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破章の壱 How to Stop Worrying and Start Living
14ターン目/株式会社ダークネス
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「グリフィン!?」
かつての旧友を前に、タローは驚きの表情をみせる。
魔王城にて、
勇者パーティーは順々に敗れていった。
最後に屠られたのが、タロー。
そして、最初に敗られたのが回復役のグリフィンだ。
ーーー絶望はそこから始まったのだから。
今でも鮮やかに覚えている。
グリフィンが、目の前で殺される様を。
あのときの無力感を、タローはしっかりと覚えている。
「オマエ、その眼は―――――?」
旧友の眼帯に着目し、勇者は慎重に問う。
「安心してください。これはあのときのものじゃない」
グリフィンは眼帯をなぞりながら、苦笑する。
「ちょっとね。………それに私は貴方のおかげで命拾いをした」
改めて、医療魔術師はタローに視線を送る。
「起死回生。てっきり勇者単体のみの能力だと思っていたけど、どうやら一定の条件を満たした仲間にも共有されるみたいだ」
「ッ!? じゃあ、もしかして飛鳥やハッカイ。ホグワーツも?」
思わぬ誤算。てっきり全員死んだものとばかり思っていた。
しかし、それこそ目の前のグリフィンがその事実を否定する根拠となっている。
喪失感による哀愁から一転。
希望に駆られ、タローは思わず前のめりになる。
「あぁ、生きている。だけども、それが問題なんだ」
苦々しそうにグリフィンは、勇者の見解を肯定する。
だがそれは、明らかな不穏を孕んでいた。
「…………勇者よ。おまえが眠っている間に世界は大きく変容した」
そんな二人に割って入るように、魔王が語り始める。
それは彼なりの気遣い。グリフィンが言い辛いであろう事柄を代弁するための心配りであった。
「塗り潰されたのだ。たったひとりのあの男。異世界転生者/ブラック社長に――――」
◆◆◆
【ブラック社長】――――。
正確には現在、【ブラックCEO】。
彼は連合軍を解体したあと、【株式会社ダークネス】を設立。
世界各国の財閥や商会を吸収し、瞬く間に【超多国籍巨大企業】へと成長させる。
その過程で民間軍事会社という名目で、実質の私兵部隊である【強制解決】を編成。
部隊の大半は元連合軍兵士であり、つまるところ各国の主要戦力たち。
彼等の活躍により、この世界からは国境。
すなわち『国家』という枠組みが消え、人類史上初となる統一国家。
否、統一された企業自治体が誕生する。
以後、【株式会社ダークネス】は徹底的に世界を管理・統制。文明開化と産業革命を興し、人類文明の水準を我々の世界でいう中世から現代レベルにまで急速且つ大幅に昇華させていくこととなる。
さらに王族・貴族などの階級制度は廃止され、個人の能力による報酬制度を導入。
実力主義。
成果主義。
資本主義。
これら三本主義により、
タローたちの世界は富める者は富み、貧しくなる者はさらに貧しくなっていく超格差社会へと突入する。
資産を評価軸にした弱肉強食。
文明の発展・成熟に反して、それらに伴う倫理観が警鐘されることはなく、むしろ【ブラックCEO】の意向により、社会的弱者の殲滅染みた淘汰を促進させるための計画が着々と進行されていった。
特に魔族に対する弾圧は凄まじいもので、旧魔王軍残党は勿論、その魔の手は彼等の故郷/魔界にまで及ぼうとしていた。
「そんなブラックCEO率いる超多国籍巨大企業/株式会社ダークネスに対抗するために我輩たちは今、戦力を集めている」
魔界代表・魔王/イスカリオテは説明する。
「株式会社ダークネスはあまりに強大です。過去の遺恨は承知していますが、彼等に対抗するためには我々【魔王軍】と【解放戦線】は互いに手を組む必要があるのです」
捕捉するのはサキュバスのリリス。
「【解放戦線】?」
その聞き慣れない単語に勇者タローは首を傾げた。
「私たちのことだよ」
グリフィンは穏やかな声で答えた。
「迫害を受ける弱き人々を守るため、立ち上げられた民間組織。設立者はエルザ姫」
「エルザ姫!?」
タローは思わず声をあげる。
美しき想い人の姿を思い浮かべ、彼はこんな状況にも関わらず、浮き足だっていた。
そして、
「じゃあ、飛鳥やハッカイ。ホグワーツも【解放戦線】に―――――」
当然の帰結。
彼等もまた、弱者救済のためにエルザ姫と行動を共にしている。
そう思っていた。
だが、そんなタローの予測は否定される。
「いや、残念ながら彼等は【解放戦線】に所属していない」
何やらグリフィンは苦々しそうに言葉を続ける。
