280 / 290
第四章 全ての想いの行く末
51話 いっぺん死んできやがれ
しおりを挟む「さて…紳士なおじさま。そろそろ幕間といたしましょうか。」
フレデリカは不敵な笑みを浮かべて、クリスにそう告げる。反対に、クリスは今までの余裕は一変し、窮地に追い込まれたと言っても過言ではなかった。
先ほどから気にかけている屋敷西側の脅威が、未だにそこから動いていない事だけが唯一の救いか。それが意味するのは、"奴"の足止めが効いているということだからだ。
(まずはここをどう切り抜けるか…それが最優先か。)
クリスはそう考えながら、気まぐれな神たちに対して怒りを覚えていた。彼らが予定通りに対応してさえくれていたら、こんな事にはなっていないはずなのに。
そもそも、クリスは初めからクロノスという男は信用ができなかった。得体が知れず、掴みどころのない男…だが、オーディンの決定に逆らうことはできなかった。
(オーディンさまも、なぜ彼の方を仲間へお入れになったのか…)
そう考え、この現状を悔やむクリス。だが、オーディンが不在中の今、クロノスたちに逆らうことはできない。
クリスは小さくため息をつき、すぐに切り替えた。
今それを悔しんでいる暇などなく、目の前にいる敵にどう対処すべきか…それが今の最優先事項なのだ。しかも、その内の一人は竜種と同様のオーラを放ち、未知の強さを持っている。
突然、力を解放したのか…それとも隠していたのか…
疑問はあるが、今それを解いている暇はない。
そして…
ーーーまともにやり合っても勝てる道理はない。
クリスはそう考えて、ふと一つの案に辿り着いた。
(奴らは神に仲間を殺されてなお、ここに来たはず。その理由は、せめてエレナだけでも奪還したいと考えてのことだろう。だが、奴らは知らない。仲間を殺した神は、我がランドール家とも繋がっているのだ。我らに逆らえば、また神が来る…それを教えてやれば…)
ニヤリと笑った笑みを浮かべるクリス。そして、彼はフレデリカにこう告げた。
「一つ忠告しておこう…」
その言葉にフレデリカは眉を顰める。対するクリスは落ち着きを取り戻したのか、ゆっくりとフレデリカに対して言葉を綴る。
「我がランドール家にはある秘密があるのだ。詳しくは言えんが、これ以上この地で狼藉を働けば…あるお方たちが黙っておらんぞ。」
「ある…お方…?それはもしかして…世界を治める神のことですか?」
「ハハハ…知っていたか。ならば話は早い!そうだ、このままではお前たちは神々の怒りを買うぞ!それが怖ければ、エレナのことは諦めて帰るがいい!今ならまだ、間に合うかもしれんからな!」
大きく笑うクリス。その顔には、どうだと言わんばかりの笑みが浮かんでいた。フレデリカが何やら悩む様子を見て、すでに勝った気でいるクリスは、調子に乗ってさらにこう告げる。
「しかし…お前のような力の持ち主、このままおめおめと逃げ帰らせるのももったいないな…どうだ?我がランドール家に仕えてみるのは…?そちらのチビは趣味ではないが、お前ならば、私の特別な侍女としても使ってやってもいいぞ!ハッハッハッ!」
だが、そう勝ち誇って笑うクリスの言葉に、フレデリカはあきれたように大きくため息をつくと、笑みを返すように不敵に笑った。
「クリスさま…何やら楽しげですね。しかし…残念ですわ。その神さま方たちなら、うちのBOSSが排除しましたので…」
「ハハハ…ハッハッ…はぁ!?」
笑っていたクリスは、その突然の言葉に驚いてしまう。だが、冷静に考えれば、証拠などどこにもない。逆に、その発言に怒りを感じて声を大きくする。
「そ…そんなことがあってなるものか!この私がそんな嘘で騙されると思うな!」
だが、それに被せるようにフレデリカが言葉を綴った。
「確か…うちのBOSSが言っていた神の名は…クロノスさまとアヌビスさまでしたかしら?ねぇ、アレックス。」
盾の少女もそれに楽しげに頷いたが、それを聞いたクリスの方は言葉が出なかった。神の名は合っているのだ…目の前の女性の発言を疑う余地がないほどに。
(まさか本当に…!?まずい…まずいぞ…御方たちが戻ってこない理由はそういうことだったのか!!)
神が破れるなどあり得ないと…そう高を括っていた。そんなクリスを責められる者など居ないだろう。
普通は神が人に負けるなど、考えもつかないはずである。
そう驚愕に打ち震えるクリスに、フレデリカは笑ったまま声をかける。
「どうなさいましたか?クリス=ランドールさま…」
「あ…あり得ない…あり得ないぞ!神が人に負けた…?絶対にそんなことはあり得ない!!なんなのだ貴様ら!そもそも何故エレナを狙う!」
「うーん…そうですわね。仲間だから助けに来た…それだけですわ。」
「助けにだと!?ここはエレナの家だぞ!何故助けられねばならん!」
取り乱し、声を上げるクリス。
だが、フレデリカはそんな目の前の貴族に向かって、鋭く告げた。
「それは、あの娘が助けて欲しいと願ってるから…ですわ。」
「エ…エレナが…助けて欲しいだと!?」
「そうですわ。娘をモノとしか考えない父親の元でならば、誰だってそう考える…違いますかしら?」
「ふざけるな!エレナは私の娘だ!それを一族のためにどう使おうが、私の勝手であろう!あの娘も、光栄に思うべきなのだ!一族の繁栄!その役に立てることをな!!」
そこまで吐き捨てて、肩で息をするクリスに対し、フレデリカは小さく「やはり、クソですわ…」とこぼした。その横では、アレックスも怒った表情を浮かべている。
フレデリカは、今まで抑えていた殺気を全開にする。それに焦りを感じたクリスは、ゆっくりと後ずさってしまう。
それを見て、最後にフレデリカはこう告げた。
「自分勝手な父親は、いっぺん死んでやり直すですわ。」
「う…うるさい!貴様らにそんなことを言われる筋合いなど……がっ…」
クリスは違和感に視線を落とした。そこには桃色の髪がふわりと視えており、いつのまにか間合いを詰めたフレデリカが目の前にいる。
「そ…そん…な…バカな……ガハッ…」
「エレナの親ですから殺しはしませんが…少しは弁えたほうがいいですわ。」
薄れる視界の中に、そう吐き捨てるフレデリカを見ながら、クリスはその場に倒れ込んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる