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25話 普段と変わらぬ…朝?
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目が覚めると、開けていた窓から朝日が差し込んでいる。その眩しさに目を細めながら起き上がり、大きく背伸びをする。
いつもと変わらない朝の訪れ。
一階に降りて外に出て、井戸水を汲んで顔を洗う。濡れた顔をタオルで拭いて大きく深呼吸すれば、清々しい新鮮な空気が肺を満たし、その心地よさが満足感を満たしていった。
だが、いつもと変わらないのはここまでだ。
「あ!ユウリ様、おはようございます!まもなく朝ご飯ができますわ!」
家に戻って台所を見ると、ピンク色をした多彩な花柄のエプロンをつけたエルフ族のディネルースがテキパキと朝食を準備しており、戻ってきた俺に気づいてそう告げた。
その様子についため息が出てしまうが、そんな俺の様子を見たディネルースが本気で心配してきたため、面倒くさいと思って「なんでもない。」とだけ伝えた。
次にリビングに目を向ければ、誰に準備してもらったのかわからないが、朝から1人優雅に紅茶を嗜むターの姿があった。視線は合ったはずなのに、彼女はまるで無視する様に目を逸らす。その態度にイラッとしたが、それ以上に諦めの感情の方が大きく、再びため息が出てしまった。
なんでこんな事になったのかと内心で考え直してみても、俺にはもはや理解不能だ。ターは無理やりここに住み着くし、ディネルースは倒したと思ったら好意を寄せられていくら断っても離れてくれない。
静かで平穏な日々に賑やかさが加わったのだと考えれば少しは気が楽ではあるが、それ以上に失望の方が大きいのは否めなかった。
「俺の静かな暮らしが……」
誰にも聞こえない様にそう呟いた俺は、仕方なく朝食を待つ為にリビングにあるターがいるテーブルに着く。
今日は何をしようかと考えながらボーッとしていると、ディネルースが木製の皿によそった朝食を運んできて、俺とターの前に並べていくその顔はどこか満足げだった。
「今日は薬草サラダとスクランブルエッグ。付け合わせにパンを準備しましたわ。」
お皿を並べ終え、作ったメニューを簡単に説明して自分の席に着くディネルースを視線で追っていると、それに気づいた彼女はなぜか顔を赤らめてモジモジし始めたので、面倒くさくなるのを懸念してそれを無視する。
「いただきます。」
俺の言葉に他の2人も倣って手を合わせ、それぞれが朝食に手をつけ始めた。
まずはサラダから食べるのが、俺の朝ごはんのルーティンであり、器を手に取ってフォークで一口頬張った。
「……ん、このサラダ美味いな。」
「ありがとうございます。採れたての野菜と食用薬草、それにわたくし特製のドレッシングを使ってますわ。」
ディネルースはそう言って微笑んだ。
確かに彼女が作った朝ごはんは美味かった。スクランブルエッグだって俺が作ってもこうはいかないくらい味が整っている。
こういうのもありなのかもしれないな……
そんな思いをよぎらせながら、付け合わせのパンに手をつけようとしたところで、ある事に気がついた。
「ター、さっきからサラダ全然食べてないじゃん。」
「……そうね。」
相変わらず、視線も合わせず済ました顔で答える彼女にイラっとするが、朝から怒っていてはもったいないと心を沈める。
「ディネルースのサラダ美味いよ?せっかくだから食べてみたら?」
「いいえ、私は遠慮しておきます。」
「なんで?野菜嫌いだったっけ?てか、せっかく作ってくれたんだから残すの厳禁な!」
彼女の一貫した態度に苛立ちが募り、ついつい語尾を強めてしまう。だが、彼女は全く意に介する事なく、パンとスクランブルエッグだけ平らげると席を立った。
「おい!残すなって!作ってくれた人に悪いだろ!」
食べ終えた器だけを持って洗い場へと向かうターに、俺は席を立ち上がってその怒りをぶつけるが、彼女は俺に対してではなく、困った顔を浮かべるディネルースへと言葉を投げかけた。
「ディネルース……あなた、あれだけやられてもまだ懲りてないのね。」
「はて……?なんの事でございますか?」
「はぁ……しらばっくれるのも大概にしなさい。どっかのおバカさんは気付いてない様だけど、そんなに臭いドレッシング食べられたものじゃないわよ。」
その言葉に俺がカチンときた。せっかく作ってくれた朝ごはんにケチをつけるなど言語道断。ましてや臭いなどと悪態をつくなど許せる事ではない。
やっぱりここは1つ解らせないといけない様だ。
「おい、ター!そんな言い方ないだろ!!人がせっかく作ってくれたのに。君は自分が作ったものをそんな風に言われたら嫌じゃないのか!?」
俺が指を差してそう言い放つと、彼女は大きなため息をついた。小声で「まったく。どこまで鈍感なんだか……」とディスられた事にもちゃんと気付いており、それに言い返そうとしたところで、ターから驚くべき事実を聞かされる。
「そのドレッシング。毒入りよ。しかもオオゼリから取れる猛毒。」
「は……?」
俺が口を開けたまま唖然とする中、ターは面倒臭そうに俺を一瞥すると肩をすくめて2階へと上がっていく。
その様子を見送りながら混乱した頭を必死に整理している後ろで、こっそりと逃げ出そうとするディネルースに気づいた俺は、振り向く事なくその頭を片手で鷲掴みにする。
「おい待て……」
「あ……あら……ユウリさま?そんなお怖いお顔をして……い……いかがなさいましたか?」
逃げ遅れたと後悔の色を浮かべるディネルース。
こんな彼女に対して、俺は般若の様な顔を向けてこう叫んだ。
