ストーカー後輩を放置できなくて矯正してたら、なぜか付き合うことになった

ささい

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本編

【日向視点】逸脱

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「真白」

門柱の脇、校内からは見えにくい位置で声をかける。
うつむいて歩いていた真白が一度だけ足を止め、顔を上げた。
日向を見つけるなり、迷いなく近づいてくる。

図書館での出来事など、最初からなかったみたいに。
その自然さに嬉しさがうっすら滲んでいて、背筋に寒気が走った。

違和感に慣れるのは得意なはずだった。
流せる範囲の“変な後輩”だと思っていた。

だが、真白はもう慣れで収まる枠を逸脱していた。

「先輩、どうしました?」

日向は返事の代わりに、真白の手元へ視線を落とした。
手のひらに収まるサイズのノートが、両手で胸元に押さえ込まれている。
背表紙の角が指に食い込んでいた。
抱え方だけで、隠す気はないのに、手放す気もないことが伝わってきた。

門の前は人の行き来が多い。
視線が集まれば、声を落としても会話は聞かれる。
日向は真白の顔を見てから、校外へと顎で示した。

「ここだと目立つから。少し歩くけど、いい?」

命令に聞こえないように言ったつもりだったが、真白は迷う素振りもなく頷いた。
戸惑いながらというより、喜んで従うに近い。
そのことが日向の喉を渇かす。

しばらく黙ったまま歩き、大学から数分の小さな公園に入った。
通りに面していてベンチが何脚か並んでいる。
街灯の柱と植え込みの間に、視界が抜ける場所があった。
通りから姿が見えても、会話の内容までは届かない位置。

日向は通りに面したベンチを選び、真白に先に座るよう手で示した。
真白が腰を下ろすのを待ってから、続いて日向も座る。
人が二人座れる程度に間を空けた。
車の音と人の足音が、会話の外側で途切れず続いていた。
日向は軽く周囲を確かめ、スマホをポケットへ押し込んだ。

「そのノート。俺のこと書いてる、よな」

そう言うと、真白の握りしめた手にぐっと力が入った。
日向は返事を待たずに言葉を重ねる。

「怒ってるわけじゃないんだ。ただ、確認したいだけ。
 お前の言い分は後でちゃんと聞くから、今は事実だけを教えてほしい」

「……事実」

真白の細い指先が、手放さずにいるノートの端をなぞった。
その無意識な仕草が、彼の行動に明確な意図があったことを物語っている。

「書いてます」

呼吸と同じ速さだった。迷いも、探りもない。
そのあまりに淡々とした様子に、日向はぞっとする。
謝罪より先に肯定が出るのは、彼の中でそれが「悪いこと」ではなく、
単に「聞かれたことへの正しい回答」でしかないからだ。

日向は息を吸い直し、質問を一つに絞った。
理由を聞けば、真白は自分を正当化するために言葉を飾ってしまうだろう。
今欲しいのは、整理された物語じゃない。今はそれだけだ。
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