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急章の弐 Who Moved My cheese?
68ターン目/引き金
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戦いの気運が高ぶる。
冒険王VS同盟軍。
しかしその軍配は冒険王ミフネに上がりそうだ。
それでも尚、【同盟軍】の戦士たちに退こうとする者はいなかった。
【解放戦線】も【魔王軍】も最早この戦場に残る者たちはこれまでの死線を潜り抜けてきた精鋭たち。
ひとりひとりがここまでの道程で先人たちに渡された意志を握りしめている。
それら誇りや尊厳の煌めきが、冒険王の胸中に敵として彼等の前に立ちふさがる誉を充足させる。
ミフネは剣を構えなおし、改めて戦闘態勢を取る。
緊張感が【同盟軍】に伝播する。
来る―――
その刹那。
そんな矢先。
不意に。突然に。
墜落音。
彼等の視界に移る建物の一棟。
その地点に“何か”が墜落し、瞬く間に崩壊していく。
そして、
「ふぅ、やれやれ。手こずらせおってからに―――」
フワっと、冒険王の隣に“ある男”が舞い降りる。
「大賢者/灰色のホグワーツ―――!?」
グリフィンが驚愕する。
「チッ、ここに来てこの男が合流するか」
龍王姫は舌打ち。
一方、冒険王ミフネは隣に立つ大賢者を横目に問い掛ける。
「切り札を使うまでもなかったようだな、“禁忌のモルガナ”………」
「ヤツの脅威は、魔法界隈でのカリスマと古代魔法への造詣だからのう。無論、それなりに腕は立つが“世界最高峰の闘い”ではあまりにお粗末」
先程墜落したのは、禁忌のモルガナ。
彼は師である灰色のホグワーツに敗北し、戦闘不能に陥っていた。
「灰色のホグワーツさま………」
「お久しゅうございます、ペンドラゴン王妃。【連合軍】以来ですな。いやはや、まさかかような形で再会するとは当時思ってもみなかったですぞ」
エルザ姫の逡巡に、ためらいもなく大賢者は応える。
「戦いとは悲しいものだ。まるでここは同窓会だ」
灰色のホグワーツはそういって、【同盟軍】を見回す。
特に【解放戦線】のメンバーには見知った顔がチラホラ見受けられる。
「大賢者ホグワーツ………」
グリフィンもまた、その表情に影を落とす。
師と呼ぶには付き合いは短かく浅かったものの、【外交旅団】と【連合軍】で“勇者パーティー”と呼ばれていた時代に灰色のホグワーツから学んだものは、彼にとって大きな財産となっている。
恩義を感じているグリフィンにとって、飛鳥やハッカイ同様、戦場での対面はその精神を擂り潰されるようだった。
「おぬしも一段と逞しくなったようだのう。喜ぶべきか、憂うべきか」
灰色のホグワーツもまた、その眼光に慈悲を灯す。
彼もまた、かつての仲間たちを手にかけることへの躊躇が見受けられるようだった。
「儂は言うて裏方の事務だったからのう。“仲間殺し”という厳しい役割をすべて飛鳥とハッカイに押し付けてもうた。年寄りはいつの世も狡猾でいかんのう……」
「手は取り合えないのですか?」
エルザ姫が問いかける。
「灰色のホグワーツさま、そして冒険王ミフネさま。なぜ我々は戦い合わなければならないのですか?
異世界転生者/ブラックCEOの圧政に苦しむ民がいることを貴方たちも理解し、憂いていたことをわたくしは知っています。
そして今、世界の均衡は崩れ、【同盟軍】はここまで来ました。
勇者と魔王。そして大賢者と冒険王が手を組めば、あのブラックCEOも倒せるのではないのですか?
