◆◆お別れなので「王位継承セット」をプレゼントしたら、妹カップルが玉座を手に入れました。きっと喜んでくれてますよね◆◆

ささい

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オルフェンの珍道中記:マイア、帝都に降臨す

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※1ゴールド=1万円ぐらいのイメージで考えていますm(_ _)m

---

我が帝国の都に着いた瞬間、マイアは目を輝かせた。

「わあ! すごいです、オルフェン様! 建物がこんなに高いなんて!」

マイアが嬉しそうに笑う顔を見て、僕は思った。

(……さて、我が都は彼女の手でどう変わるだろうか)

期待で、胸が高鳴る。





帝都に入って最初の「事件」は、中央広場で起きた。

「オルフェン様、あの噴水、水が出てませんよ?」

マイアが指差したのは、中央広場の大噴水だ。

確かに、三日前から故障していた。修理の職人を呼ぶ予定だったのだが――

「ああ、あれは古い噴水でね。昔の技術が使われているから、部品の調達に時間がかかるんだ」

「ずっと動かないのは寂しいですね……わかりました! 直しますね!」

マイアは言うが早いか、噴水に駆け寄っていた。

「マイア、あれは国の重要文化財なんだけど――聞いてないね」

話を聞かせるという概念を考え直さなければいけないかな。
思わず笑いが漏れてしまう。
スピード感は大事だ。
エドワルドは遠くを見ている。マイアのスピードに慣れてきたのか?

