ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

文字の大きさ
212 / 290
第三章 ランク戦開催

85話 見透かされていた心の傷

しおりを挟む

ゲンサイたちの目の前で、八岐大蛇は苦しみながら体を丸め、頭を埋めてく。


「おい、オロチの奴…なんだか体が小さくなってないか?」


ゼンの言葉の通り、ガクガクと震えながら呻き声を上げる八岐大蛇の体は少しずつ縮んでいるようだった。


「いったい…な…なにが起きてるの…?」


ミコトが心配げにつぶやく。
その横ではタケルも八岐大蛇を見つめているが、同じように瞳には焦りの色がうかがえた。

そんな中、額に汗を浮かべながらも好奇心を目を向けるゲンサイ。


「…みの因子…」

「…なっ!?それはまさか!」


小さくつぶやいたゲンサイの言葉に、ゼンが驚き反応する。


「え…ゼンちゃん、どうしたの?ゲンサイさんはなんて…」

「いや…これは…」


その様子を見ていたミコトがゼンに問いかけるが、ゼンは何か言いにくそうにしている。

横で見ていたタケルも訝しげに思い、ゼンに声をかけようとしたその時だった。

八岐大蛇の体が、突然大きく輝き始めだのだ。
ミコトもタケルも驚いてそちらに目を向ける。


「そろそろだな。ゼン…あんた、奴が今からどうなるかわかるだろ?」

「…覚醒か…」


ミコトたちに聞こえないように問いかけてくるゲンサイに対して、ゼンは悔しげにつぶやいた。

その間にも、八岐大蛇の体は発光しながらみるみると収縮していく。


「これは…」

「八岐大蛇は…どうなるの?」


光が強過ぎて詳細はわからないが、タケルもミコトも八岐大蛇の行く末を固唾を飲んで見守っていた。

そして…

一瞬強い光を放ったかと思えば、その光は霧散し、キラキラと光の粒子が舞い上がる。

眩しさに目を細めながら、皆が八岐大蛇へと注目する。

するとそこには、両膝をついたままの姿でうつむく男の姿があった。

少し紫を帯びてはいる漆黒の長髪。
その髪のせいで表情はわからないが、臀部からは黒い尻尾が2本、ゆらゆらと立ち上がっている。


「こっ…これって…ゼンちゃん?!」


何かに気づいたようにゼンに目を向けるミコト。
ゼンはさらに小さくうなづいた。


「あぁ、覚醒体だよ…ウォタの時と同じだ。」

「やっぱり…」


その言葉に対してタケルが疑問を投げかける。


「かっ…覚醒体だって?いよいよヤバそうな響きだね。」


苦笑いするタケルの言葉に、今度はゲンサイが反応する。


「ヤバいだけで済めばいいな…ククク…」

「嫌なこと言うなよな…ったく、ここまで来たら覚悟を決めないとな…」

「でも、なんで突然覚醒なんか…」


ミコトの疑問にタケルがため息をつく。


「理由は分かんないけどさ…さっき奴に入り込んだ光の粒子が原因じゃないの?」

「おそらくそうだろうな。その光が何かは知らねぇが、それで間違いないだろう。」

「……」


皆が話す中、ゼンは無言だった。
なぜならば、彼の中には一つの感情が渦巻いていたからだ。

"嫉妬"と"羨望"
自分が強く望む力を手にした同類たちへの妬み…


(くそ!いまだに私の中にはこのような気持ちが…)


