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第三章 ランク戦開催
95話 来たる決戦へ
しおりを挟む黒いゲートが消えてヴィリとヴェーがいなくなると、アマテラスはミコトの方へとゆっくり向き直った。
それに合わせて、巨大な狼もミコトへと鋭い視線を向ける。
ジッとミコトを見据えるアマテラスとツクヨミ。
二人に見つめられ、どうしていいのかわからずにたじろぐミコトをかばうようにゼンが口を開いた。
『アマテラスさま、お久しぶりでございます…と言っても先ほど会話したばかりですが。』
「うむ。ゼンよ、息災そうでなによりだ。」
『ツクヨミさまも…』
「ふん…」
ゼンの言葉の途中で白き狼は鼻を鳴らし、まるで気安く話しかけるなとでも言うように顔を背けた。
その態度にミコトは訝しげな表情を浮かべるが、気に留めることもなくアマテラスは話を続ける。
「お前か…ミコトというプレイヤーは?」
「は…はい、そうですが…」
ツクヨミを見ていたミコトは、突然アマテラスに問われてミコトは少し驚いたが、その態度がツクヨミにとっては気に食わなかったようだ。
「おいプレイヤー、姉上の質問にはハキハキ答えろ!」
「…ご…ごめんなさい。」
「ふん…ナヨナヨしおって!」
「ツクヨミ…まぁ、そう言うな。」
ミコトに厳しく当たるツクヨミを宥めるようにアマテラスが声をかける。
気に食わなさそうな表情を浮かべ、再び鼻を鳴らしてそっぽを向くツクヨミの態度に、小さくため息をついたアマテラスは改めてミコトに視線を向けた。
「ミコト…気にせんで良いぞ。ツクヨミはプライドが高いのだ。許してやってくれ…」
「なっ…!姉上!」
その言葉に顔を赤らめるツクヨミを無視して、アマテラスは話を続けた。
「とりあえず、今回はご苦労だった。お前たちのおかげで、ノルデンの計画を阻止することができた。いろいろと受けた被害もヴィリの奴が元通りにしてくれたし、結果的に100点満点だな。」
「…と言うことは、私たちの目的は達成された…そう考えて良いんですか?」
「うむ、それで良い。イノチ殿から連絡はあったと思うが、ジプト法国の方も片付いたし、残すはリシア帝国のみだ。」
ミコトはその言葉を聞いた際にある違和感に気づく。
ジプト法国の名を出した瞬間だけ、アマテラスの表情が少し曇った気がしたのだ。
ゼンは目の前にいる女神は竜種の創造主…生みの親だと言っていた。
ならば、彼のことについても…
「ジプト法国の件は確かに聞いてます。だけど、一つ疑問があるんです。伺ってもいいですか?」
先ほどまでの困惑した表情はなく、少し口調を強めて問いかけてくるミコトに、アマテラスは眉をひそめた。
一方で、今度はゼンはミコトの態度にたじろいでいた。
それもそのはず。
ゼンからすれば自分の親であり、至高の御方であるアマテラスだ。
礼節を持って接しなくてはならない相手であるにも関わらず、ミコトはアマテラスに対して睨みつけるように自らの質問を投げかけたのだ。
青ざめながら、自然とツクヨミへと視線が移った。
そして、今まで以上に鋭い視線をミコトに向けているツクヨミを見て、ゼンはさらに顔を青くする。
『お…おい、ミコト。アマテラスさまにいったい何を伺うとと言うのだ。』
「何って…ゼンちゃんは知りたくないの?」
『あ…相手はアマテラスさまなのだ。聞けることなど何もない。』
「ゼンちゃんがそうでも、私は知りたいよ!」
『ミコト…!頼むからあまり失礼なことはしないでくれ!』
そんなやり取りをする二人を見ていたアマテラスは、静かに口を開いた。
「疑問…か。よいぞ、言ってみろ。お前はこの国を守るために行動してくれたからな。話せることなら答えてやろう。」
「姉上っ!」
「ツクヨミ…お前は少し黙っておれ。」
「…っ!?わ…わかりました。」
アマテラスの言葉に反論しようとしたツクヨミだったが、逆に睨みつけられて黙り込んでしまった。
一方、ゼンはゼンでアマテラスの言葉に驚きを隠さずにいる。
しかし、そんな二人に気を留めることもなく、アマテラスは仕切り直すようにミコトへと顔を向けた。
「すまないな…こやつらは本当に頭が固くて敵わん。では、改めて聞かせてもらおうか。お前の疑問とやらを…」
真っ直ぐとした瞳がミコトに突き刺さる。
しかし、ミコトも負けじと視線を返した。
「ジプトで何があったのかは聞いています。ジプトでの作戦成功、ゲンサイさんのこと、そして…」
「ウォタ…のことか?」
