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41話 モヤモヤ
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「ごめん!わざとじゃないんだ!」
男は土下座しながら俺とゴジさんに向かってそう告げた。その際、背に携えた大きな弓がずり落ちて後頭部に当たり、男は再び悶絶している。
「なんだ、こいつ?」
「……」
俺は男の様子に呆れて首を傾げるが、ゴジさんはまったく隙を見せぬまま男を睨んでいる様だ。
そんなに警戒するほどの相手なのだろうかと疑問が浮かんだが、ゴジさんが油断していないという事は俺も警戒した方が良さそうだ。
そう判断すると、まずは俺から男に声をかける。
「おい!あんた!わざとじゃないってどういう事だよ!」
「言葉の通りだ!わざとじゃない!」
「いやいや!だから、それがどういう事なのかって聞いてんだって。」
「すまん!それもわざとじゃないんだっ!!」
「はぁ……?」
やばいぞ……こいつは話が通じない面倒くさいタイプだ。
そんな予感が頭をよぎるが、それでもこのままでは埒があかない。わざとじゃないという事は間違って攻撃してしまったという事なのだろうが、ローズはそれで死んだんだ。間違ったからごめんで済まされては、こちらとしてはたまったものではない。
そう考えたら、いまだに土下座をしている男に対して再び怒りが込み上げてきて、俺は男に歩み寄りながら声を荒げてしまう。
「お前な!いい加減にしろよ!こっちは仲間が1人死んだんだぞ!」
「おい!ユウリ、近づくな!」
ゴジさんが俺を制止しようと声をかけたが、怒りでそれが聞こえなかった俺は、そのまま男の数歩手前まで近づいてしまう。
「何をどう間違ったのか!ちゃんと説明してもらうぞ!その内容によっては……」
怒りに任せて土下座する男の後頭部指を差して説明を求めたその瞬間だった。男は突然腰元から小型のナイフを抜き、俺に襲いかかってきた。
「死ねっ!」
男はそう吐き捨てて一瞬で立ち上がり、俺の喉元に小型ナイフを突き立てようとする。その表情は先ほどの申し訳なさそうな泣き顔とは違い、気持ちの悪い愉悦を浮かべた笑みだ。
「ユウリっ!」
ゴジさんも俺の下へとっさに駆け寄ろうとするが、さすがの彼でもこれは間に合わない。
「ケケケ!殺ったぁぁぁ!」
勝利を確信したかの様に笑う男は、手に持つナイフにさらに力を込め、俺の喉めがけてナイフを滑らせる。このままでは俺の喉はこいつのナイフに掻き切られ、一瞬で絶命するだろう。
だが、男の目的は叶わずに終わる。
俺がその凶刃の一突きを、皮一枚ギリギリのところでかわしたからだ。
「へ……?」
期待した感触を得られなかった事で拍子抜けた顔を浮かべる男の右脇腹に、俺は左脚で蹴りを見舞った。
「へぶしっ!」
予想していなかった衝撃を腹に受けた男は、間抜けな声と共に吹き飛ばされて近くにあった大岩に鈍い音を響かせて正面からぶつかると、そのあとは重力に引っ張られる様にずるずると地面にずり落ちる。
「大丈夫か!?」
うつ伏せに倒れている男の様子を窺っていると、ゴジさんが駆け寄ってきた。
「大丈夫大丈夫!怪我ひとつしてないし。」
「……お前、今のは予測していたのか?」
「なんか怪しいやつだったしね。ゴジさんも警戒してたからそこは冷静だったよ。」
俺の様子にホッとして、ゴジさんは小さく「そうか。」とだけ呟いた。それと同時に、馬車の中から出てきたターとディネルースがこの状況を見て首を傾げていたので、俺が一部始終を簡単に説明すると、ディネルースはローズが死んだ事に嘆いたが、ターは特に表情を変える事はなかった。
確かにローズは俺の事を狙ってきた暗殺者だったけど、色々あってここまで旅を共にしてきた仲だ。仲間、とまではいかないけれど、多少心境の変化があってもいいんじゃないか。
