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第三章 ランク戦開催
88話 オロチの真意
しおりを挟む「よう、ゼン。元気になったか?」
カヅチの頭を掴んだまま、倒れ込んだゼンの前まで来た八岐大蛇。
「貴様ぁぁぁ、オロチィィィ!!」
「どうだ、仲間をやられた気分は?一人は死に、一人は意識不明、もう一人は両腕両脚がバキバキだぜ。」
そう笑いながらカヅチの頭を再び締め上げれば、苦しみの声が彼女から発せられる。
八岐大蛇を手を掴み、足をジタバタとさせるカヅチを見て、我慢できなくなったゼンは彼女を取り返そうと試みるが、八岐大蛇がそれをさせない。
簡単に避けられ、空いている手で叩き落とされてしまう。
「どうした!そんなんじゃ、こいつは助けられないぜ。」
「うぐっ…!が…がぁぁぁ!!」
見せつけるようにカヅチの頭を締めつければ、再び苦しみの声が上がる。
「オロチィィィ!やめろ!貴様には…竜種のプライドが…ないのか!」
「プライドねぇ…それがあれば強くなれるのか?」
叫ぶゼンの前で、八岐大蛇は大きく笑った。
「俺は今まで竜種として歩んできた。竜種であることに誇りを持ち、他の種族の模範になるように努め、強さを極めるべく励んできたんだ。覚醒体になり、ゆくゆくは御方たちに認められ、神界へ行くためにな。」
「それは神獣なら誰しもが考えていることだ!しかし、お前のこのやり方では…!」
「悟ったのさ。俺はこのままでは覚醒体にすらなれない。ウォタを超えることすらできず、神界には行くことなどできないってな。だから、ノルデンの管理をしている"御方"の計画に乗ったんだ。あの方はこのジパンにいるプレイヤーを皆殺しにすれば、"神核"を授けてくれると約束してくれたからな!」
「なっ…!きっ…貴様、アマテラス様を裏切ったというのか!?」
その瞬間、八岐大蛇の瞳に闇が宿る。
笑っていた顔も無表情になり、掴んでいたカヅチの頭から手を離した。
すでに気を失ったカヅチは脱力したまま地面へと崩れ落ちる。
そんなカヅチには興味もくれず、八岐大蛇は話し続けた。
「裏切るも何も…アマテラス様は俺が嫌いなのさ。じゃなきゃ、こんな風に俺に不自由を与えねぇよ。プレイヤーのためのレイドボスになんかされちまって…好きな時に好きな事もできず、ただただ条件が揃うまで精神体のまま待機を命じられるんだぜ?その苦しみがお前にわかるか?ゼン…自由を、誇りを奪われた苦しみが…」
「確かにその苦しみは私にはわからん。アマテラス様がお前にそれを課した理由もな。だが、それは何か考えがあってのことではないのか?理由なく、そのような事をするお方出ないことはお前もわかっているはず…。不満があるのはわかるが、我らの生みの親であるアマテラスさまを裏切ってまで…」
「もういいんだって!俺はノルデンに…あの御方について行くことに決めたんだ。アマテラスさまには今さら許してもらえるとも思ってねぇさ。」
鼻で小さく笑う八岐大蛇。
その顔にはなんとも言い表し難い表情が浮かんでいる。
どこまでが本心なのか…ゼンは計りかねていた。
なにが彼をそうさせたのかわからない。
同じ竜種として同じ道を歩み、共にウォタの背中を追ってきた好敵手とも呼べる存在。
互いに道を違えたのいつからだったか…
ぶつかり合うようになったのはいつからだったか…
アマテラスの本意もわからない。
八岐大蛇にそのような厳しい道を与えたのは何故なのだろうか…
彼はそれだけの何かをしてしまったのだろうか…
当たり前だが、考えてもゼンに答えを出す言葉できなかった。
「はぁ…余計なことを話しちまったな。まぁいい、何にせよお前も含めて全員始末するんだ。そろそろ終わりにするかぁ…ん?あれは…」