ミコトが小さくうなずくと、アマテラスはやはり眉をひそめた。
「…率直に伺います。ウォタさんは誰に殺されたんですか?」
「…」
何も答えず静かに目をつむるアマテラスに、ミコトは問いかけ続ける。
「それに、あなた方は何者なんですか?さっきの男の人もそう…イノチくんたちに会いに来た人たちも…いったい何が目的なんですか!?」
『ミコト…』
心配そうにつぶやくゼン。
ミコトはアマテラスをジッと見つめていた。
少しの沈黙が訪れて、アマテラスが静かに目を開く。
「…よかろう、お前には少しだけ話してやる。」
アマテラスはそう告げると、静かに話し始めるのだった。
◆
「BOSS…!!!」
怒った様子でドアを開き、部屋の中へと入ってきたエレナ。
その後ろには、フレデリカとアレックスの姿もある。
イノチが"Z"と密会していた時間帯、三人はイノチがいなくなったことに焦り、必死にその行方を探していたのだった。
そして、レンジから帰ってきたと連絡を受けて急いで戻ってきたのである。
「心配したのよ!!突然いなくなったりして…」
「そうですわ。いったいどこへ行っていたのです?」
「そうだよぉ♪みんなとぉ~ても心配したんだからね♪」
「あ…ごめん。伝えてなかったっけ?」
振り返ってそうつぶやいたイノチは、再び窓の外に視線を向けた。
主人の様子がいつもと少し違う。
そのことに気づいた三人は、今までの怒りもどこへやらといった感じで顔を見合わせる。
「なにかあったのです?BOSS、何が憑き物が落ちたような顔ですわ。」
「だね♪BOSS、何かあったの♪?」
そんな二人の問いかけにイノチは少し間を置くと、静かに口を開いた。
「実はさ、"Z"に呼び出されて会ってきたんだ。」
「なっ!」
「…!」
「わぁ♪」
エレナもフレデリカもアレックスも、皆驚いた表情を浮かべる。
「何を…話してきたの?」
「ウォタのことについて…かな。」
エレナの問いかけに対して窓の外を見つめながら静かに答えるイノチ。
その様子に我慢できず、今度はフレデリカが問いかけた。
「ウォタさまについてとは…いったいどんな話だったのですわ?」
「あ、うん…ウォタを生き返らせる方法を聞いてきた。」
その瞬間、フレデリカは目を見開いた。
「ウォタさまを…生き返らせる方法があるのです?!!」
「ある…らしいよ。"Z"の話が嘘でなければね。」
イノチの元へ駆け寄り、じっと見つめてくるフレデリカ。
その瞳に応えるように、イノチも振り向いてそう答えた。
そんな二人の様子を見ていたエレナが、肩をすくめて口を開く。
「だけど、いったいどんな方法な訳?死んだ者を生き返らせるなんて、そんな方法聞いたことないわよ。」
「そうだねぇ♪もしそんな方法があるなら、それはもう神さまの力を借りることくらいじゃない♪でも、神さまなんて本当にいるのかなぁ♪」
アレックスが頭を悩ませるその姿は、皆の目にとても愛らしく映る。
それに見惚れていたイノチはハッとして頭を何度か振り、気を取り直して話し始めた。
「ア…アレックスの言うとおり、ウォタを生き返らせるには神さまに会わなきゃならない。けど、前にも話しただろ?このバシレイアという世界を管理する神とそれを邪魔する邪神の話。"Z"が言うにはジプトを管理する神さまに頼めばいいらしい…」
「神…さまに?BOSS、本気で言ってる?」
「わぁ♪本当にいるんだね♪」
イノチの言葉に驚くエレナと喜ぶアレックス。
その一方で、フレデリカがあごに手を置いたまま口を開く。
「BOSS、その神とはアヌビス神のことでは…?」
「フレデリカ、知ってるの?」
「もちろんですわ。魂の裁量を行う神、ジプト法国ではそのように崇拝されているはず…ただし、どうやって会うのかはわかりませんけど…」
「そこまで知ってるなら、肝心なところも押さえておきなさいよね。」
「うるさいですわ…全く知らないよりマシです。」
突然、張り合い出すエレナとフレデリカに苦笑いを浮かべるイノチ。
「二人ともやめろって。会う方法は"Z"に聞いてるから問題ないよ。でも、俺たちにはそれより先に終わらせないといけないことがある…」
再び窓の外に顔を向けるイノチ。
彼からの言葉の意味を理解しているエレナたちは、ふざけるのをやめてイノチへと視線を向けた。
「まずは、リシア帝国での作戦を成功させること。ジパンを守り抜くことだ。」
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