そう感じてちょっとだけ切なくなった。
「で、あとはこいつをどうするかだな。」
気絶している男を縄でぐるぐる巻きに縛り上げ、ゴジさんにそう視線を向けると、彼ははニヤリと笑みをこぼす。
「俺が引き取ろう。馬車の修理代やらなんやら、搾り取れるだけ搾り取らんと気が済まん。」
それを聞いた俺は、内心で「ご愁傷様」とだけ呟いた。ゴシさんは元だが最強の冒険者でいろんな人脈を持っている。自分ではやらない拷問なんかも、得意な知り合いだってたくさんいるはずだ。
俺なんかを狙ったばっかりに……
タイミングが悪かったとしか言いようがない男の今後を想像して、同情だけはしてやる事にする。
その後、俺たちはたまたま通りがかった馬車に乗せてもらい、今日の目的地だったオルの街へと再び進み始める。
ゴジさんはすぐに連絡鳥を飛ばして冒険者ギルドへの応援を依頼しており、それが到着するのを待つ為にその場に残ると言った。壊された馬車だってゲイズの街へ持ち帰らないといけないし、それは仕方のない事だった。
別れ際に、俺たちからの依頼を最後まで全うできなかった事を謝罪されたが、これはゴジさんのせいではない。俺は気にしないでほしいと告げ、元々支払う予定だった報酬をゴジさんに手渡した。その際、ローズの遺体は丁重に葬ってほしいとだけお願いをして。
「だんな、まもなくオルに着きやすぜ。」
荷台の搬入口から見える空を眺めていると、御者の男がそう告げた。それに小さく返事をしてみたが、気分は落ち込んだままだ。家までの道のりも後わずかだというのに、なぜか心には穴が空いた様で後味が悪い。
攻撃してきた男の狙いが俺自身だった事はそもそもわかっていた事。だが、そのせいでみんなに迷惑をかけてしまった。それがなければローズのだって死なずに済んだのに。
心の奥でモヤモヤとした気持ちの悪い感情が蠢いていたが、俺はそれを消すための方法を知らなかった。
男は土下座しながら俺とゴジさんに向かってそう告げた。その際、背に携えた大きな弓がずり落ちて後頭部に当たり、男は再び悶絶している。
「なんだ、こいつ?」
「……」
俺は男の様子に呆れて首を傾げるが、ゴジさんはまったく隙を見せぬまま男を睨んでいる様だ。
そんなに警戒するほどの相手なのだろうかと疑問が浮かんだが、ゴジさんが油断していないという事は俺も警戒した方が良さそうだ。
そう判断すると、まずは俺から男に声をかける。
「おい!あんた!わざとじゃないってどういう事だよ!」
「言葉の通りだ!わざとじゃない!」
「いやいや!だから、それがどういう事なのかって聞いてんだって。」
「すまん!それもわざとじゃないんだっ!!」
「はぁ……?」
やばいぞ……こいつは話が通じない面倒くさいタイプだ。
そんな予感が頭をよぎるが、それでもこのままでは埒があかない。わざとじゃないという事は間違って攻撃してしまったという事なのだろうが、ローズはそれで死んだんだ。間違ったからごめんで済まされては、こちらとしてはたまったものではない。
そう考えたら、いまだに土下座をしている男に対して再び怒りが込み上げてきて、俺は男に歩み寄りながら声を荒げてしまう。
「お前な!いい加減にしろよ!こっちは仲間が1人死んだんだぞ!」
「おい!ユウリ、近づくな!」
ゴジさんが俺を制止しようと声をかけたが、怒りでそれが聞こえなかった俺は、そのまま男の数歩手前まで近づいてしまう。
「何をどう間違ったのか!ちゃんと説明してもらうぞ!その内容によっては……」
怒りに任せて土下座する男の後頭部指を差して説明を求めたその瞬間だった。男は突然腰元から小型のナイフを抜き、俺に襲いかかってきた。
「死ねっ!」