大きくため息をつき、肩をすくめる八岐大蛇だったが、その視界にあるものが映った途端、再びニンマリと笑みを浮かべたのだ。
そして、ゼンに視線だけ向けてこう告げる。
「あの女が鳴いたら…お前はどうする?」
「あの…女?ど…どういう意…っ!?」
突然そう告げられたゼンは何のことだかすぐに理解できなかったが、八岐大蛇が向ける視線の先を見て驚愕した。
「ミコトっ…!?タケルも…!まさか…オロチ、やめ…」
「やめねぇよ!」
ゼンが言い終わる前に、八岐大蛇は駆け出していた。
その瞳にはミコトしか映っていない。
その後ろでは、ゼンの悲痛の叫びがこだましていた。
・
ゼンと八岐大蛇の跡を追い、ミコトとタケルは闇が広がる林を中を進んでいた。
「そんなに遠くには行ってないはずだけど…」
そうつぶやくタケルの横で、首飾りを握りしめるミコト。
その顔には明らかに不安が浮かんでおり、暗い林の中でゼンを見つけようと必死に首を動かしている。
そんなミコトを心配そうに見つめていたタケルが、再び口を開いた。
「ミコト…本当にすまない。こんなことになってしまったのも、全部僕のせいだ。」
「…ううん、それは違うよ。これはタケルくんのせいなんかじゃない。」
ミコトはタケルの言葉に振り向くが、不安が拭い切れていないため、ニコリと笑うその顔はどこか物憂げだ。
それを見たタケルは、自分の恣意的な考えでミコトを巻き込んでしまったことに、いっそう責任を感じてしまう。
ミコトは本当にタケルのせいだとは感じていないだろう。
その事が余計にタケルの心を締めつけていく。
次の言葉が出てこない。
二人の間に沈黙が訪れた。
…が、それはすぐに終わることになる。
「よう。遅かったな!」
突然、八岐大蛇の声が聞こえたことに、タケルが一気に警戒を高めた。
「ミコト!気をつけ…カッ…ハッ…」
素早く抜刀して辺りを見回していたタケルだが、次の瞬間、腹部に強烈な衝撃を感じる。
息がつまり、声が出せなくなる。
体が勝手に"く"の字に折れ曲がっていく。
気づけば目の前には八岐大蛇が立っており、自分の腹に蹴りを撃ち込んでいたのだ。
「お前は消えてろ!」
八岐大蛇がそうつぶやくと同時に、真後ろに吹き飛ばされるタケル。
その薄れ行く視界の中に、小さくなっていく八岐大蛇が笑う姿が映っていた。
「タケルくん…!」
「おっと!お前は自分の心配をしろよ。」
「きゃぁぁぁ!!」
タケルのことを心配するミコトに対して、八岐大蛇が紫に光らせた右手を向けると、オーラでできた縄のようなものがミコトの体を縛り上げていく。
そして、八岐大蛇は身動きのとれなくなったミコトへと笑顔を近づけた。
拘束された状態でも負けじと自分を睨みつけるミコトを見て、嬉しそうに笑みを深める八岐大蛇。
「お前、ゼンに会いたいんだろ?…ククク。」
「ゼンちゃんは…無事なの?」
「安心しな。殺しちゃいねぇ…すぐに会わせてやるよ。」
八岐大蛇の言葉に少しだけ安堵の表情を浮かべるミコト。
そんなミコトを連れて、八岐大蛇はゼンの元へと一瞬で戻ってきた。
「さぁ…会いたがっていた愛しのゼンちゃんだぜ!」
いやらしい言い方でそう告げながら、わざとらしくミコトの顔をゼンへと向ける八岐大蛇。
ミコトも痛々しい姿のゼンが目の前に現れ、涙を浮かべる。
「ゼンちゃん!!大丈夫…!?」
「…ミコト!」
対するゼンはと言うと、縛り上げられたミコトの姿に驚きと焦りを感じずにはいられなかった。
そんな二人を見て、笑みをいっそうと深める八岐大蛇。
そして、小さくつぶやいた。
「さぁ、ショータイムの始まりだ。」
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