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婚約者に値踏みされ続けた文官、堪忍袋の緒が切れたのでお別れしました。私は、私を尊重してくれる人を大切にします!
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王城の事務室で、リディア・フィアモントは今日も山積みの書類と格闘していた。
二十一歳、文官として三年目。
インクで汚れた指先を見つめながら、彼女は小さくため息をついた。
婚約者のロデリック・フォン・エーベルハルトは、三歳年上の二十四歳。
亜麻色の髪と濃い青の瞳が怜悧な印象の人だ。
リディアは栗色の髪に琥珀色の瞳という平凡な印象に特にこだわりはなかった。
むしろ、目に優しい色合いだからこれでいいか、とさえ思っていた
婚約してから三年。
彼が自分を評価してくれたことは、一度もなかった。
「その書類、まだ終わってないのか」
ロデリックは書類の山を一瞥して、鼻を鳴らした。
「申し訳ございません。量が多くて……」
「君の要領が悪いんだろう。僕ならこの程度の仕事など朝のうちに片付けるがね」
リディアは黙って頷いた。
何を言っても無駄だと、もう分かっていた。
「ところで」
ロデリックは腕を組んだ。
「君は本当に僕と結婚したいのか?」
唐突な問いかけに、リディアの心臓が跳ねた。
「急にどうして……」
「いや、ただ確認したいだけだ。嫌なら断るという選択もあるだろ。
僕も結婚を無理強いしたいわけじゃない」
(三年、婚約しているのに、今更何を……)
婚約は父が決めたこと。
でもロデリックが望んでくれるなら、リディアも応えたいと思っていた。
多少冷たいところがあるとはいえ、暴力を振るうわけでもない。
婚約者としての義務もきちんと果たしている。
「いえ、私は……喜んで」
「そうか」
「ただ、そのような言い方をされると、私の気持ちを試されているように感じます」
ロデリックは軽く笑った。
「そんな、試そうだなんて思ってないよ。心配してるだけさ。
まあ、君程度の仕事は誰でもできるのに頑張りすぎじゃないかと思ってね。
体を壊したら元も子もないだろう?
僕の妻になるのは誰でもいいわけじゃないから。
君だって伯爵家の人間を配偶者に出来るんだ。お互い利はある」
笑顔なのに、その笑顔が嫌なものに見えて、リディアはそっと目を逸らした。
なぜこんなことを言うのだろう。
本当に私と結婚したいなら、こんな言い方はしないはずなのに。
*
午後、扉がノックされた。
「失礼します。騎士団三番隊のフィリップです。
騎士団からの報告書をお届けに参りました」
顔を上げると、見慣れない若い騎士が立っていた。
爽やかな笑顔、まっすぐな緑の瞳。陽だまりのような雰囲気。
「ご苦労様です。お持ちくださったんですね。ありがとうございます。
申し付けていただいたら取りにまいりますよ?」
書類を受け取る時、彼の手が傷だらけなのに気づいた。訓練の痕だろうか。
「ああ、大丈夫です。お手を煩わせるほどでもないので。
すごくたくさんの書類があるんですね」
フィリップが周囲を見回して、少し驚いたように言った。
「ええ。毎日これくらいは……」
「すごいですね。俺には難しそうで……こういう仕事があってこそ、
俺たち騎士も安心して任務に就けます」
リディアは息を呑んだ。裏方の仕事を、こんなふうに評価してくれる人がいるなんて。
「ありがとうございます。でも、書類仕事くらい……」
「いえ」フィリップは真剣な顔で言った。
「俺、十六歳から働いてますけど、
こういう仕事の大切さ、身に染みてわかります。戦ってるのは騎士だけじゃない。
支えてくれる人がいるから、俺たちは剣を振るえるんです」
胸が温かくなる言葉だ。
この人は、ちゃんと人を見ている。
フィリップが去った後、リディアはしばらく呆然としていた。
それから慌てて仕事に戻ったが、フィリップの言葉が頭から離れなかった。
*
ある日の夜、王城で開かれた夜会にロデリックと参加した。
リディアは控えめな青いドレスを着て、ロデリックの隣に立っていた。
彼の態度は相変わらずだった。
まだエスコートしてくれただけましではあったが
リディアを褒めることもせず、入場後すぐに知り合いの元へと行ってしまった。
でもこれがいつものことだ。
リディアは諦めにも似た感情を抱きながら、グラスを持つ手に力を込めた。
しばらくして、貴族たちの輪の中で、ロデリックが口を開いた。
「ああ、リディアとの婚約? まあ悪くはないよ」