男はそう吐き捨てて一瞬で立ち上がり、俺の喉元に小型ナイフを突き立てようとする。その表情は先ほどの申し訳なさそうな泣き顔とは違い、気持ちの悪い愉悦を浮かべた笑みだ。
「ユウリっ!」
ゴジさんも俺の下へとっさに駆け寄ろうとするが、さすがの彼でもこれは間に合わない。
「ケケケ!殺ったぁぁぁ!」
勝利を確信したかの様に笑う男は、手に持つナイフにさらに力を込め、俺の喉めがけてナイフを滑らせる。このままでは俺の喉はこいつのナイフに掻き切られ、一瞬で絶命するだろう。
だが、男の目的は叶わずに終わる。
俺がその凶刃の一突きを、皮一枚ギリギリのところでかわしたからだ。
「へ……?」
期待した感触を得られなかった事で拍子抜けた顔を浮かべる男の右脇腹に、俺は左脚で蹴りを見舞った。
「へぶしっ!」
予想していなかった衝撃を腹に受けた男は、間抜けな声と共に吹き飛ばされて近くにあった大岩に鈍い音を響かせて正面からぶつかると、そのあとは重力に引っ張られる様にずるずると地面にずり落ちる。
「大丈夫か!?」
うつ伏せに倒れている男の様子を窺っていると、ゴジさんが駆け寄ってきた。
「大丈夫大丈夫!怪我ひとつしてないし。」
「……お前、今のは予測していたのか?」
「なんか怪しいやつだったしね。ゴジさんも警戒してたからそこは冷静だったよ。」
俺の様子にホッとして、ゴジさんは小さく「そうか。」とだけ呟いた。それと同時に、馬車の中から出てきたターとディネルースがこの状況を見て首を傾げていたので、俺が一部始終を簡単に説明すると、ディネルースはローズが死んだ事に嘆いたが、ターは特に表情を変える事はなかった。
確かにローズは俺の事を狙ってきた暗殺者だったけど、色々あってここまで旅を共にしてきた仲だ。仲間、とまではいかないけれど、多少心境の変化があってもいいんじゃないか。
そう感じてちょっとだけ切なくなった。
「で、あとはこいつをどうするかだな。」
気絶している男を縄でぐるぐる巻きに縛り上げ、ゴジさんにそう視線を向けると、彼ははニヤリと笑みをこぼす。
「俺が引き取ろう。馬車の修理代やらなんやら、搾り取れるだけ搾り取らんと気が済まん。」
それを聞いた俺は、内心で「ご愁傷様」とだけ呟いた。ゴシさんは元だが最強の冒険者でいろんな人脈を持っている。自分ではやらない拷問なんかも、得意な知り合いだってたくさんいるはずだ。
俺なんかを狙ったばっかりに……
タイミングが悪かったとしか言いようがない男の今後を想像して、同情だけはしてやる事にする。
その後、俺たちはたまたま通りがかった馬車に乗せてもらい、今日の目的地だったオルの街へと再び進み始める。
ゴジさんはすぐに連絡鳥を飛ばして冒険者ギルドへの応援を依頼しており、それが到着するのを待つ為にその場に残ると言った。壊された馬車だってゲイズの街へ持ち帰らないといけないし、それは仕方のない事だった。
別れ際に、俺たちからの依頼を最後まで全うできなかった事を謝罪されたが、これはゴジさんのせいではない。俺は気にしないでほしいと告げ、元々支払う予定だった報酬をゴジさんに手渡した。その際、ローズの遺体は丁重に葬ってほしいとだけお願いをして。
「だんな、まもなくオルに着きやすぜ。」
荷台の搬入口から見える空を眺めていると、御者の男がそう告げた。それに小さく返事をしてみたが、気分は落ち込んだままだ。家までの道のりも後わずかだというのに、なぜか心には穴が空いた様で後味が悪い。
攻撃してきた男の狙いが俺自身だった事はそもそもわかっていた事。だが、そのせいでみんなに迷惑をかけてしまった。それがなければローズのだって死なずに済んだのに。
心の奥でモヤモヤとした気持ちの悪い感情が蠢いていたが、俺はそれを消すための方法を知らなかった。
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