛ばす。
《グハハハハハ!やるじゃねぇか、ゼン!確かに前よりは強くなったようだな!》
《黙れ!相変わらず口の減らない奴だな!》
思念を飛ばして言い返すゼンに、八岐大蛇はニヤリと笑みをこぼした。
《そう強気でいられるのも終わりだぜ!おらっ!これならどうだ?》
余裕の笑みを浮かべ、自分が放つブレスに力を上乗せする八岐大蛇。
《くっ…!》
ゼンのブレスが大きく押し返される。
《ガハハハハハ!どこまで耐えれるかなぁ!》
紫色のエネルギー波がジリジリとゼンのブレスを押し返していく。
その様子を見て大きく笑う八岐大蛇に対し、ゼンは怒りを覚えて大きく叫んだ。
《なっ…なめる…なぁぁぁぁ!!!》
ゼンはそう思念で叫ぶと、八岐大蛇と同じように自分のブレスに力を上乗せする。
勢いを吹き返した赤いエネルギーの波動が、八岐大蛇のブレスをゆっくりと押し返していく。
《ほう…》
《グググググ…》
感心したように眉を上げる八岐大蛇は、必死に力を込めるゼンに思念で声をかけた。
再び拮抗する赤と紫のエネルギー波。
《わからねぇなぁ…なんでそこまで人間に加担するんだ?本来、俺たち竜種は恐れ崇められる存在なんだぜ?》
《そんなこと…お前には関係ない…》
《まぁ、そういうなよ。お前はさっき大事なものに気づいたと言っていたな?それは何なんだ?》
《言った…であろう…ググ…お前には理解はできん…と。》
その言葉に八岐大蛇は眉をぴくりと動かす。
《良いじゃねぇか、教えてくれよ。俺は興味が出てきたんだ。何がお前をそうさせるのか。あのクールだった炎竜が、どうしてここまで熱い漢になったのか…にな。》
《黙れと言っている!!がぁぁぁぁ!!》
ゼンはそう叫ぶと、さらに大きなブレスを放った。
赤いエネルギー波が紫色のエネルギー波を一気に押し返していき、八岐大蛇へと襲いかかる。
《なっ!?》
さすがの八岐大蛇もそれには驚いた。
ブレスを止めて横に体をひねり、ギリギリでエネルギーの波動をかわす。
赤い炎が熱波と共に真横を通り抜け、後方で大きな爆発を起こし、爆風が辺りを揺らしていく。
その様子をちらりと見た後、八岐大蛇は再びゼンへと視線を移すと口を開いた。
《…なかなかやるじゃねぇか。これは意地でも吐かせてやりたくなったぜ。》
その視線の先にいるゼンは息を切らしており、少し疲労がうかがえた。
そして、その後ろに見えるミコトの姿。
それを見た八岐大蛇はニンマリと笑う。
《ハァハァ…ハァハァ…奴のブレスを押し返すだけでこれとはな…》
ゼンは苦笑いしながら八岐大蛇を見つめていた。
勝つと大見えを張ったものの、力の差は歴然だった。
力では押し負けた。
ブレスは辛うじて押し切れたが、八岐大蛇は余力を十分に残しているようだ。
それに比べて、こちらはすでに満身創痍。
震える手のひらを見つめるゼン。
《せめてミコトたちだけでも逃さねば…》
後ろに倒れているミコトをかばうようにゼンは立ち上がる。
よろよろと立ち上がるそんなゼンを見て、八岐大蛇が笑った。
《ゼン!こっちはそろそろ本気でいかせてもらうぜ。》
「臨むところ…私もそろそろ本気でいかせてもらおう!」
その言葉に八岐大蛇はさらに笑みを深めた。
そして、真っ黒な翼を大きく拡げ、高く咆哮をあげる。
《そんなボロボロな体でぇぇぇ!いったいどうするんだぁぁぁぁぁ!!!》
その瞬間、八岐大蛇はゼンに向かってものすごいスピードで突進を始める。
ゼンはそれを受け止める体勢をとるが…