リディアの心臓が跳ねた。
「でも正直なところ、もし彼女が望むなら解消してもいいと思っている。
僕も無理強いはしたくないからね」
周囲の貴族たちが興味深そうに聞いている。リディアの頬に血が上った。
「リディアは真面目だから、きっと断らないだろうけどね。
まあ、婚姻後は家政に専念してもらう予定だ。
文官の仕事など、女性には荷が重いし、僕の妻には相応しくないだろう」
笑顔で、わざと聞こえるように話しているのがわかる。
周囲は微妙な表情で曖昧に頷く。
リディアは何も言い返せず、ただ笑顔を保つので精一杯だった。
喉が、胸が、苦しい。
(……また、「解消してもいい」なんて)
その場を離れ、人目のない廊下に出た時、リディアは壁に手をついた。
息が苦しい。涙が溢れそうになる。
「フィアモントさん?」
振り向くと、騎士の制服を着たフィリップが立っていた。
夜会の警備担当なのだろう。
「大丈夫ですか? お顔色が悪いようですが……」
「いえ、大丈夫です」
声が震えている。駄目だ、泣きそう。
フィリップは何も言わず、少し離れた場所に立った。
でもその距離が、リディアには救いだった。
「あの……フィリップさん」
「はい」
「……文官の仕事って、女性には相応しくないんでしょうか」
フィリップは驚いたように目を見開いた。
「とんでもない! 文官さんたちの仕事は立派だと思ってます。
フィアモントさん始め、事務の仕事をしてくれる人たちがいてくれるから、
俺たち騎士は安心して任務に就ける。
国のこと、国民のこと、いつも真剣に考えてくれる」
フィリップは一歩近づいた。
「俺は心から尊敬しています」
その言葉に、リディアの堪えていた涙が一筋、頬を伝った。
「ありがとう、フィリップさん……」
帰宅後、リディアは一人で泣いた。枕に顔を埋めて、声を殺して。
でも不思議なことに、フィリップの言葉が胸に残っていた。
*
夜会の日から数日後。
ロデリックが呼び出してきた。
王城の中庭、二人きりになれる場所。
「リディア、僕たちの婚約について、改めて考え直した方がいいかもしれない」
リディアの表情が、わずかに曇った。でもすぐに元に戻る。
「……どういう意味ですか」
「君も感じているだろう。僕たちは合っていない。
君は真面目すぎるし、仕事ばかりで社交はさっぱりだ。
僕は……社交的な女性の方が合っているかもしれない」
「ロデリック様……」
「だから、ね、婚約を解消してもいいんだよ? もし君が望むならだけど」
(ああ、これで三度目だ)
リディアは静かに、深く息を吸った。
そして、はっきりとした声で言った。
「承知いたしました」
「……え?」
「婚約解消、お受けいたします、ロデリック様」
ロデリックが凍りついたかのように硬直した。
まさか、という思いがありありと表情に表れている。
「待て、リディア。俺は……」
「三度です」
リディアの声は落ち着いていた。
でもその目は、これまでになく強い光を宿していた。
「一度目は婚約直後、文官室で。
二度目は夜会で、大勢の前で。そして今日、三度目です」
「それは……」
「もう疲れました」
その言葉を口にした瞬間、何かが胸の奥から溢れ出した。
「私は、あなたともう付き合っていけません。
婚約者として、あなたを支えようとしてきました。
でも、あなたは一度も私を認めてくれなかった」
リディアは真っ直ぐにロデリックを見つめた。
「私の仕事を、私という人間を、尊重してくれなかった。
いつも試して、値踏みして。それにもう、疲れたんです」
「リディア……俺は、ただ……」
「すぐに婚約解消の正式な手続きを進めましょう。
両親には私から連絡いたしますので。では、失礼します」
リディアはきっぱりと踵を返した。
ロデリックが何か言いかけた気配がしたが、振り返らなかった。
もう、振り返る必要はない。
文官室に戻ったリディアは、自分の席に座り、深く息を吐いた。
手が震えている。でも後悔はなかった。
不思議なほど、心が軽かった。清々しいとさえ感じる。
婚約解消が告げられた日から、リディアはすぐに両親に手紙を送り
両親から伯爵家へと連絡を入れてもらった。
伯爵家からは謝罪と慰謝料の申し出があった。
ロデリックが夜会で婚約者を蔑ろにしていたという噂が耳に入っていたようだ。
耳に入った時点で諫めてくれていればと思わないでもなかったが
謝罪だけは受け取って、婚約は解消ということで落ち着いた。
仕事の集中が途切れた頃、丁度フィリップが報告書を届けに来た。
「こんにちは! フィアモントさん、これを……。