それに気づいて、歯を食いしばる。

ミコトと共に強くなる。
そう納得したつもりだったが、彼の中にある強さへの渇望は消えていなかったのだ。

しかし、そんな四人の前で脱力していた八岐大蛇がゆっくりと顔を上げた。

つむっていた目をゆっくりと開いていく。


「ふぅ…なんだかめちゃくちゃ良い気分だ。」


黒い双眸の中に赤く染まる瞳が四人を捉えた。
そのまま八岐大蛇はゆっくりと立ち上がり、膝を払う動作をする。


「はぁ…なんだか不本意だぜ。こんな形で覚醒体になるとはなぁ。」


膝を払い終え、体を起こして頭をかきながらため息をつく八岐大蛇に対して、ゲンサイが剣を構えると他の三人もそれにならう。


「まぁいいや…とりあえず、てめぇらをぶちのめしてさっさと終わらすわ。」


その瞬間、八岐大蛇の姿が消えた。

唖然とする三人をよそに、ゲンサイだけはその動きについていく。

ガキッと鈍い音が鳴り、それに気づいたタケルとゼンがそちらに目を向ければ、ミコトに襲いかかる寸前で八岐大蛇を受け止めるゲンサイがいた。

ゲンサイの剣と八岐大蛇の拳がギリギリと音を立てる。


「てめぇ…弱いものいじめか…?」

「何を言っている…その女はお前以外で唯一俺に脅威を感じさせたんだ。先に殺っておくのが道理だろうが…」


そうかわした二人は再び姿を消した。
ミコトは二人の会話で自分が狙われたことに気づいて、その場に座り込んでしまう。

八岐大蛇とゲンサイの撃ち合いが始まった。

ゼンもタケルも、目の前で繰り広げられる攻防には、目を追いつかせるのがやっとだった。


「こっ…これは…覚醒体ってのはこんなにヤバいのかい?今までの竜の状態なんてまるで…」

「あ…あぁ…我ら竜種の力から一切の無駄を省き、人間体という一番効率的な状態に収束させたのが"覚醒体"だ。力もスピードも全てにおいて最大限に向上する。」

「そ…そうなのかい。もはや反則だね…だけどさ…」

「言いたいことはわかるぞ…」


ゼンもタケルも八岐大蛇と撃ち合うゲンサイに目を向ける。
八岐大蛇に負けず劣らずの動きを見せるゲンサイ。


「どうやったらあんな強さを手に入れられるんだ…」

「それは私にもわからん…」


二人が話す間にも八岐大蛇とゲンサイの攻防は続いていた。

八岐大蛇が硬化させた拳を振り抜くと、ゲンサイは腰を落としてロキの紋章が入った剣でそれをいなす。

頭上を過ぎゆく拳を見送りながら、ゲンサイは八岐大蛇の懐へと入り込むと、体を回転させてそのまま流れるように八岐大蛇の胴体を斬りつけた。

が、鈍い音がしてその剣は弾かれる。

弾かれた反動で体勢を崩し、後ろに吹き飛ばされるゲンサイ。

地面を削りながら両足を踏ん張っていると、今度は八岐大蛇が尻尾で追い打ちをかけた。

黒く太い尻尾が叩きつけられ、砕かれる地面。
四方八方に走る亀裂のあとを隆起する地面が追いかけていく。


「ちっ…手応えなしか。」


そうつぶやいた八岐大蛇の視線の先、砕かれた地面の上にゲンサイはいなかった。

その場に着地して後ろを振り向けば、小さく笑うゲンサイの姿があった。


「やっぱ覚醒体はすげぇな。」


そう笑うゲンサイに、黒い長髪を掻き上げながら八岐大蛇も笑う。


「俺はお前に驚いてるがな。いくら一度攻略したプレイヤーだとはいえ、竜種の覚醒体と同等の強さを持てるもんかよ…」

「…クク」


ゲンサイは何も言わずに笑っているだけだ。
その様子に八岐大蛇は大きくため息をつく。


「御方たちも何を考えているのやら…俺にはさっぱりだ。だがな、俺は負けるわけにはいかねぇ。」

「ほう…なんで負けられないんだ?興味があるな。」

「なぜかって?そんなの決まっている。今は俺が最強の竜種だからさ。ウォタの野郎が死んだらしいからな!ガハハハハ!しっかし、理由は知らんが…奴が死んだと聞かされた時は驚いたぜ。」


その言葉を聞いた瞬間、ゲンサイがハッとし固まった。
八岐大蛇はその一瞬を逃さない。


「やっぱそうか…」


瞬時にゲンサイの懐に飛び込んだ八岐大蛇は、醜悪な笑みを浮かべた。


「しまっ…!」


ゲンサイは対応しようとしたが間に合わず、八岐大蛇の拳が腹部にめり込んでいく。

メキメキと何かが折れる音をたてながら、八岐大蛇が拳を撃ち抜いた。

ゲンサイはそのまま後ろに吹き飛ばされ、木々をなぎ倒し、そのまま大きな岩に全身を打ちつける。


「グッハァッ…」


ひびが走る岩の上で血反吐を吐くゲンサイ。


「とりあえず、寝とけよ!」


そんなゲンサイの前に瞬時に移動してきた八岐大蛇は、容赦なくもう一度ゲンサイの腹部を撃ち抜いた。


「ガハッ…」


無防備の状態で再び攻撃を受けたゲンサイは、そのまま気を失ってしまう。

それを見た八岐大蛇はニヤリと笑うとゆっくりと振り返り、ゼンたちの元へと戻っていった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...