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第三章 Hybrid Rainbow
#31 わかんねぇ
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「いいんかよ」
セイギは問いかける。
「いいんですの。これできっと、良かったんですの……… 」
困ったように、フォーチュンは眉尻を下げながら、湿っぽく笑う。
「そもそもわたくしが正式な手続きを踏まなかったのがいけないんですの。外出の認可がおりないことは最初からわかっていましたが、それでもちゃんと交渉を続けるべきでした。正式にわたくしがこの徳島に来ていれば、誰にも迷惑をかけることもなかったですし、セイギ様もそんな大ケガをすることはなかったんですの」
「水臭せぇこというなよ。こんなんかすり傷だって。だからおれらこうやって会えたんじゃん」
「……… セイギ様は、お優しいですね」
「探すんだろ救世者。言うんだろお礼を。これから忙しくなるとこじゃねぇか」
瞼を閉じ、フォーチュンは首を横にふる。
「いいえ、セイギ様。もうその必要はなくなりましたの」
「なんだよ、あきらめんなって」
再度、フォーチュンは首をふる。
「違うんですの、セイギ様。救世者は先日この世界に降臨しました。わたくしは、もうすでに御逢いしておりますですの」
「見つけたんかっ!? そか、おれが寝てる間に……… 」
再々、フォーチュンは首を振る。
「いいですかセイギ様。落ち着いて聞いてください」
改まったその態度に、セイギは疑問符を浮かべる。
「――― 救世者とは、真神正義。貴方様のことなんですの」
その言葉に、セイギはポカンとした間抜け顔を浮かべ、停止する。
そして、
「……… で、救世者になったおれは、これから何したらいいんだ?」
「う~ん、わっかんないです。【大いなる混沌】とやらを止めなきゃいけないらしいのですが」
「なんだ、そりゃ」
セイギは苦笑。フォーチュンもなんだか可笑しくなって、笑いを溢す。
「……… なぁ、フォーチュン。それでもおまえは帰んなきゃならんのか?」
「……… はいな」
「おれ、ついていこうか?よーわからんけど、救世者なんだろ?」
「ダメですの。そしたらきっと、わたくしと同じように、セイギ様も幽閉されてしまいますですの。
なので、貴方様との出逢いは胸の内の秘密といたします。いつか必ずわたくし、ここに戻ってまいりますので、それまでお待ちいただけませんか?」
「それって、いつくらいだ?」
「わからないですの。…………きっと、ずっとずっと先になってしまうんですの」
「そか」
セイギは寂しそうにうつむく。
守れない。このままフォーチュンはヴァチカン市国に戻り、再び幽閉の身となるだろう。
彼女はまた、孤独になってしまうのだ。
「……… おれが、おれがその救世者ってんなら……… 」
悔しさが、胸を圧迫する。
今度こそは、守ってみせると決めた筈なのに。
「……… なんでおまえのこと、救けてやれねぇんだよ」
何が世界を救う者だ。
目の前の女の子ひとりすら救けられないなんて。
「……… こんなんじゃ、おまえが救われねぇ」
「ありがとうございます、セイギ様……… 」
思わず、フォーチュンは涙ぐんでしまう。
「貴方様が救世者でわたくし、ほんとうによかったですの」
そう言って、彼女は湿っぽく笑った。
◆◆◆
駐車場には、エンジンを起動させたままのパトカーが停まっている。
運転席には東雲警部補。助手席には荒井巡査。
――― そして、後部座席には星詠みの巫女・フォーチュン。
パトカーは静かに走り出し、病院を後にする。
その様子を、病室の窓から真神律子と美宇が深刻そうに眺めていた。
「本当に、これでよかったの?」
律子は振り返り、ベットに横たわるセイギに問いかける。
掛け布団に包まり、そっぽを向いたまま、セイギは力なく答える。
「わかんねぇ」
その言葉を承け、律子は静かにため息をついた。
セイギは問いかける。
「いいんですの。これできっと、良かったんですの……… 」
困ったように、フォーチュンは眉尻を下げながら、湿っぽく笑う。
「そもそもわたくしが正式な手続きを踏まなかったのがいけないんですの。外出の認可がおりないことは最初からわかっていましたが、それでもちゃんと交渉を続けるべきでした。正式にわたくしがこの徳島に来ていれば、誰にも迷惑をかけることもなかったですし、セイギ様もそんな大ケガをすることはなかったんですの」
「水臭せぇこというなよ。こんなんかすり傷だって。だからおれらこうやって会えたんじゃん」
「……… セイギ様は、お優しいですね」
「探すんだろ救世者。言うんだろお礼を。これから忙しくなるとこじゃねぇか」
瞼を閉じ、フォーチュンは首を横にふる。
「いいえ、セイギ様。もうその必要はなくなりましたの」
「なんだよ、あきらめんなって」
再度、フォーチュンは首をふる。
「違うんですの、セイギ様。救世者は先日この世界に降臨しました。わたくしは、もうすでに御逢いしておりますですの」
「見つけたんかっ!? そか、おれが寝てる間に……… 」
再々、フォーチュンは首を振る。
「いいですかセイギ様。落ち着いて聞いてください」
改まったその態度に、セイギは疑問符を浮かべる。
「――― 救世者とは、真神正義。貴方様のことなんですの」
その言葉に、セイギはポカンとした間抜け顔を浮かべ、停止する。
そして、
「……… で、救世者になったおれは、これから何したらいいんだ?」
「う~ん、わっかんないです。【大いなる混沌】とやらを止めなきゃいけないらしいのですが」
「なんだ、そりゃ」
セイギは苦笑。フォーチュンもなんだか可笑しくなって、笑いを溢す。
「……… なぁ、フォーチュン。それでもおまえは帰んなきゃならんのか?」
「……… はいな」
「おれ、ついていこうか?よーわからんけど、救世者なんだろ?」
「ダメですの。そしたらきっと、わたくしと同じように、セイギ様も幽閉されてしまいますですの。
なので、貴方様との出逢いは胸の内の秘密といたします。いつか必ずわたくし、ここに戻ってまいりますので、それまでお待ちいただけませんか?」
「それって、いつくらいだ?」
「わからないですの。…………きっと、ずっとずっと先になってしまうんですの」
「そか」
セイギは寂しそうにうつむく。
守れない。このままフォーチュンはヴァチカン市国に戻り、再び幽閉の身となるだろう。
彼女はまた、孤独になってしまうのだ。
「……… おれが、おれがその救世者ってんなら……… 」
悔しさが、胸を圧迫する。
今度こそは、守ってみせると決めた筈なのに。
「……… なんでおまえのこと、救けてやれねぇんだよ」
何が世界を救う者だ。
目の前の女の子ひとりすら救けられないなんて。
「……… こんなんじゃ、おまえが救われねぇ」
「ありがとうございます、セイギ様……… 」
思わず、フォーチュンは涙ぐんでしまう。
「貴方様が救世者でわたくし、ほんとうによかったですの」
そう言って、彼女は湿っぽく笑った。
◆◆◆
駐車場には、エンジンを起動させたままのパトカーが停まっている。
運転席には東雲警部補。助手席には荒井巡査。
――― そして、後部座席には星詠みの巫女・フォーチュン。
パトカーは静かに走り出し、病院を後にする。
その様子を、病室の窓から真神律子と美宇が深刻そうに眺めていた。
「本当に、これでよかったの?」
律子は振り返り、ベットに横たわるセイギに問いかける。
掛け布団に包まり、そっぽを向いたまま、セイギは力なく答える。
「わかんねぇ」
その言葉を承け、律子は静かにため息をついた。
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