あれ? 何か良いことありました?」
「こんにちは、フィリップさん。
収支報告書ですね。ありがとうございます」
リディアは笑顔で答えた。
「実はここ最近の悩みが解消したんです」
「ああ、それは良かったですね。すっきりした顔してますもん。
ちなみに、何にお悩みだったか伺って大丈夫ですか?」
踏み込みすぎないように配慮しつつも、気になっているというのがわかる。
思わず笑ってしまった。そしてリディアは心のままに答えた。
「婚約者とお別れしたんです」
フィリップは驚いて目を見開いた。
「え! あ、俺……その……大丈夫、ですか?」
「ええ! 前向きなお別れなので、何も悲しいことじゃないんです。
むしろ、自由を得た感じですね。
もっと自分の好きなことをやっていこうと思ってます」
「なら、……良かったです」
その優しい瞳を見た時、リディアの胸が締め付けられた。
自分が嬉しいと思うことを一緒に喜んでくれるんだ。
*
季節が一つ巡るころ、王城の事務室にはいつもと変わらない朝が来ていた。
リディアは机に向かい、積み上げられた新しい案件の書類を丁寧に仕分けていく。
瞳は静かに輝き、手の動きに迷いがない。
婚約解消からしばらく経ち、ようやく胸の奥に溜まっていた重しが
すっかり消えていることに気づいた。
今は、ただ自分の仕事に向き合える。
誰かの評価のためではなく、自分の意志で。
(ああ、やっぱり好きなんだ、この仕事)
書類に向かう時間が、以前よりずっと心地いい。
苦しいと思っていた忙しさが、不思議と今は自信に変わっていた。
「失礼します。三番隊のフィリップです」
扉の向こうからよく通る声がして、リディアは顔を上げた。
フィリップが報告書の束を抱えて立っている。
陽の光を受けて緑の瞳が柔らかく揺れた。
「書類をお届けに参りました。フィア……」
一瞬、彼が言葉を飲み込む。
リディアは「?」と首をかしげた。
「……いえ、リディアさん。こちら、三番隊の巡回記録です」
名前で呼ばれたのは初めてだ。
その声音はいつも通り明るいのに、どこか慎重で、でも嬉しそうでもあった。
「ありがとうございます、フィリップさん。助かります」
「いえ。こちらこそ。リディアさんが受け持ってくれるなら安心だと思ってました」
「そんな、買いかぶりすぎですよ。ただの事務仕事ですし」
「いえ、本当に。いつも丁寧に確認してくださるじゃないですか。
だから……お願いしたいと思えるんです」
不意に向けられた真っ直ぐな眼差しに、心が軽くなる。
以前なら戸惑いの方が大きかったかもしれない。
けれど今は、素直に嬉しいと思えた。
「これからもがんばりますね」
「はい。是非。……それと、また話しかけてもいいですか? 書類のついでにでも」
「ええ、いつでも」
返した瞬間、フィリップは少し照れたように笑った。
その笑顔につられ、リディアは心からの笑顔を浮かべた。
仕事に戻った机の上には、朝よりも少しだけ積み上がった書類。
でももう、圧迫感はない。
むしろ、この書類の向こうにある誰かの仕事や暮らしを想像し、力になれることが誇らしかった。
ペン先を走らせながら、リディアは軽やかに息をついた。
今日も、頑張ろう!
*
-ロデリックの末路-
婚約解消から三日後、ロデリックは父である伯爵に呼び出された。
「入れ」
重々しい声に促され、執務室に足を踏み入れる。
父は机の向こうで、腕を組んで座っていた。
その表情は、これまで見たことがないほど険しい。
「父上、お呼びでしょうか」
「座れ」
促された椅子に腰を下ろすと、父は一枚の書状を机に叩きつけた。
「これは何だ」
見れば、リディアの父からの手紙だった。
婚約解消の経緯が丁寧に、しかし毅然と記されている。
「……婚約解消の件でしたら、既にご存知かと」
「知っているとも!」
父の怒声が室内に響いた。
ロデリックは思わず身を竦めた。
「だが、貴様が三度も、三度もだぞ、婚約者に『解消してもいい』などと
言い続けていたとは知らなんだ! しかも夜会の席で、大勢の前で
彼女を貶めるような発言をしていたと!」
「それは……」
「黙れ! 喋るな!」
父は立ち上がり、窓の外を睨んだ。
「フィアモント家は子爵家だ。我が家より格下ではあるが、決して軽んじてよい相手ではない。
何より、あの娘は真面目で優秀だと評判だった。
王城でも信頼されている。そんな娘を……貴様は何だと思っていた」
「私は、ただ……彼女が望むなら、という……」
「嘘をつくな」
父が振り返った。その目は冷たく、まるで他人を見るようだった。