「彼等は、民間軍事会社/【強制解決】。株式会社ダークネスの傘下で働いている。
――――つまりは、敵なんだ」
かつての旧友を前に、タローは驚きの表情をみせる。
魔王城にて、
勇者パーティーは順々に敗れていった。
最後に屠られたのが、タロー。
そして、最初に敗られたのが回復役のグリフィンだ。
ーーー絶望はそこから始まったのだから。
今でも鮮やかに覚えている。
グリフィンが、目の前で殺される様を。
あのときの無力感を、タローはしっかりと覚えている。
「オマエ、その眼は―――――?」
旧友の眼帯に着目し、勇者は慎重に問う。
「安心してください。これはあのときのものじゃない」
グリフィンは眼帯をなぞりながら、苦笑する。
「ちょっとね。………それに私は貴方のおかげで命拾いをした」
改めて、医療魔術師はタローに視線を送る。
「起死回生。てっきり勇者単体のみの能力だと思っていたけど、どうやら一定の条件を満たした仲間にも共有されるみたいだ」
「ッ!? じゃあ、もしかして飛鳥やハッカイ。ホグワーツも?」
思わぬ誤算。てっきり全員死んだものとばかり思っていた。
しかし、それこそ目の前のグリフィンがその事実を否定する根拠となっている。
喪失感による哀愁から一転。
希望に駆られ、タローは思わず前のめりになる。
「あぁ、生きている。だけども、それが問題なんだ」
苦々しそうにグリフィンは、勇者の見解を肯定する。
だがそれは、明らかな不穏を孕んでいた。
「…………勇者よ。おまえが眠っている間に世界は大きく変容した」
そんな二人に割って入るように、魔王が語り始める。
それは彼なりの気遣い。グリフィンが言い辛いであろう事柄を代弁するための心配りであった。
「塗り潰されたのだ。たったひとりのあの男。異世界転生者/ブラック社長に――――」
◆◆◆
【ブラック社長】――――。
正確には現在、【ブラックCEO】。
彼は連合軍を解体したあと、【株式会社ダークネス】を設立。
世界各国の財閥や商会を吸収し、瞬く間に【超多国籍巨大企業】へと成長させる。
その過程で民間軍事会社という名目で、実質の私兵部隊である【強制解決】を編成。
部隊の大半は元連合軍兵士であり、つまるところ各国の主要戦力たち。
彼等の活躍により、この世界からは国境。
すなわち『国家』という枠組みが消え、人類史上初となる統一国家。
否、統一された企業自治体が誕生する。
以後、【株式会社ダークネス】は徹底的に世界を管理・統制。文明開化と産業革命を興し、人類文明の水準を我々の世界でいう中世から現代レベルにまで急速且つ大幅に昇華させていくこととなる。
さらに王族・貴族などの階級制度は廃止され、個人の能力による報酬制度を導入。
実力主義。
成果主義。
資本主義。
これら三本主義により、
タローたちの世界は富める者は富み、貧しくなる者はさらに貧しくなっていく超格差社会へと突入する。
資産を評価軸にした弱肉強食。
文明の発展・成熟に反して、それらに伴う倫理観が警鐘されることはなく、むしろ【ブラックCEO】の意向により、社会的弱者の殲滅染みた淘汰を促進させるための計画が着々と進行されていった。
特に魔族に対する弾圧は凄まじいもので、旧魔王軍残党は勿論、その魔の手は彼等の故郷/魔界にまで及ぼうとしていた。
「そんなブラックCEO率いる超多国籍巨大企業/株式会社ダークネスに対抗するために我輩たちは今、戦力を集めている」
魔界代表・魔王/イスカリオテは説明する。
「株式会社ダークネスはあまりに強大です。過去の遺恨は承知していますが、彼等に対抗するためには我々【魔王軍】と【解放戦線】は互いに手を組む必要があるのです」
捕捉するのはサキュバスのリリス。
「【解放戦線】?」
その聞き慣れない単語に勇者タローは首を傾げた。
「私たちのことだよ」
グリフィンは穏やかな声で答えた。
「迫害を受ける弱き人々を守るため、立ち上げられた民間組織。設立者はエルザ姫」
「エルザ姫!?」
タローは思わず声をあげる。
美しき想い人の姿を思い浮かべ、彼はこんな状況にも関わらず、浮き足だっていた。
そして、
「じゃあ、飛鳥やハッカイ。ホグワーツも【解放戦線】に―――――」
当然の帰結。
彼等もまた、弱者救済のためにエルザ姫と行動を共にしている。
そう思っていた。
だが、そんなタローの予測は否定される。
「いや、残念ながら彼等は【解放戦線】に所属していない」
何やらグリフィンは苦々しそうに言葉を続ける。
「彼等は、民間軍事会社/【強制解決】。株式会社ダークネスの傘下で働いている。
――――つまりは、敵なんだ」
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