迸る白い光。
噴水があふれる光に包まれた。

そして――

「……あれは」

エドワルドが呆然と呟く。

噴水から、水が噴き上がった。
いや、水だけではない。
虹色の光を纏った水が、音楽に合わせて踊るように噴き上がっている。

まるで、生きているかのように。

「完璧です! これで、みんな喜んでくれますね!」

マイアが満足そうに笑う。
周りに集まった民衆が、歓声を上げた。

「噴水が動いた!」

「虹が出てる!」

「綺麗だ……!」


「……殿下」

エドワルドが小声で囁く。

「あの噴水、ただの噴水ではなくなりましたね」

「ああ、音と光の噴水エレクトリカル・ファウンテンに進化したね」

「どちらかと言うと七色の光で鮮やかに光るゲーミング噴水……」

僕は笑った。
これを我が国だけで独占するのはもったいないね。
周辺国の人々にも見せて驚かせたい。

「いい観光資源になるんじゃないかな」

「……殿下、あの噴水の修理予算、確か三千ゴールドでしたが」

「うん」

「今、あの噴水を作ろうとしたら、十万ゴールドはかかりますね」

「価値が天元突破してるね。素晴らしい投資効果だ」

僕は心からそう思った。
華やかで近代的で実に良い。
初代皇帝が生きていたらきっと喜んでくれるだろう。

何より、僕が楽しい。



マイアは次に図書館に興味を示した。

「わあ、こんなにたくさんの本が!」

「ああ、ここは王立図書館だ。帝国中の書物が集まっている」

僕はマイアを図書館の中へと案内した。
高い天井まで届く本棚が、迷路のように並んでいる。古い羊皮紙の匂いと、静謐な空気。

「すごいです! デメトリアの図書館より、ずっとずっと大きいです!」

マイアが目を輝かせながら、本棚の間を歩いていく。
その姿を見て、僕はふと尋ねた。

「マイア、君は本を読むのが好きかい?」

「はい! でも、デメトリアでは宝物庫の仕事が忙しくて、あまり読めませんでした」

「そうか。ならば、これからはいくらでも読めるよ。この図書館は、君も自由に使っていい」

「本当ですか!」

マイアが嬉しそうに笑った。
その時だった。

「あの……すみません」

年老いた司書が、困った顔で近づいてきた。

「実は、一番奥の書庫の本棚が傾いてしまいまして……古い本が落ちそうで、立ち入り禁止にしているのですが」

「それは困るね。エドワルド、図書館の修繕計画はどうなってる?」

僕が後ろに控えていたエドワルドに尋ねると、マイアが首を傾げた。

「あの本棚ですか?」

奥の書庫を指さす。
確かに、古い本棚だ。何百年も使われているもので、危険なほど傾いている。

「そうだよ。建国時からある本棚でね。歴史的価値はあるのだが、さすがに老朽化が――」

「本は重たくて、落ちてくると危ないです! 私が直しちゃいますね!」

マイアはすでに書庫へ駆け出していた。

「マイア、待って、近づくと危ない」

僕が止める間もなく、マイアは本棚に手を触れた。
その瞬間、幻想的な光が、書庫から舞い上がった。
いや、書庫だけではない。

図書館全体が、柔らかな光に包まれていく。

「図書館全体……一体何が?」

エドワルドが目を見開いている。

光が消えた後――

傾いていた本棚が、真っ直ぐになっていた。
いや、それだけではない。
本棚の間に、淡く光る板が浮かんでいる。

いや、板ではない――魔法で作られた、透明な表示板ディスプレイのようなものだ。

「あの……これは……」

司書がそっと触れると、表示板に文字が浮かび上がった。

『読みたい本のタイトルをお考えください』

司書が何かを考え込むように目を閉じた。

次の瞬間――

表示板に地図が現れ、ある本の位置が光で示された。

「『建国史概論』……!」

司書が驚いて声を上げる。

そしてその本が、本棚からすっと滑り出し、柔らかな光に包まれて司書の手元まで浮かんできた。

「は?……嘘だろ」

エドワルドが呆然と呟く。
さすがに僕もこれには驚いた。

「殿下、今の……声に出さずに……」

「ああ、どうやら思考だけで検索できるようだね」

僕は表示板を見つめた。
検索システムと自動配送《オート・デリバリー》を同時に実装するとは。

「完璧です! これで、みんなもっと楽に本が読めますね!」

「……ああ、素晴らしいね」

僕は彼女の頭に手を置いた。

「ただ、次からは危ない場所に近づく前に、一言声をかけてくれると嬉しいな」
「あ、そうですね! ごめんなさい、オルフェン様」

申し訳なさそうにでも誤魔化すようにマイアは笑う。
まあ、次も同じことをするだろうね――それでもいい。
彼女の安全は、僕が守ればいいのだから。

マイアが満足そうに周囲を見て歩いている。
僕は、この光景を静かに眺めていた。

(……彼女は、本当に無自覚なんだな)

ただ「危ない本棚を直したい」と思っただけで、図書館全体に魔法をかけてしまう。
しかも、その魔法は「本を探す人の助けになる」という、彼女の純粋な善意が形になったものだ。

「……殿下」

エドワルドが、諦めたような声で囁く。

「この図書館、今、世界で最も先進的な図書館になりましたね」

「ああ、そうだね。各国の学者が押し寄せてくるだろう」

「つまり、図書館の拡張予算が必要になると」

「君は優秀だね、エドワルド」

僕は口元に笑みを浮かべた。

学術都市アカデミック・シティとしてのブランド構築。悪くないと思わないかい?」

「はあ……予算案、作成しておきます」

エドワルドが胃を押さえながら呟いた。
マイアは、既に別の本棚に興味を示している。

「あ! この本、面白そうです!」

無邪気に、楽しそうに。
彼女が歩く先々で、世界が変わっていく。
それを見守るのが僕の役目だね。

責任を取れるか?

もちろんだ。

それこそが、皇太子の仕事なのだから。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

ブラック
2026.01.13 ブラック

無自覚の変化がとても面白かったです(笑)どんどんバージョンアップしてほしいです

2026.01.13 ささい

読んでいただきありがとうございます!
珍道中は書いてて楽しかったです
また思いついたら書いてみますね(*^^*)

解除

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