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第四章 全ての想いの行く末
22話 変なコードの使い方
しおりを挟む「おい、イノチ!何だよこれ!」
イノチのガチャウィンドウに起きている異変に、セイドは声を上げて問い詰める。
「お…俺にも何が何だか…」
イノチもガチャウィンドウを見ながら困惑していた。
こんなコード、どこで手に入れたのか。
記憶を手繰り寄せるイノチは、ふとあることを思い出す。
「そう言えば…前回のガチャの時、なんか変なコードを手に入れたな…」
「変なコード…?ガチャでか?そんなの聞いたことねぇよ!」
「あぁ…そうだよな。でも、本当なんだって。」
イノチは一度、10連ガチャをキャンセルし、アイテムボックスを開いた。
そして、画面を指でスライドさせていくと、あるアイテムが目に映りそこで指を止める。
「これだ…」
イノチの言葉を聞いたセイドは、アイテムボックスを覗き込んだ。
そこには『Special Athy code(※※※※)』という文字だけが描かれたアイテムが置かれていたのだ。そして、注意書きには「※ガチャを引く際に使用可能」とだけ記されている。
「説明はこれだけか…使った時の効果とかはわかんねぇみたいだな。」
「だな…同時に手に入れた防具をエレナたちに無理やり装備させられてたから確認するの忘れてた。とりあえず、使ってみるか…」
「そうだな。呪い系のアイテムでもなさそうだし…」
セイドが興味深げな言葉をこぼしたが、イノチは追求したい気持ちをグッと堪え、再びガチャページを開いた。
「と…とりあえず5連にしとく?」
「いや、10連でも変わんねぇだろ?ビビったのか?」
「ビ…ビビってなんかいねぇよ!」
本当は少し及び腰になっていたが、イノチはそれを否定しつつ10連アイコンをタップする。
先ほど表示されていたものと同様のメッセージが現れたのことを確認すると、セイドと顔を見合わせてゆっくりと『はい』に指を当てた。
『コードを認証しました。Special Athy code(※※※※)を使用します。』
突然、画面にポップアップが現れる。
そして、『Now Loading』の文字が右下に現れて、何かを読み込む時間が訪れた。
ポロンッ♪
待っている二人を前に、再び通知音とポップアップが現れる。
『ロード完了。好きなガチャを選択してください。』
「な…なんだよ…好きなガチャって…」
「わからん…とりあえず画面をタップしよう。」
イノチはそう言うと、恐る恐る画面に触れる。
すると、ポップアップが消えていくつかのスライドが現れたのだ。
見つめるイノチとセイドの前で、スライドたちは無言のまま単調に横移動を繰り返している。
「おい、イノチ…お前、これ…」
「あぁ…ヤバいやつだな…」
唖然としたままそうつぶやく二人は、それぞれのスライドに書かれている文字を見て言葉を失った。
「武器専用…キャラ専用…職業ピックアップ…防具専用…全部選び放題じゃねぇか…」
「だな…もう驚きとか通り越してビビってるよ。さっきのは訂正するわ。俺、ビビってる…」
「それより…なぁ、これってガチャは普通に回すのか?ここまで来るとそれすら疑わしいんだが…」
「…どういうことだ?」
すでに混乱しているイノチは、一瞬セイドの言葉が理解できなかった。
「いや、だから好きなガチャは選択できるけど、選択した後は普通に回すだけなのかってこと。引かずに選んだりとかさ。」
「さすがにそれはないだろ…本当にチートだ、それは。」
「いやいや、すでにお前はチートだよ。」
セイドは大きくため息をつく。
それを見たイノチも複雑な気持ちだった。
こうなってくるとガチャの醍醐味がなくなってしまう。
ガチャは何が出るかわからないから一喜一憂するのだし、その時ダメでもまた次はと、挑戦する気持ちが生まれるから面白いのだ。
なんでも選べるなら『ガチャ』ではない。
イノチにとって、もはやガチャ魔法は意味のないものになってしまう。
「とりあえず…なんか引いてみたらわかるだろ。」
「…そうだな。」
「…」
突然、元気のなくなったイノチを見て少し心配になるが、それよりもまずは彼のガチャの仕様を確認することが先決だと、セイドは切り替える。
そんなことを考えていると、いくつかのスライドを指で動かしたところでイノチの指が止まった。
「なぁ…これ引いていいか?」
イノチの声は元気のなかった先ほどとは違い、意味ありげな雰囲気を感じさせる。
「どれだ?」
画面を向くイノチの表情は見えなかったが、まず先にセイドは画面を覗き込んだ。
「マジかよ…こんなのまであんのか。ほんとにこれを引くつもりか?」
「あぁ…確認したいこともあるんだ。頼むよ…」
やはりイノチの雰囲気が違う。
彼の背中には哀愁のようなものを感じざるを得なかった。
「お前のガチャだ。お前が選べよ。」
その言葉に、イノチは一言「ありがとう。」とだけつぶやくと、そのスライドをタップする。
選んだそのガチャには…
『神獣ガチャ』と書かれていた。
・
「おい…ついに"天運"があのコードを使ったみたいだぜ。」
片方の男がキーボードを打ちながら言う。
「みたいだな…だが、あれを使えばガチャ魔法はもはやガチャじゃなくなるからな。あいつ、どうすんだろ…」
同じようにキーボードに指を走らせながら、もう一人の男がそう返す。
「そりゃあ、普通にコード使って好きなアイテム選ぶだろ。」
「そうかなぁ…俺はそれはしないと思うけど…」
「なんでだ?」
最初に切り出した男が手を止めて聞き返した。
それに対して、もう一人は手を動かしたまま答える。
「だってさ、天運は"ガチャを引く"のが大好きなんだと思うんだよ。今まであいつを見守ってきた俺はそう感じた…」
「そうかぁ?でも、好きなものを選べる方が嬉しいんじゃないか?」
「それはお前の価値観だろ?あいつにしてみれば、あのコードを使うってことは、楽しみにしてたプレゼントの箱が透明なアクリル板で中身丸見えなのと同じなんだよ。ワクワクなんてそこにはない…」
男はそう言って手を止めると目をつむった。
「ガチャはさ、何が出るかわからないから一喜一憂するんだろ?」
「確かに…そうだが…お前、突然どうしたんだよ…」
「どうもしてないさ…俺は天運を信じてるだけだ。」
最初に話しかけた男は、そう目をつむる男を見て唖然としていた。
するとそこにヘルメスが現れる。
「あなたは口でなく手を動かすことです。」
「じょっ…上官!」
男は驚いて手を動かし始めるが、隣で目をつむっていた男がいつのまにか何事もなかったかのように手を動かしていることにギョッとした。
「とはいえ、あなた方の懸念も理解はしていますよ。彼はあのコードをどう使うのか…」
その言葉に二人の男はヘルメスへと顔を向ける。
「やはり上官も気になられますか。」
ヘルメスはその言葉に返事はしなかった。
その代わりに男たちへこう告げた。
「私がなぜあなた方をこのお役目に抜擢したのか、少しは理解してもらいたいですね。」
今まで見たことがないほど冷ややかな色の視線を送るヘルメスを前にして、二人は余計なことを聞いてしまったと無言で後悔する。
「彼があのコードを手に入れた事はあなたたち二人しか知らないのです。彼のことを初期から見守ってきたあなた方だからこそ、私は声をかけたのです。口を開かず、作業を進めなさい。」
その瞬間、とてつもないスピードでキーボードを叩き始める二人。
そんな二人を見ながら、ヘルメスは小さくため息をついた。
(そろそろ彼の下へ行かないといけませんね。)
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