「貴様は試していたのだろう。どこまで自分に従うか、どこまで耐えるかと。
そうやって相手を値踏みし、優越感に浸っていただけだ」
図星を突かれ、ロデリックは言葉を失った。
父は深くため息をついた。
「私は貴様に期待していた。いずれ、子爵家をリディア嬢と盛り立て
伯爵家に利を齎してくれる者として、
相応しい人物になってほしいと願っていた。
だが……貴様は人を見下すことしか知らない」
「父上……」
「これ以上、我が家の名を汚されるわけにはいかん」
父は再び席に着き、別の書状を取り出した。
「貴様を勘当する」
「な……!」
「既に女男爵との縁談を進めた。先方は了承済みだ。
貴様はそこへ婿として入り、二度とこの伯爵家には戻らぬこと」
ロデリックの顔から血の気が引いた。
「父上、それは……女男爵とは、あの辺境の……」
「そうだ。配偶者を亡くし、領地経営に苦心している家だ。
だが女主人は聡明で、領民からの信頼も厚い。
貴様にはもったいないほどの場所だろう」
「私が、男爵家に入り婿など……!」
「貴様に選択権はない」
父の声は氷のように冷たかった。
「これは処分だ。貴様の今後の生活の面倒は女男爵家に委ねる。
伯爵家の名は名乗るな。財産も、称号も、すべて剥奪する」
「そんな……」
「出て行け。すぐに荷をまとめ、女男爵家へ向かえ。
それまで、私の前に姿を見せるな」
立ち上がろうとするロデリックに、父は最後にこう告げた。
「人を尊重できぬ者に、人から尊重されることなどない。
それを、身をもって学ぶがいい」
扉が閉まる音が、やけに重く響いた。
*
一週間後、ロデリックは荷馬車に揺られていた。
向かう先は辺境の女男爵領。
かつて自分が「格下」と見做していた土地。
胸に去来するのは、後悔とも諦めともつかない感情。
そして、リディアの最後の言葉が蘇る。
『私の仕事を、私という人間を、尊重してくれなかった』
彼女が欲しかったのは、ただそれだけだったのだ。
自分を一人の人間として、認めてほしかっただけ。
でも自分は、それすらできなかった。
荷馬車が大きく揺れた。
ロデリックは窓の外に広がる見知らぬ景色を、ただ眺めていた。
そして彼は気づいていなかった。
これから向かう場所で、自分がかつて他人に向けていた視線を、
今度は自分が浴びることになるのだと。
*
ロデリックは邸に着いた日のことを、きっと一生忘れないだろう。
かつてなら誰もが道を空け、従者が慌ただしく迎えに出てきたはずだ。
だがここでは違った。
荷馬車の御者でさえ彼を手伝わず、荷を降ろす様子を無言で眺めているだけだった。
「自分の事は自分で、がここでは普通ですので」
案内の男は淡々と言い、さっさと歩き出す。
足並みを合わせてくれる気配すらない。
屋敷の女主人は柔らかい微笑で迎えたが、その笑みは絹で包んだ刃のように冷たい。
彼をただの道具と見做す視線。
決して伴侶ではなく、扱いに困らぬ“手”の一つとしか思っていない距離感。
その後の日々、彼は嫌でも思い知ることになる。
今まで「自分の存在だけで価値がある」と信じていたすべてが、
この地では何ひとつ通用しないことを。
与えられた仕事は容赦なく重い。
手を抜けばすぐにわかり、周囲の者は淡々と叱責する。
誰も彼の出自に気を遣わない。
むしろ元の立場を知っている者ほど、遠巻きに興味深そうに観察するような目を向けている。
「……本当に、何もできないんだな」
ある日、運搬作業で派手に転んだ彼を見て、若い使用人がつぶやいた。
悪意は薄い。ただ事実としてのことを言っただけ。
だがその一言が、彼の胸にもっとも深く突き刺さった。
彼が顔を上げると、周囲の数名が目を逸らした。
笑いを堪えている者もいた。
だが誰一人、助け起こそうとはしない。
その光景が、過去の自分なら信じられなかっただろう。
夕暮れ、泥まみれの服のまま屋敷に戻ると、女主人がふと目を留めた。
「あら、良いお姿だこと。少しはここに慣れたかしら」
女主人の含みのある笑顔に、まるで“ようやく周囲と同じ高さになれた”と
評価されているような、そんな感覚になる。
その夜、寝台に沈む前、ふと手を見る。
今まで丁寧に整えられていた肌は薄汚れ、指先はひび割れている。
ここでは誰も自分に期待もしなければ、特別扱いもしない。
ただ働く者として扱われ、失敗すれば笑われ、成功すれば最低限の評価だけをもらう。
ふと気づいた。
かつて自分が他人に向けていた視線を、今は自分が浴びているのだと。
心が底へ底へと引きずられていく。