―――それとも、この世界の命運をブラックCEOに握らせたままでよいとでもいうのですか?」
彼女は今一度、両者に問いかける。
世界の天秤は今、揺れている。
異世界転生者/ブラックCEOの完全な支配下にくだるのか。
はたまた、この世界の住人たる自分たちの手に取り戻すのか。
エルザ姫は問いかける。
「―――世界は今、危機を迎えている」
ポツリ、と大賢者ホグワーツが呟く。
「“世界がヤベェ”。かつての五大賢者の長/指環王・トールキンが残した言葉だ。儂はこの言葉をはじめ、“魔王復活”と捉え、それらに対抗するために貴殿の父/ペンドラゴン王に協力を仰いだ。
しかし、あの預言はさらなる意味を持っていた。
そう、異世界転生者/ブラックによる世界改変。
経済による平和。つまりはこの時代の有り様を警告していた。
――――そう思っていた」
不穏な空気が何やらこの戦場を包み込む。
ここまでの話は、この場にいる誰しもが知る社会常識。
魔法国ヴィヴィデバビデの首都/レビオーサの象徴であり、魔術師たちの総本山/時計塔から発信された研究成果である。
「しかし、それすらまだ浅かった。
世界は未だ危機を迎えている―――」
「………いったい何の話をしているのですか?」
エルザ姫の問いかけに、大賢者の眉間が険しくなる。
「異世界転生者は一人ではない。
これから先の時代、数多の者たちがこの世界に巣食うこととなる。
そしてそれは、ブラックCEOの死が引き金となるのだ―――」
冒険王VS同盟軍。
しかしその軍配は冒険王ミフネに上がりそうだ。
それでも尚、【同盟軍】の戦士たちに退こうとする者はいなかった。
【解放戦線】も【魔王軍】も最早この戦場に残る者たちはこれまでの死線を潜り抜けてきた精鋭たち。
ひとりひとりがここまでの道程で先人たちに渡された意志を握りしめている。
それら誇りや尊厳の煌めきが、冒険王の胸中に敵として彼等の前に立ちふさがる誉を充足させる。
ミフネは剣を構えなおし、改めて戦闘態勢を取る。
緊張感が【同盟軍】に伝播する。
来る―――
その刹那。
そんな矢先。
不意に。突然に。
墜落音。
彼等の視界に移る建物の一棟。
その地点に“何か”が墜落し、瞬く間に崩壊していく。
そして、
「ふぅ、やれやれ。手こずらせおってからに―――」
フワっと、冒険王の隣に“ある男”が舞い降りる。
「大賢者/灰色のホグワーツ―――!?」
グリフィンが驚愕する。
「チッ、ここに来てこの男が合流するか」
龍王姫は舌打ち。
一方、冒険王ミフネは隣に立つ大賢者を横目に問い掛ける。
「切り札を使うまでもなかったようだな、“禁忌のモルガナ”………」
「ヤツの脅威は、魔法界隈でのカリスマと古代魔法への造詣だからのう。無論、それなりに腕は立つが“世界最高峰の闘い”ではあまりにお粗末」
先程墜落したのは、禁忌のモルガナ。
彼は師である灰色のホグワーツに敗北し、戦闘不能に陥っていた。
「灰色のホグワーツさま………」
「お久しゅうございます、ペンドラゴン王妃。【連合軍】以来ですな。いやはや、まさかかような形で再会するとは当時思ってもみなかったですぞ」
エルザ姫の逡巡に、ためらいもなく大賢者は応える。
「戦いとは悲しいものだ。まるでここは同窓会だ」
灰色のホグワーツはそういって、【同盟軍】を見回す。
特に【解放戦線】のメンバーには見知った顔がチラホラ見受けられる。
「大賢者ホグワーツ………」
グリフィンもまた、その表情に影を落とす。
師と呼ぶには付き合いは短かく浅かったものの、【外交旅団】と【連合軍】で“勇者パーティー”と呼ばれていた時代に灰色のホグワーツから学んだものは、彼にとって大きな財産となっている。
恩義を感じているグリフィンにとって、飛鳥やハッカイ同様、戦場での対面はその精神を擂り潰されるようだった。
「おぬしも一段と逞しくなったようだのう。喜ぶべきか、憂うべきか」
灰色のホグワーツもまた、その眼光に慈悲を灯す。
彼もまた、かつての仲間たちを手にかけることへの躊躇が見受けられるようだった。
「儂は言うて裏方の事務だったからのう。“仲間殺し”という厳しい役割をすべて飛鳥とハッカイに押し付けてもうた。年寄りはいつの世も狡猾でいかんのう……」
「手は取り合えないのですか?」
エルザ姫が問いかける。
「灰色のホグワーツさま、そして冒険王ミフネさま。なぜ我々は戦い合わなければならないのですか?
異世界転生者/ブラックCEOの圧政に苦しむ民がいることを貴方たちも理解し、憂いていたことをわたくしは知っています。
そして今、世界の均衡は崩れ、【同盟軍】はここまで来ました。
勇者と魔王。そして大賢者と冒険王が手を組めば、あのブラックCEOも倒せるのではないのですか?
―――それとも、この世界の命運をブラックCEOに握らせたままでよいとでもいうのですか?」
彼女は今一度、両者に問いかける。
世界の天秤は今、揺れている。
異世界転生者/ブラックCEOの完全な支配下にくだるのか。
はたまた、この世界の住人たる自分たちの手に取り戻すのか。
エルザ姫は問いかける。
「―――世界は今、危機を迎えている」
ポツリ、と大賢者ホグワーツが呟く。
「“世界がヤベェ”。かつての五大賢者の長/指環王・トールキンが残した言葉だ。儂はこの言葉をはじめ、“魔王復活”と捉え、それらに対抗するために貴殿の父/ペンドラゴン王に協力を仰いだ。
しかし、あの預言はさらなる意味を持っていた。
そう、異世界転生者/ブラックによる世界改変。
経済による平和。つまりはこの時代の有り様を警告していた。
――――そう思っていた」
不穏な空気が何やらこの戦場を包み込む。
ここまでの話は、この場にいる誰しもが知る社会常識。
魔法国ヴィヴィデバビデの首都/レビオーサの象徴であり、魔術師たちの総本山/時計塔から発信された研究成果である。
「しかし、それすらまだ浅かった。
世界は未だ危機を迎えている―――」
「………いったい何の話をしているのですか?」
エルザ姫の問いかけに、大賢者の眉間が険しくなる。
「異世界転生者は一人ではない。
これから先の時代、数多の者たちがこの世界に巣食うこととなる。
そしてそれは、ブラックCEOの死が引き金となるのだ―――」
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