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序章 Let's talk about justice
12ターン目/ブラック社長の野望!
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「異世界転生者………世界を統べる、じゃと?」
灰色のホグワーツは眉をひそめる。
大賢者をはじめ、勇者パーティーたちに並々ならぬ不穏な空気が伝播していく。
聞き慣れない言葉。
そして、実質の世界征服宣言。
状況は未確認であり、当初の予定も狂いっぱなしだが、だがしかし、この場の誰しもが確かに理解していることがある。
目の前の男、異世界転生者/ブラック社長は敵である。
「おっさん、魔王はどーしたんや?」
間髪いれずにハッカイが問いかける。
若き天才武道家の質問に、ブラック社長は嘲笑を浮かべた。
「滅した。中々の強者だったが、女神から授かった俺の能力に、なす術もなく敗れていったよ」
「魔王を………倒した………!?」
飛鳥が動揺する。
彼女はもちろん、他の勇者パーティーたちもまた、同じ気持ちを抱えていた。
これまで魔王軍七武将という数々の強敵たちと対峙し、そのどの個体も一個軍隊に匹敵するだけの戦力を単騎で保有していた。
連合軍。つまりは人類の総戦力をあげて、ギリギリの瀬戸際でこれまで勝利をおさめてきた。
そんな強者たちを束ね、かつそれら強者よりも圧倒的強さを誇ると謳われる魔王軍の長/魔王。
その魔王すらも、この【ブラック社長】という男は退けたという。
見たかぎり、無傷。軍隊や同胞を連れている様子もなく、悠々自適に尊大に、玉座に鎮座する中年男。
勇者パーティーは戦慄する。
中でも、勇者タローは致命的だった。
これまで魔王打倒のためだけに、この人生を捧げてきた。いわば、彼の行動指針。
おかしな話ではあるが、
若き青年の人生の大半を食い潰してきた“世界の行く末”という使命は―――。
大人たちに言い聞かされてきた宿命は―――。
いわば永年掛け続けられていた洗脳は―――。
今、横から根こそぎ持っていかれ、自身の存在証明/存在価値を奪われたような錯覚を与える。
彼の精神を削ぎ、不完全燃焼。否、燃え尽き症候群に近い消失感。心の空白を生じさせる。
そんな勇者の胸中も露知らず、ブラック社長は話を続けていく。
「そうだ。俺は魔王を倒した。そして、これからこの世界を支配し、改革を興す。資本主義の導入。GAFAM的巨大企業による世界企業統治。
つまりは、経済による平和。
そう。俺は、この世界のスティーヴン=ジョブズとなるのだ!」
「………いったいなんの話をしてるんだ?」
医療魔術師グリフィンが困惑する。
無論、他の人員もまた理解が及ぶ筈もなく。
「ふむ、異世界か」
灰色のホグワーツはポツリと呟く。
「魔界とはまた違う、遥か遠いの彼岸。理論上、その存在は証明されておるが、御主がそこからの客人となると、前代未聞。史上初の渡来人となろう。だが見たところ、悪人の様子…………」
大賢者は手に携えた杖を、クルクルと回転させ、その杖の先端を床に叩きつけた。
室内に、ガァンと音が響く。
「つまりは侵略者。情けをかける余地もあるまい―――」
くわっ、とホグワーツの眼孔が開く。
その顔相はやる気満々といったご様子。
彼もまた、勇者同様に魔王打倒を掲げてここまできた。
その使命喪失の混乱で生じたストレスを、怒りという方向性に変換して、目の前に突如出現した手頃な脅威にすべてぶつけることを決断する。
その意気込みに索引されて、勇者パーティーたちも皆、徐々にその武器を構えていく。
ハッカイが。飛鳥が。グリフィンが。
そして、勇者タローが。
焦燥と困惑と、
それでも尚、勇気を持って―――。
未知なる強大な敵に今、挑まんとしていた。
灰色のホグワーツは眉をひそめる。
大賢者をはじめ、勇者パーティーたちに並々ならぬ不穏な空気が伝播していく。
聞き慣れない言葉。
そして、実質の世界征服宣言。
状況は未確認であり、当初の予定も狂いっぱなしだが、だがしかし、この場の誰しもが確かに理解していることがある。
目の前の男、異世界転生者/ブラック社長は敵である。
「おっさん、魔王はどーしたんや?」
間髪いれずにハッカイが問いかける。
若き天才武道家の質問に、ブラック社長は嘲笑を浮かべた。
「滅した。中々の強者だったが、女神から授かった俺の能力に、なす術もなく敗れていったよ」
「魔王を………倒した………!?」
飛鳥が動揺する。
彼女はもちろん、他の勇者パーティーたちもまた、同じ気持ちを抱えていた。
これまで魔王軍七武将という数々の強敵たちと対峙し、そのどの個体も一個軍隊に匹敵するだけの戦力を単騎で保有していた。
連合軍。つまりは人類の総戦力をあげて、ギリギリの瀬戸際でこれまで勝利をおさめてきた。
そんな強者たちを束ね、かつそれら強者よりも圧倒的強さを誇ると謳われる魔王軍の長/魔王。
その魔王すらも、この【ブラック社長】という男は退けたという。
見たかぎり、無傷。軍隊や同胞を連れている様子もなく、悠々自適に尊大に、玉座に鎮座する中年男。
勇者パーティーは戦慄する。
中でも、勇者タローは致命的だった。
これまで魔王打倒のためだけに、この人生を捧げてきた。いわば、彼の行動指針。
おかしな話ではあるが、
若き青年の人生の大半を食い潰してきた“世界の行く末”という使命は―――。
大人たちに言い聞かされてきた宿命は―――。
いわば永年掛け続けられていた洗脳は―――。
今、横から根こそぎ持っていかれ、自身の存在証明/存在価値を奪われたような錯覚を与える。
彼の精神を削ぎ、不完全燃焼。否、燃え尽き症候群に近い消失感。心の空白を生じさせる。
そんな勇者の胸中も露知らず、ブラック社長は話を続けていく。
「そうだ。俺は魔王を倒した。そして、これからこの世界を支配し、改革を興す。資本主義の導入。GAFAM的巨大企業による世界企業統治。
つまりは、経済による平和。
そう。俺は、この世界のスティーヴン=ジョブズとなるのだ!」
「………いったいなんの話をしてるんだ?」
医療魔術師グリフィンが困惑する。
無論、他の人員もまた理解が及ぶ筈もなく。
「ふむ、異世界か」
灰色のホグワーツはポツリと呟く。
「魔界とはまた違う、遥か遠いの彼岸。理論上、その存在は証明されておるが、御主がそこからの客人となると、前代未聞。史上初の渡来人となろう。だが見たところ、悪人の様子…………」
大賢者は手に携えた杖を、クルクルと回転させ、その杖の先端を床に叩きつけた。
室内に、ガァンと音が響く。
「つまりは侵略者。情けをかける余地もあるまい―――」
くわっ、とホグワーツの眼孔が開く。
その顔相はやる気満々といったご様子。
彼もまた、勇者同様に魔王打倒を掲げてここまできた。
その使命喪失の混乱で生じたストレスを、怒りという方向性に変換して、目の前に突如出現した手頃な脅威にすべてぶつけることを決断する。
その意気込みに索引されて、勇者パーティーたちも皆、徐々にその武器を構えていく。
ハッカイが。飛鳥が。グリフィンが。
そして、勇者タローが。
焦燥と困惑と、
それでも尚、勇気を持って―――。
未知なる強大な敵に今、挑まんとしていた。
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