逃げる場所も、守ってくれる人もいない。
そんな現実が、じわじわと彼を囲い込んでいく。
――これが、自分の選んだ結果なのだ。
深く静かな溜息が、暗い部屋に落ちた。
二十一歳、文官として三年目。
インクで汚れた指先を見つめながら、彼女は小さくため息をついた。
婚約者のロデリック・フォン・エーベルハルトは、三歳年上の二十四歳。
亜麻色の髪と濃い青の瞳が怜悧な印象の人だ。
リディアは栗色の髪に琥珀色の瞳という平凡な印象に特にこだわりはなかった。
むしろ、目に優しい色合いだからこれでいいか、とさえ思っていた
婚約してから三年。
彼が自分を評価してくれたことは、一度もなかった。
「その書類、まだ終わってないのか」
ロデリックは書類の山を一瞥して、鼻を鳴らした。
「申し訳ございません。量が多くて……」
「君の要領が悪いんだろう。僕ならこの程度の仕事など朝のうちに片付けるがね」
リディアは黙って頷いた。
何を言っても無駄だと、もう分かっていた。
「ところで」
ロデリックは腕を組んだ。
「君は本当に僕と結婚したいのか?」
唐突な問いかけに、リディアの心臓が跳ねた。
「急にどうして……」
「いや、ただ確認したいだけだ。嫌なら断るという選択もあるだろ。
僕も結婚を無理強いしたいわけじゃない」
(三年、婚約しているのに、今更何を……)
婚約は父が決めたこと。
でもロデリックが望んでくれるなら、リディアも応えたいと思っていた。
多少冷たいところがあるとはいえ、暴力を振るうわけでもない。
婚約者としての義務もきちんと果たしている。
「いえ、私は……喜んで」
「そうか」
「ただ、そのような言い方をされると、私の気持ちを試されているように感じます」
ロデリックは軽く笑った。
「そんな、試そうだなんて思ってないよ。心配してるだけさ。
まあ、君程度の仕事は誰でもできるのに頑張りすぎじゃないかと思ってね。
体を壊したら元も子もないだろう?
僕の妻になるのは誰でもいいわけじゃないから。
君だって伯爵家の人間を配偶者に出来るんだ。お互い利はある」
笑顔なのに、その笑顔が嫌なものに見えて、リディアはそっと目を逸らした。
なぜこんなことを言うのだろう。
本当に私と結婚したいなら、こんな言い方はしないはずなのに。
*
午後、扉がノックされた。
「失礼します。騎士団三番隊のフィリップです。
騎士団からの報告書をお届けに参りました」
顔を上げると、見慣れない若い騎士が立っていた。
爽やかな笑顔、まっすぐな緑の瞳。陽だまりのような雰囲気。
「ご苦労様です。お持ちくださったんですね。ありがとうございます。
申し付けていただいたら取りにまいりますよ?」
書類を受け取る時、彼の手が傷だらけなのに気づいた。訓練の痕だろうか。
「ああ、大丈夫です。お手を煩わせるほどでもないので。
すごくたくさんの書類があるんですね」
フィリップが周囲を見回して、少し驚いたように言った。
「ええ。毎日これくらいは……」
「すごいですね。俺には難しそうで……こういう仕事があってこそ、
俺たち騎士も安心して任務に就けます」
リディアは息を呑んだ。裏方の仕事を、こんなふうに評価してくれる人がいるなんて。
「ありがとうございます。でも、書類仕事くらい……」
「いえ」フィリップは真剣な顔で言った。
「俺、十六歳から働いてますけど、
こういう仕事の大切さ、身に染みてわかります。戦ってるのは騎士だけじゃない。
支えてくれる人がいるから、俺たちは剣を振るえるんです」
胸が温かくなる言葉だ。
この人は、ちゃんと人を見ている。
フィリップが去った後、リディアはしばらく呆然としていた。
それから慌てて仕事に戻ったが、フィリップの言葉が頭から離れなかった。
*
ある日の夜、王城で開かれた夜会にロデリックと参加した。
リディアは控えめな青いドレスを着て、ロデリックの隣に立っていた。
彼の態度は相変わらずだった。
まだエスコートしてくれただけましではあったが
リディアを褒めることもせず、入場後すぐに知り合いの元へと行ってしまった。
でもこれがいつものことだ。
リディアは諦めにも似た感情を抱きながら、グラスを持つ手に力を込めた。
しばらくして、貴族たちの輪の中で、ロデリックが口を開いた。
「ああ、リディアとの婚約? まあ悪くはないよ」
リディアの心臓が跳ねた。
「でも正直なところ、もし彼女が望むなら解消してもいいと思っている。
僕も無理強いはしたくないからね」
周囲の貴族たちが興味深そうに聞いている。リディアの頬に血が上った。
「リディアは真面目だから、きっと断らないだろうけどね。
