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破章の壱 How to Stop Worrying and Start Living
13ターン目/勇者復活
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かくして、勇者パーティーは全滅した。
ブラック社長はその後、たった一人で連合軍を下して、解散を命令。
勇者パーティーならびに連合軍の敗北は、
つまるところ世界の敗北。
人類は、ブラック社長の傘下に与することとなった。
それから3年の月日が経過する――――。
◆◆◆
タローが起死回生により目覚め、魔王と邂逅してから翌日。
彼等が拠点とする廃村もまた、どこにでもある人里と同じように、その生活の営みが日々繰り返されていた。
廃村。とはいえ、そこは魔族たちの手によって修復が進められ、質素ながらも拠点としての機能をある程度備えた、清潔で住みやすい環境が整えられていた。
旧魔王軍残党。この廃村の居住者たちは、かつて人類に仇なした魔界からの尖兵たち。
その成れの果て。彼等は、かつての魔王のシンパたちであり、その忠誠心はいまだ衰えを知らない。
そして、
そんな旧魔王軍たちに報される勇者復活。
かつての仇敵の甦りは、旧魔王軍残党たちにとって吉報なのか凶報なのか。彼等に複雑な胸中を抱かせる。
「我々魔王軍にとって、貴方はまさに敵の象徴的存在でしたからね。実際かつての仲間が貴方自身の手により屠られた同胞も少なからずここにはいるみたいですので、そこは察してあげてください」
魔王の秘書兼情婦/リリス。
彼女は魔族の一種/サキュバスである。
ヤギに似た黒い角。ピンクのロングヘアに美しい容姿。下着姿のような扇情的かつ破廉恥な格好。腰から生える蝙蝠のような羽根。特質すべきは妖しさ満天のその美貌。それら不埒な印象に反した理知的な性格。
彼女は先導しながら、敵意が籠った周囲からの視線を弁明する。
勇者たちの行く先々では、多種多様な姿形をした魔族たちがひとつの共同体として構築されていた。
人間と変わらないありふれた日常。
平穏な活気。多少畏怖や憎悪を感じることもあったが、そこにはタローが知る“彼等の戦場での顔”以外の平和な側面が確かにあり、ふと勇者の胸中に陰を落とす。
「僕が殺した連中にも、きっとこんな日常があったんだな」
白い布地の半袖シャツにオーバーサイズの黒いズボン。そして、サンダル。
なんともラフで身も心も軽くした格好で、飾りっ気のない等身大の感想を述べる。
「まー、気にするな。弱肉強食こそ世の理。生きるも死ぬも御互い様ということだ。なに、我輩の眼が黒い内は部下共に手出しはさせん!だはははっ!」
一方、青髪褐色アロハの魔王は、そんなタローや仲間たちの複雑な心情すら一蹴して不遜。
なんともお気楽で陽気な様子。
勇者、魔王、秘書。
彼等は現在、とある家屋に向かっていた。
「ここだ」
立ち止まるなり、魔王が到着を告げる。
「久しぶりのご対面ということだな」
目的地に到着するなり、魔王はノックもせずに扉を開け、室内に入っていく。
それにリリスも続いていき、最後尾をそんな2人に呆れるタローが追う。
家屋は二階建て。
1階は医療施設として機能しているようで、室内は薬草の匂いが充満していた。壁にはカルテや魔術書の一端が雑多に貼られ、だが室内は清潔に保たれていた。
「…………タロー、遅かったじゃないか」
声の主は、緑色の手術着の上に白衣を纏う銀髪眼鏡。
そして、右目に眼帯。
家屋の主は医療魔術師にして、元勇者パーティーの1人/グリフィンだった。
ブラック社長はその後、たった一人で連合軍を下して、解散を命令。
勇者パーティーならびに連合軍の敗北は、
つまるところ世界の敗北。
人類は、ブラック社長の傘下に与することとなった。
それから3年の月日が経過する――――。
◆◆◆
タローが起死回生により目覚め、魔王と邂逅してから翌日。
彼等が拠点とする廃村もまた、どこにでもある人里と同じように、その生活の営みが日々繰り返されていた。
廃村。とはいえ、そこは魔族たちの手によって修復が進められ、質素ながらも拠点としての機能をある程度備えた、清潔で住みやすい環境が整えられていた。
旧魔王軍残党。この廃村の居住者たちは、かつて人類に仇なした魔界からの尖兵たち。
その成れの果て。彼等は、かつての魔王のシンパたちであり、その忠誠心はいまだ衰えを知らない。
そして、
そんな旧魔王軍たちに報される勇者復活。
かつての仇敵の甦りは、旧魔王軍残党たちにとって吉報なのか凶報なのか。彼等に複雑な胸中を抱かせる。
「我々魔王軍にとって、貴方はまさに敵の象徴的存在でしたからね。実際かつての仲間が貴方自身の手により屠られた同胞も少なからずここにはいるみたいですので、そこは察してあげてください」
魔王の秘書兼情婦/リリス。
彼女は魔族の一種/サキュバスである。
ヤギに似た黒い角。ピンクのロングヘアに美しい容姿。下着姿のような扇情的かつ破廉恥な格好。腰から生える蝙蝠のような羽根。特質すべきは妖しさ満天のその美貌。それら不埒な印象に反した理知的な性格。
彼女は先導しながら、敵意が籠った周囲からの視線を弁明する。
勇者たちの行く先々では、多種多様な姿形をした魔族たちがひとつの共同体として構築されていた。
人間と変わらないありふれた日常。
平穏な活気。多少畏怖や憎悪を感じることもあったが、そこにはタローが知る“彼等の戦場での顔”以外の平和な側面が確かにあり、ふと勇者の胸中に陰を落とす。
「僕が殺した連中にも、きっとこんな日常があったんだな」
白い布地の半袖シャツにオーバーサイズの黒いズボン。そして、サンダル。
なんともラフで身も心も軽くした格好で、飾りっ気のない等身大の感想を述べる。
「まー、気にするな。弱肉強食こそ世の理。生きるも死ぬも御互い様ということだ。なに、我輩の眼が黒い内は部下共に手出しはさせん!だはははっ!」
一方、青髪褐色アロハの魔王は、そんなタローや仲間たちの複雑な心情すら一蹴して不遜。
なんともお気楽で陽気な様子。
勇者、魔王、秘書。
彼等は現在、とある家屋に向かっていた。
「ここだ」
立ち止まるなり、魔王が到着を告げる。
「久しぶりのご対面ということだな」
目的地に到着するなり、魔王はノックもせずに扉を開け、室内に入っていく。
それにリリスも続いていき、最後尾をそんな2人に呆れるタローが追う。
家屋は二階建て。
1階は医療施設として機能しているようで、室内は薬草の匂いが充満していた。壁にはカルテや魔術書の一端が雑多に貼られ、だが室内は清潔に保たれていた。
「…………タロー、遅かったじゃないか」
声の主は、緑色の手術着の上に白衣を纏う銀髪眼鏡。
そして、右目に眼帯。
家屋の主は医療魔術師にして、元勇者パーティーの1人/グリフィンだった。
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