Cross Navi Re:〜運命の交差〜

noah太郎

文字の大きさ
37 / 50
第二章 秋人の場合

欺瞞編 1-14 勇気試し

しおりを挟む

果物を齧りながら、秋人は隣に座って、果物を齧る少女に目を向ける。

言葉が通じる少女。
街に潜入したその日の昼に、この教会で出会ったのだが、懐かれてしまったようだ。





秋人が教会で仮眠を取っていると、子供たちの遊び声が聞こえてきた。煩わしく思っていると、なんと彼らは騒がしく教会に入ってきたのだ。

一瞬焦りながらも、側廊に積み重なっていた長椅子の影に身を隠した。冷静に様子を伺うと、どうやら勇気試しに来たようである。。

話を聞く限り、グループの1人が、昨晩寝ぼけて、外で用を足している時に、教会に入っていく白い影を見たという。

(寝ぼけて外でションベンするかよ、普通…)

秋人は、ツッコみたい気持ちを抑えつつ、教会に入る姿を見られていたことについて、反省する。

とりあえず、彼らの動向を見守り、飽きて帰るのを待つことにした。


「ケレゴン!ほんとに見たのかよ?!」

「本当だって!白い影が路地からスッと現れて、そこの壁の中に吸い込まれるように入っていったんだよ!」

「また、いつもの夢なんじゃないの?」


どうやら少し気の弱そうなケレゴンと呼ばれる男の子が、目撃者のようだ。周りの子達は、少し呆れたように彼の話を聞いている。

先頭に立つリーダー格のサリオン。
その横で、ス○夫的ポジションな奴がスールミア。
気の強そうな女の子がエアロス。
そして、その女の子の横に、笑顔で立っているのが、エフィルであった。

5人は少しの間、教会の中を散策していたが、すぐに何もない事に飽きたのか、リーダー格のサリオンが、大声で声をかける。


「やっぱ、何もないじゃないか!つまんねぇの!帰ろうぜ!」


その声を聞いて、スールミアとエアロスは頷くと、サリオンと一緒に、教会から出ていってしまった。ケレゴンは、寂しそうに下を向いている。

そんなケレゴンに、エフィルは近づいて声をかけた。


「あたしは信じるよ。」


ケレゴンは顔を上げて、泣きそうな顔でエフィルを見ている。そんなケレゴンにエフィルは、歯抜けの笑顔で答えるのだった。


「とりあえず、サリオンたちに追いつこうよ!」


エフィルがそう言うと、ケレゴンは頷いて、教会の出口へと駆け出した。
秋人は、ホッと胸を撫でおろしたのだが、その時に、小石を蹴ってしまった。

カツンッ

秋人が蹴った小石は、小さく音を立てて、壁へと跳ね返る。


(しまった!)


そう思った時にはすでに遅かった。ケレゴンを追いかけようとしていたエフィルが、足を止めて、こちらを伺っている。


「だっ、誰か…いるの?」


震える声で、エフィルは問いかけると、ゆっくりと音のした方へと向かい始めた。

秋人は、どうにかエフィルを交わせないか思案するが、どうにも距離が近すぎる。小さくため息をついて、ゆっくりと立ち上がった。


「ッッッ!?」


エフィルは、ビクッと体を震わせて立ち止まり、秋人へと恐れの視線を送る。
大声出されて逃げられると思っていた秋人は、意外な顔をして、静かにエフィルに話しかけた。


「驚かすつもりはないよ。君たちが出ていくまで隠れているつもりだったんだけど…って、あ~言葉通じないのか…」


致命的なことに気づいて、しまったとばかりに、秋人は額に手を当てた。


(言葉も通じないんじゃ、何を言っても意味ないじゃん。)


そう思いながら、ここからどう逃げ出すか考えようと、目の前に目を向ける。
少女は立ち尽くしたまま、怯えに染まった目をこちらに向けている。

秋人は、ため息をつくと、抜け出せそうな穴の空いている壁を見つけて、そちらに歩いていく。しかし、秋人が腰をかがめて、壁をくぐろうとしたその時、


「あ…あの…、待って!」


必死さが伝わってくる声が、秋人へ向かってかけられた。

秋人は、驚いて壁をくぐるのを止め、振り返る。少女の瞳には、怖さの中に宿る彼女の芯の強さが見えた。

胸元のペンダントをギュッと握りしめて、視線を送る少女に、秋人は驚きつつ、向き直り、声をかける。


「俺の話してることが、わかるのか?」


その問いに、少女はコクリと頷いた。


「…怖くないのか?」

「こっ、怖いのは怖い…」

「そうか。なら何で逃げない?」

「わっ、わからないけど…逃げなくてもいい気が…した。」

「なんだよ、それ…ハハ」


秋人は唐突に笑い出す。何がおかしいのかわからない。しかし、笑いが込み上げてくる。

そんな秋人を見て、エフィルも少しずつ笑い始める。表情はまだ、恐怖が抜けきれてないが、歯抜けの笑顔で、秋人と一緒に笑い始めた。


「ハッ、ハハハハハッ」
「アハハハハハハハッ」


一通り笑い終えると、2人は向き直り、顔を合わせる。


「お前、名前は?」

「エフィルミア、春の宝石と書いてエフィルミアって言うの。みんなはエフィルって呼ぶよ!お兄ちゃん…は?」

「春の宝石か…綺麗な名前だ。俺は秋人。アキトだ。」

「アキト…意味は?」


そう問われて、秋人は困ってしまう。自分の名前の意味など、親から聞いたこともない。少し考えて、秋人はこう告げる。


「アキト。フクシュウシャ…かな。」

「フクシュウシャ?」


その答えに、エフィルは首を傾げる。
秋人は気にするなとジェスチャーして、エフィルに話しかける。


「ところで、この街はなんて街だ?来たばかりで知らないとこが多いんだ。教えてくれるか?」


その問いかけに、エフィルは笑顔で答える。


「ここはトアールって街だよ!スヴァルで1番大きな街!」

「トアール…、スヴァル…か。それだけじゃよくわからないな。他に街について、知ってる事を教えてくれるか?」

「うん!いいよ!」


エフィルがそう答えた瞬間、教会の入り口の方から、ケレゴンたちの声が聞こえてきた。


「おーい、エフィル?何やってんだよ!」
「本当に何かいたのかも…」
「そんな事あるもんか!」
「でもぉ…」


そんな会話をしながら、ケレゴンたちが教会の中へと入ってくる。
振り返り、その様子を眺めていたエフィルであったが、ハッとして秋人の方へ向き直すと、そこには誰もいなくなっていた。


「どうしたんだよ、エフィル。」
「やっぱり…なんかいたの?」
「だ~か~ら~、そんなことないって!」
「でっ、でもぉ~」


誰もいない空間を、ジッと見据えるエフィルに対して、他の4人が声をかけると、エフィルはくるりと向き直って、笑顔でこう告げた。


「ううん、気のせいだったみたい!行こう!みんな!」


そう言ってエフィルは走り出して、教会の入り口で、仲間たちに「早く~」と手招きする。他の4人は顔を合わせるが、すぐにエフィルの方へと走り出した。

キャッキャッと笑いながら、教会から出て行く4人を見送り、エフィルは教会内をチラリと振り返る。

そして、ニコッと笑って、教会を後にするのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―

酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。 でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。 女神に導かれ、空の海を旅する青年。 特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。 絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。 それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。 彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。 ――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。 その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。 これは、ただの俺の旅の物語。 『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...