まあ、婚姻後は家政に専念してもらう予定だ。
文官の仕事など、女性には荷が重いし、僕の妻には相応しくないだろう」
笑顔で、わざと聞こえるように話しているのがわかる。
周囲は微妙な表情で曖昧に頷く。
リディアは何も言い返せず、ただ笑顔を保つので精一杯だった。
喉が、胸が、苦しい。
(……また、「解消してもいい」なんて)
その場を離れ、人目のない廊下に出た時、リディアは壁に手をついた。
息が苦しい。涙が溢れそうになる。
「フィアモントさん?」
振り向くと、騎士の制服を着たフィリップが立っていた。
夜会の警備担当なのだろう。
「大丈夫ですか? お顔色が悪いようですが……」
「いえ、大丈夫です」
声が震えている。駄目だ、泣きそう。
フィリップは何も言わず、少し離れた場所に立った。
でもその距離が、リディアには救いだった。
「あの……フィリップさん」
「はい」
「……文官の仕事って、女性には相応しくないんでしょうか」
フィリップは驚いたように目を見開いた。
「とんでもない! 文官さんたちの仕事は立派だと思ってます。
フィアモントさん始め、事務の仕事をしてくれる人たちがいてくれるから、
俺たち騎士は安心して任務に就ける。
国のこと、国民のこと、いつも真剣に考えてくれる」
フィリップは一歩近づいた。
「俺は心から尊敬しています」
その言葉に、リディアの堪えていた涙が一筋、頬を伝った。
「ありがとう、フィリップさん……」
帰宅後、リディアは一人で泣いた。枕に顔を埋めて、声を殺して。
でも不思議なことに、フィリップの言葉が胸に残っていた。
*
夜会の日から数日後。
ロデリックが呼び出してきた。
王城の中庭、二人きりになれる場所。
「リディア、僕たちの婚約について、改めて考え直した方がいいかもしれない」
リディアの表情が、わずかに曇った。でもすぐに元に戻る。
「……どういう意味ですか」
「君も感じているだろう。僕たちは合っていない。
君は真面目すぎるし、仕事ばかりで社交はさっぱりだ。
僕は……社交的な女性の方が合っているかもしれない」
「ロデリック様……」
「だから、ね、婚約を解消してもいいんだよ? もし君が望むならだけど」
(ああ、これで三度目だ)
リディアは静かに、深く息を吸った。
そして、はっきりとした声で言った。
「承知いたしました」
「……え?」
「婚約解消、お受けいたします、ロデリック様」
ロデリックが凍りついたかのように硬直した。
まさか、という思いがありありと表情に表れている。
「待て、リディア。俺は……」
「三度です」
リディアの声は落ち着いていた。
でもその目は、これまでになく強い光を宿していた。
「一度目は婚約直後、文官室で。
二度目は夜会で、大勢の前で。そして今日、三度目です」
「それは……」
「もう疲れました」
その言葉を口にした瞬間、何かが胸の奥から溢れ出した。
「私は、あなたともう付き合っていけません。
婚約者として、あなたを支えようとしてきました。
でも、あなたは一度も私を認めてくれなかった」
リディアは真っ直ぐにロデリックを見つめた。
「私の仕事を、私という人間を、尊重してくれなかった。
いつも試して、値踏みして。それにもう、疲れたんです」
「リディア……俺は、ただ……」
「すぐに婚約解消の正式な手続きを進めましょう。
両親には私から連絡いたしますので。では、失礼します」
リディアはきっぱりと踵を返した。
ロデリックが何か言いかけた気配がしたが、振り返らなかった。
もう、振り返る必要はない。
文官室に戻ったリディアは、自分の席に座り、深く息を吐いた。
手が震えている。でも後悔はなかった。
不思議なほど、心が軽かった。清々しいとさえ感じる。
婚約解消が告げられた日から、リディアはすぐに両親に手紙を送り
両親から伯爵家へと連絡を入れてもらった。
伯爵家からは謝罪と慰謝料の申し出があった。
ロデリックが夜会で婚約者を蔑ろにしていたという噂が耳に入っていたようだ。
耳に入った時点で諫めてくれていればと思わないでもなかったが
謝罪だけは受け取って、婚約は解消ということで落ち着いた。
仕事の集中が途切れた頃、丁度フィリップが報告書を届けに来た。
「こんにちは! フィアモントさん、これを……。
あれ? 何か良いことありました?」
「こんにちは、フィリップさん。
収支報告書ですね。ありがとうございます」
リディアは笑顔で答えた。
「実はここ最近の悩みが解消したんです」
「ああ、それは良かったですね。すっきりした顔してますもん。
