異世界トライアウト〜再挑戦は異世界で…体は美少女なんだけどね〜

noah太郎

文字の大きさ
6 / 19
第一章 イクシードの女の子

5ストライク 追憶と…勧誘?!

しおりを挟む

ーーーここはどこだろう…

 目の前には真っ白な世界が広がっていた。誰もいない真っ白な世界で小さな金髪を揺らし、ソフィアは一人立ち竦んでいる。

ーーーアル兄は…ジーナ姉は…他のみんなはどこに…?

 キョロキョロと辺りを見渡しても、誰の姿も見当たらない。さっきまでベスボル会場に居たはずなのに、どうしてこんなところに一人で…
 ソフィアの心に、不安な気持ちが広がっていく。

 しかし、悲しくなって俯いた瞬間、突然大きな歓声が沸き起こった。驚いて顔を上げれば、綺麗に澄んだ青空と客席に座る多くの観客の姿が見える。

ーーーあれ…?なんで…ここは……なんだっけ…球…場…?

 視線の先には、なぜだか見たことのある"バックスクリーン"と両脇に立つ巨大な照明。そのバックスクリーンの上には日本国旗が掲げられ、それをここ特有の浜風が揺らしている。
 バタバタという音が聞こえてきそうなほどに、風に靡くその姿を見て、ソフィアの中である記憶が呼び起こされていった。

 ふと、自分の右手が小さなボールを握り締めていることに気づく…
 次の瞬間、突然左肩を掴まれた。だが、不快感などは一切なく、振り向けば、そこには丸坊主の青年が一人立っている。

 顔は陽に焼けて真っ黒で、キャッチー用のヘルメットを被り、重そうなプロテクターとレガースを身に纏っている。キャッチーマスクを脇に抱え、ミットを持って白い歯を光らせている彼は、楽しげに口を開いた。


『なんだよ、二郎!お前、緊張してんのか?』


ーーー二郎…?そうだ…俺は鈴木二郎だ…そして、こいつは拓実…俺の女房役で小学校からの幼馴染の佐藤拓実…

 いつの間にか、小さな少女だった自分の体が、大きな高校球児の姿に変わっていることに気づく。


『高校史上最強の怪物でも、緊張するんだな!』


 今度は後ろから声が聞こえてきた。振り返ってみると、そこには見知った顔ぶれが並んでいる。そして、再び別の記憶が蘇ってきた。

ーーーそうだ…ここは甲子園の大舞台だ。今日は…俺たち竜王高校が快挙を成し遂げる日…決勝戦…優勝…

 そこまで思い出すと、俺は彼らに「緊張なんかしてねぇよ!」と一喝した。チームメイトたちは皆、笑いながら自分のポジションに戻っていく。
 そんな彼らを見て小さく笑いつつ、ふと外野に目を向ければ、レフト、センター、ライト…順々に送る視線の先で、懐かしい顔ぶれが手を上げて応えてくれた。
 それに手を上げて返し、再びバッターボックスに向き直って打者を睨みつける。キャッチーの拓実がサインを出して、自分と野手に指示を出す。

ーーーねじ伏せろってことかよ…フッ…拓実らしいな。

 それに頷くと、マウンド上の俺は両手を大きく振りかぶった。右足をプレートにかけ、左膝を腰の位置まで上げると同時に、胸の位置にグローブとボールを運んでくる。そして、腰を前方に少しずらし、ゆっくりと移動する重心に併せて右足で大地を力強く握りしめながら、左足を大きく前に踏み出すのだ。

ーーー地面から力をもらっている感覚…これが気持ちいいんだよな…

 左手のグローブを脇に巻き込めば、自然と右肘が正面を向く。ボールを持った右手が、鞭のように自分の後頭部を掠め、そのまま右肘と連動するように前に出ていく。

 そして…

 見たこともない豪速球が、手元から放たれた。
 まるで、指先からレーザービームを撃ったような感覚に体を震わせながら、ボールの行方を追う。その先では、打者が振ったバットが空を切り、気持ちのいい破壊力のある音が拓実のミットから発せられた。

 審判がストライクを宣言し、ゲームセットが告げられる。チームメイトたちが俺の下に駆け寄って来て、喜びの声を上げる。

ーーー竜王高校…甲子園初優勝…俺たちが成し遂げた偉業…

 だが、いつの間にか自分は元の小さな少女の姿に戻っていて、喜ぶチームメイトたちを俯瞰して見ていることに気づいた。その中には、なぜか自分の姿も見える。

ーーーなっ!?おい、俺はここにいるぞ!それは…俺じゃない!