《軽いぜ!軽すぎるぜぇ、ゼン!!》
「ぐぁぁぁっ!」
八岐大蛇の突進に堪えきれず、吹き飛ばされてしまったゼン。
なんとか体勢を立て直してミコトの前に着地するが、そこに八岐大蛇が追撃を仕掛ける。
《後手後手後手後手だなぁ!!ガハハハハハハ!!》
体を回転させた勢いを利用して、振り抜体八岐大蛇の尻尾がゼンを撃ち抜いた。
「しまっ…ぐわぁ!!」
横に大きく吹き飛ばされたゼンは巨大な岩に叩きつけらる。
「ガッハァッ!!」
強烈な尻尾の一撃と岩に叩きつけられた衝撃で、ゼンは立ち上がることができない。
それを見た八岐大蛇はニヤリと笑うと、倒れているミコトを拾い上げてゼンへと告げる。
《ほら、ゼンよ!お前の大切な"娘"とやらがピンチだぜ!》
「きっ…貴様ぁ…グ…」
《こいつと一緒にいて、大事なことに気付けたんだっけ?ならよぉ、こいつが死んだらどうなるんだ?ガハハハハ!!》
「やめろっ!その娘だけは…私のことはどうとでもして良いが、その娘にだけは…」
《ククク…えらい焦りようじゃねぇか!さぁて、どうしようかなぁ…グフッグフフフフ…》
焦るゼンを見て醜悪な笑みを見せる八岐大蛇。
《とりあえずはよぉ、気付くことができたっていう大事なことを教えてくれよ。》
「……」
その言葉にゼンは黙ったまま、悔しそうな表情を浮かべた。
八岐大蛇はニヤニヤと笑みをこぼしながら、ゼンの言葉を待っている。
それを見たゼンは観念したように小さく息をついた。
「なぜ貴様がそんなに執着するのか知らんが…教えたらその娘を離せ…」
《それは俺の気分次第だ。話さなければ100%殺すけどな。》
「チッ…わかった…話してやる。理解できるとは思えんがな。」
《いいから話しやがれ!》
「……。大事なことというのはな、"強さの在り方"だよ。」
《あん…?強さの…在り方?》
少し拍子抜けしたのか、八岐大蛇は訝しげな表情を浮かべた。
「そうだ。お前、ウォタに勝ったことあるか?」
《水竜の奴か…。負けたことはねぇぜ…と言いたいところだが、残念ながら勝ったこともねぇ。》
「ウォタと同等の力を持つお前ですらそうであろう。やはりあれは最強の竜種なのだよ。ではなぜ、ウォタが最強と呼ばれるのか、お前考えたことあるか?」
《奴の強さか?そんなこと考えたこともねぇなぁ。お前はどう思うんだ?》
八岐大蛇は不思議そうにゼンへと言葉を返す。
それに対して、ゼンはゆっくりと言葉を綴った。
「単純だよ。奴の強さの源は"守るべきものがある"ということだ。」
《はぁ~?なんだよそれ!どこぞの熱血漢だ!》
「案外馬鹿にしたものではないさ。奴の守るべきはこのジパン全体だ。ウォタはジパンの守護竜…生半可な強さではそれは務まらん。だから奴は強いのだ。現にお前はウォタに勝てておらんしな…お前とウォタの差はそこにあると私は考えている。」
《くだらねぇ…》
納得いかなさそうにつぶやく八岐大蛇は、自分の手に握るミコトを見る。
《…なら、お前が気づいた大事なことというのは、こいつを守るってことか?》
「いや、そんな単純ではないよ。」
《なら、何だってんだ…》
その問いにゼンは一度目をつむると、何かを思い出すように静かに目を開けた。
「相手を想う心…他人のことを一番に考えて行動すること。自分のためじゃなく、相手を大切に想うこと…それが強さの根源となるのだ。」
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