ちなみに、何にお悩みだったか伺って大丈夫ですか?」
踏み込みすぎないように配慮しつつも、気になっているというのがわかる。
思わず笑ってしまった。そしてリディアは心のままに答えた。
「婚約者とお別れしたんです」
フィリップは驚いて目を見開いた。
「え! あ、俺……その……大丈夫、ですか?」
「ええ! 前向きなお別れなので、何も悲しいことじゃないんです。
むしろ、自由を得た感じですね。
もっと自分の好きなことをやっていこうと思ってます」
「なら、……良かったです」
その優しい瞳を見た時、リディアの胸が締め付けられた。
自分が嬉しいと思うことを一緒に喜んでくれるんだ。
*
季節が一つ巡るころ、王城の事務室にはいつもと変わらない朝が来ていた。
リディアは机に向かい、積み上げられた新しい案件の書類を丁寧に仕分けていく。
瞳は静かに輝き、手の動きに迷いがない。
婚約解消からしばらく経ち、ようやく胸の奥に溜まっていた重しが
すっかり消えていることに気づいた。
今は、ただ自分の仕事に向き合える。
誰かの評価のためではなく、自分の意志で。
(ああ、やっぱり好きなんだ、この仕事)
書類に向かう時間が、以前よりずっと心地いい。
苦しいと思っていた忙しさが、不思議と今は自信に変わっていた。
「失礼します。三番隊のフィリップです」
扉の向こうからよく通る声がして、リディアは顔を上げた。
フィリップが報告書の束を抱えて立っている。
陽の光を受けて緑の瞳が柔らかく揺れた。
「書類をお届けに参りました。フィア……」
一瞬、彼が言葉を飲み込む。
リディアは「?」と首をかしげた。
「……いえ、リディアさん。こちら、三番隊の巡回記録です」
名前で呼ばれたのは初めてだ。
その声音はいつも通り明るいのに、どこか慎重で、でも嬉しそうでもあった。
「ありがとうございます、フィリップさん。助かります」
「いえ。こちらこそ。リディアさんが受け持ってくれるなら安心だと思ってました」
「そんな、買いかぶりすぎですよ。ただの事務仕事ですし」
「いえ、本当に。いつも丁寧に確認してくださるじゃないですか。
だから……お願いしたいと思えるんです」
不意に向けられた真っ直ぐな眼差しに、心が軽くなる。
以前なら戸惑いの方が大きかったかもしれない。
けれど今は、素直に嬉しいと思えた。
「これからもがんばりますね」
「はい。是非。……それと、また話しかけてもいいですか? 書類のついでにでも」
「ええ、いつでも」
返した瞬間、フィリップは少し照れたように笑った。
その笑顔につられ、リディアは心からの笑顔を浮かべた。
仕事に戻った机の上には、朝よりも少しだけ積み上がった書類。
でももう、圧迫感はない。
むしろ、この書類の向こうにある誰かの仕事や暮らしを想像し、力になれることが誇らしかった。
ペン先を走らせながら、リディアは軽やかに息をついた。
今日も、頑張ろう!
*
-ロデリックの末路-
婚約解消から三日後、ロデリックは父である伯爵に呼び出された。
「入れ」
重々しい声に促され、執務室に足を踏み入れる。
父は机の向こうで、腕を組んで座っていた。
その表情は、これまで見たことがないほど険しい。
「父上、お呼びでしょうか」
「座れ」
促された椅子に腰を下ろすと、父は一枚の書状を机に叩きつけた。
「これは何だ」
見れば、リディアの父からの手紙だった。
婚約解消の経緯が丁寧に、しかし毅然と記されている。
「……婚約解消の件でしたら、既にご存知かと」
「知っているとも!」
父の怒声が室内に響いた。
ロデリックは思わず身を竦めた。
「だが、貴様が三度も、三度もだぞ、婚約者に『解消してもいい』などと
言い続けていたとは知らなんだ! しかも夜会の席で、大勢の前で
彼女を貶めるような発言をしていたと!」
「それは……」
「黙れ! 喋るな!」
父は立ち上がり、窓の外を睨んだ。
「フィアモント家は子爵家だ。我が家より格下ではあるが、決して軽んじてよい相手ではない。
何より、あの娘は真面目で優秀だと評判だった。
王城でも信頼されている。そんな娘を……貴様は何だと思っていた」
「私は、ただ……彼女が望むなら、という……」
「嘘をつくな」
父が振り返った。その目は冷たく、まるで他人を見るようだった。
「貴様は試していたのだろう。どこまで自分に従うか、どこまで耐えるかと。
そうやって相手を値踏みし、優越感に浸っていただけだ」
図星を突かれ、ロデリックは言葉を失った。
父は深くため息をついた。
「私は貴様に期待していた。いずれ、子爵家をリディア嬢と盛り立て