 そう叫んだが、マウンドで喜ぶ自分とチームメイトたちの姿はゆっくりと遠ざかっていき、彼らの姿はそのまま白い光の霧の中へと消えていってしまう。
 少女の姿をしたままの俺は、誰も居なくなった真っ白な空間に一人、呆然と立ち尽くしていた。

 と、その時だった。


「やっと思い出したか…」


 突然、後ろから声をかけられて驚いて振り向くと、そこには金色の長い髪を綺麗にまとめ上げた一人の女性が立っていた。
 銀色の軽鎧に似合う健康的な褐色の肌、エメラルドブルーに輝く瞳、そして、美しくも凛々しさを感じさせるその表情に俺は魅入ってしまう。
 そんな俺の視線に気づいてか、その女性は大きな笑い声をあげた。


「アッハッハッハッ!今の君は3歳児の少女であるとはいえ、そんなに見つめられると私でも照れるな!」


 少し野生的だが綺麗で大きな声に、ボーッとしていた俺はハッとして、咄嗟に疑問を投げかけていた。


「あ…あなたは…誰ですか?」

「私か?私はアストラという!一応、スポーツの女神と呼ばれてもいるな。」

「スポーツの…神様…?」


 それを聞いた俺は唖然とした。
 神様など信じたことがなかった俺が、まさかこんな夢を見るなんて…しかも、今のこの体は小さな少女だ。別にロリコンなんて趣味持ってないし、女装趣味なんてのもないんだが…まったく変な夢だ。

 しかし、そんな俺の心を読んだかのように、アストラが複雑な表情を浮かべて告げた。


「おいおい、これは夢ではないぞ。残念だが、鈴木二郎…君はすでに死んでいるんだ。そして、君の記憶はその少女ソフィア=イクシードの魂の中に存在している。」

「…はぁ?貴方はいきなり何を言って…俺が死んだって?そんな馬鹿な…俺の記憶?…が、この子の中に宿ってる…?」


 彼女が一体何を言っているのか理解できず、混乱した顔でそう告げる俺に対して、アストラは大きくため息をついた。


「まぁ…そうだな。君には少し説明が必要か…」

「説明…?」


 俺が訝しげな表情を浮かべていると、アストラは小さく頷いて指をパチンッと鳴らした。その瞬間、俺の頭の中に様々な記憶が飛び込んでくる。
 
 3歳で野球を始めたこと。ジュニアチームで必死に練習したこと。高校は野球部のない竜王高校へ進学したこと。共にチームを作り上げてきた仲間たちとのこと。

 甲子園で初優勝を成し遂げて…
 高校史上最強の怪物と称えられて…
 ドラフト一位指名で…

 だが、華やかな記憶はそこまでで、次に飛び込んで来たは暗い記憶ばかりだった。
 肩を怪我して故障者リストへ。投手としては絶望的な状況。打者転向するも、結果が出ない日々。

 戦力外通告…
 何度も挑戦し続けた数々のトライアウト…
 妻との離婚…

 そして…

ーーーあぁ…そうだ…俺は車に撥ねられたんだ…

 俺はその記憶に身震いした。
 アストラも目を瞑って腕を組んでいるが、その表情は悲しげだ。俺が今どんな記憶を見ているのか、彼女にもわかっているのだろうか。

 まさか、自分が死んでいるなんて…
 そう理解させられた俺は絶望した。それは当たり前の感情だろう。自分が死んだと突きつけられて、絶望しない奴なんて普通はいない。
 だが、腑に落ちない部分もあることは確かだ。特に今のこの状況とか…


「もし…俺が本当に死んでいるのだとしたら、今のこの状況は何なんです?この体はいったい…」


 その問いかけを聞いたアストラは、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりにニヤリと笑みを浮かべると、なぜか楽しげにこう告げる。


「その体は、君の魂が創り替えられて生まれた人間なんだが、ある理由で頭にボールを受けてな…その衝撃で、どうやら君の記憶が呼び起こされたらしいのさ。」


 彼女は不謹慎にそう笑っているが、俺の意識は別の事に向いていた。

ーーーこのアストラという女神…どこかで…

 しかし、その違和感は彼女の大きな笑い声に飲み込まれてしまう。


「そこで、鈴木二郎!私は君に提案する!」

「て…提案…ですか?」


 突然の言葉に首を傾げた俺だが、次に彼女が発した言葉に耳を疑った。


「そうだ!私の管理する世界で人生をやり直して…いや、挑戦し直してみないか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...