「朝ごはんを粗末にするんじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
朝の森に彼女の断末魔が響き渡った。
いつもと変わらない朝の訪れ。
一階に降りて外に出て、井戸水を汲んで顔を洗う。濡れた顔をタオルで拭いて大きく深呼吸すれば、清々しい新鮮な空気が肺を満たし、その心地よさが満足感を満たしていった。
だが、いつもと変わらないのはここまでだ。
「あ!ユウリ様、おはようございます!まもなく朝ご飯ができますわ!」
家に戻って台所を見ると、ピンク色をした多彩な花柄のエプロンをつけたエルフ族のディネルースがテキパキと朝食を準備しており、戻ってきた俺に気づいてそう告げた。
その様子についため息が出てしまうが、そんな俺の様子を見たディネルースが本気で心配してきたため、面倒くさいと思って「なんでもない。」とだけ伝えた。
次にリビングに目を向ければ、誰に準備してもらったのかわからないが、朝から1人優雅に紅茶を嗜むターの姿があった。視線は合ったはずなのに、彼女はまるで無視する様に目を逸らす。その態度にイラッとしたが、それ以上に諦めの感情の方が大きく、再びため息が出てしまった。
なんでこんな事になったのかと内心で考え直してみても、俺にはもはや理解不能だ。ターは無理やりここに住み着くし、ディネルースは倒したと思ったら好意を寄せられていくら断っても離れてくれない。
静かで平穏な日々に賑やかさが加わったのだと考えれば少しは気が楽ではあるが、それ以上に失望の方が大きいのは否めなかった。
「俺の静かな暮らしが……」
誰にも聞こえない様にそう呟いた俺は、仕方なく朝食を待つ為にリビングにあるターがいるテーブルに着く。
今日は何をしようかと考えながらボーッとしていると、ディネルースが木製の皿によそった朝食を運んできて、俺とターの前に並べていくその顔はどこか満足げだった。
「今日は薬草サラダとスクランブルエッグ。付け合わせにパンを準備しましたわ。」
お皿を並べ終え、作ったメニューを簡単に説明して自分の席に着くディネルースを視線で追っていると、それに気づいた彼女はなぜか顔を赤らめてモジモジし始めたので、面倒くさくなるのを懸念してそれを無視する。
「いただきます。」
俺の言葉に他の2人も倣って手を合わせ、それぞれが朝食に手をつけ始めた。
まずはサラダから食べるのが、俺の朝ごはんのルーティンであり、器を手に取ってフォークで一口頬張った。
「……ん、このサラダ美味いな。」
「ありがとうございます。採れたての野菜と食用薬草、それにわたくし特製のドレッシングを使ってますわ。」
ディネルースはそう言って微笑んだ。
確かに彼女が作った朝ごはんは美味かった。スクランブルエッグだって俺が作ってもこうはいかないくらい味が整っている。
こういうのもありなのかもしれないな……
そんな思いをよぎらせながら、付け合わせのパンに手をつけようとしたところで、ある事に気がついた。
「ター、さっきからサラダ全然食べてないじゃん。」
「……そうね。」
相変わらず、視線も合わせず済ました顔で答える彼女にイラっとするが、朝から怒っていてはもったいないと心を沈める。
「ディネルースのサラダ美味いよ?せっかくだから食べてみたら?」
「いいえ、私は遠慮しておきます。」
「なんで?野菜嫌いだったっけ?てか、せっかく作ってくれたんだから残すの厳禁な!」
彼女の一貫した態度に苛立ちが募り、ついつい語尾を強めてしまう。だが、彼女は全く意に介する事なく、パンとスクランブルエッグだけ平らげると席を立った。
「おい!残すなって!作ってくれた人に悪いだろ!」
食べ終えた器だけを持って洗い場へと向かうターに、俺は席を立ち上がってその怒りをぶつけるが、彼女は俺に対してではなく、困った顔を浮かべるディネルースへと言葉を投げかけた。
「ディネルース……あなた、あれだけやられてもまだ懲りてないのね。」
「はて……?なんの事でございますか?」
「はぁ……しらばっくれるのも大概にしなさい。どっかのおバカさんは気付いてない様だけど、そんなに臭いドレッシング食べられたものじゃないわよ。」
その言葉に俺がカチンときた。せっかく作ってくれた朝ごはんにケチをつけるなど言語道断。ましてや臭いなどと悪態をつくなど許せる事ではない。
やっぱりここは1つ解らせないといけない様だ。
「おい、ター!そんな言い方ないだろ!!人がせっかく作ってくれたのに。君は自分が作ったものをそんな風に言われたら嫌じゃないのか!?」
俺が指を差してそう言い放つと、彼女は大きなため息をついた。小声で「まったく。どこまで鈍感なんだか……」とディスられた事にもちゃんと気付いており、それに言い返そうとしたところで、ターから驚くべき事実を聞かされる。
「そのドレッシング。毒入りよ。しかもオオゼリから取れる猛毒。」
「は……?」
俺が口を開けたまま唖然とする中、ターは面倒臭そうに俺を一瞥すると肩をすくめて2階へと上がっていく。
その様子を見送りながら混乱した頭を必死に整理している後ろで、こっそりと逃げ出そうとするディネルースに気づいた俺は、振り向く事なくその頭を片手で鷲掴みにする。
「おい待て……」
「あ……あら……ユウリさま?そんなお怖いお顔をして……い……いかがなさいましたか?」
逃げ遅れたと後悔の色を浮かべるディネルース。
こんな彼女に対して、俺は般若の様な顔を向けてこう叫んだ。
「朝ごはんを粗末にするんじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
朝の森に彼女の断末魔が響き渡った。
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