伯爵家に利を齎してくれる者として、
相応しい人物になってほしいと願っていた。
だが……貴様は人を見下すことしか知らない」
「父上……」
「これ以上、我が家の名を汚されるわけにはいかん」
父は再び席に着き、別の書状を取り出した。
「貴様を勘当する」
「な……!」
「既に女男爵との縁談を進めた。先方は了承済みだ。
貴様はそこへ婿として入り、二度とこの伯爵家には戻らぬこと」
ロデリックの顔から血の気が引いた。
「父上、それは……女男爵とは、あの辺境の……」
「そうだ。配偶者を亡くし、領地経営に苦心している家だ。
だが女主人は聡明で、領民からの信頼も厚い。
貴様にはもったいないほどの場所だろう」
「私が、男爵家に入り婿など……!」
「貴様に選択権はない」
父の声は氷のように冷たかった。
「これは処分だ。貴様の今後の生活の面倒は女男爵家に委ねる。
伯爵家の名は名乗るな。財産も、称号も、すべて剥奪する」
「そんな……」
「出て行け。すぐに荷をまとめ、女男爵家へ向かえ。
それまで、私の前に姿を見せるな」
立ち上がろうとするロデリックに、父は最後にこう告げた。
「人を尊重できぬ者に、人から尊重されることなどない。
それを、身をもって学ぶがいい」
扉が閉まる音が、やけに重く響いた。
*
一週間後、ロデリックは荷馬車に揺られていた。
向かう先は辺境の女男爵領。
かつて自分が「格下」と見做していた土地。
胸に去来するのは、後悔とも諦めともつかない感情。
そして、リディアの最後の言葉が蘇る。
『私の仕事を、私という人間を、尊重してくれなかった』
彼女が欲しかったのは、ただそれだけだったのだ。
自分を一人の人間として、認めてほしかっただけ。
でも自分は、それすらできなかった。
荷馬車が大きく揺れた。
ロデリックは窓の外に広がる見知らぬ景色を、ただ眺めていた。
そして彼は気づいていなかった。
これから向かう場所で、自分がかつて他人に向けていた視線を、
今度は自分が浴びることになるのだと。
*
ロデリックは邸に着いた日のことを、きっと一生忘れないだろう。
かつてなら誰もが道を空け、従者が慌ただしく迎えに出てきたはずだ。
だがここでは違った。
荷馬車の御者でさえ彼を手伝わず、荷を降ろす様子を無言で眺めているだけだった。
「自分の事は自分で、がここでは普通ですので」
案内の男は淡々と言い、さっさと歩き出す。
足並みを合わせてくれる気配すらない。
屋敷の女主人は柔らかい微笑で迎えたが、その笑みは絹で包んだ刃のように冷たい。
彼をただの道具と見做す視線。
決して伴侶ではなく、扱いに困らぬ“手”の一つとしか思っていない距離感。
その後の日々、彼は嫌でも思い知ることになる。
今まで「自分の存在だけで価値がある」と信じていたすべてが、
この地では何ひとつ通用しないことを。
与えられた仕事は容赦なく重い。
手を抜けばすぐにわかり、周囲の者は淡々と叱責する。
誰も彼の出自に気を遣わない。
むしろ元の立場を知っている者ほど、遠巻きに興味深そうに観察するような目を向けている。
「……本当に、何もできないんだな」
ある日、運搬作業で派手に転んだ彼を見て、若い使用人がつぶやいた。
悪意は薄い。ただ事実としてのことを言っただけ。
だがその一言が、彼の胸にもっとも深く突き刺さった。
彼が顔を上げると、周囲の数名が目を逸らした。
笑いを堪えている者もいた。
だが誰一人、助け起こそうとはしない。
その光景が、過去の自分なら信じられなかっただろう。
夕暮れ、泥まみれの服のまま屋敷に戻ると、女主人がふと目を留めた。
「あら、良いお姿だこと。少しはここに慣れたかしら」
女主人の含みのある笑顔に、まるで“ようやく周囲と同じ高さになれた”と
評価されているような、そんな感覚になる。
その夜、寝台に沈む前、ふと手を見る。
今まで丁寧に整えられていた肌は薄汚れ、指先はひび割れている。
ここでは誰も自分に期待もしなければ、特別扱いもしない。
ただ働く者として扱われ、失敗すれば笑われ、成功すれば最低限の評価だけをもらう。
ふと気づいた。
かつて自分が他人に向けていた視線を、今は自分が浴びているのだと。
心が底へ底へと引きずられていく。
逃げる場所も、守ってくれる人もいない。
そんな現実が、じわじわと彼を囲い込んでいく。
――これが、自分の選んだ結果なのだ。
深く静かな溜息が、暗い部屋に落ちた。
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