ストーカー後輩を放置できなくて矯正してたら、なぜか付き合うことになった

ささい

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本編

【日向視点】禁止している側

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学食に着くと視線が勝手に動いた。
居た。入口から一番遠い、窓際の四人掛けの席。
誰かと向かい合って座っている。

知らない男だった。
真白と同い年くらい。
いちごミルクを飲みながら、真白と何か話している。

真白が笑っていた。
肩の力は抜けていて、姿勢も普通で、声も普通に聞こえる。
日向の前では見たことがない顔だった。

今日の日替わり定食を受け取った日向は
気付いたら足を動かしていた。

「真白」

声をかけた瞬間、真白の背筋が伸びた。
さっきまでの柔らかさが消えて、姿勢が正しくなる。

「先輩」

声のトーンも変わっている。
向かいに座っていた男が、ストローをくわえたまま日向を見上げた。
観察するような目だった。

「どーも。柊です。レンの幼馴染」

「……日向」

「知ってます。レンからよく聞くんで」

柊はそう言って、少しだけ口角を上げた。
笑っているのか、面白がっているのか、よく分からない表情だった。

日向は真白を見た。
真白はさっきまでと全然違う顔をしている。
姿勢が固いし挙動不審。
日向の方を見たり、視線を落としたり、落ち着かない。

柊といるときは、あんなに普通だったのに。

「もう食べた?」

「あ、はい。今、食べてました」

「そうか」

会話が続かない。柊がいちごミルクを吸う音だけが聞こえる。
日向は空いている椅子を指差した。真白の隣。

「座っていい?」

「はい!」

返事が早すぎる。声も大きい。
柊が「へえ」という顔をした。視線が日向と真白の間を行き来している。

「先輩、レンのこと気にかけてくれてるんすね」

「……まあ」

「いいと思いますよ。レン、先輩の話するとき楽しそうなんで」

真白が身を乗り出して「柊」と小さく言った。止めてくれ、という顔だった。
柊はいちごミルクを最後まで吸い上げて、立ち上がった。

「じゃ、俺帰りますね。レン、またメッセージして」
「うん」
「先輩もお元気でー」

それだけ言って、トレーを持って去っていった。
振り返りもしない。あっさりしたもんだ。
残されたのは日向と真白だけだった。
真白はまだ固い。

「……あいつと仲良いな」

「幼馴染なので」

「そうか。どれくらいの付き合い?」

「幼稚園からです。ずっと居ます」

日向は自分がモヤモヤしていることに気づいた。
柊の前ではリラックスして、自分の前では緊張する。
それは当然だ。
過ごしてきた時間が違う。
何より、自分は真白に色々禁止している側だから。

でも、当然だと分かっていても、面白くなかった。

「真白。昼、一緒に食えそうなら連絡して」

真白が目を丸くした。それから、嬉しそうな顔になった。

「……はい」

日向はその顔を見て、自分が何を言ったのか、ようやく理解した。
柊と一緒にいる姿にモヤモヤして、隣にわざわざ座りに行った。
また会うために、連絡してと自分から言った。
全部、自分からやっている。
なんでだ。
答えは出なかった。
出なかったけど、自分の行動で真白が嬉しそうな顔をした。
悪くないなと思った。
その感覚だけが、胸の奥にはっきり残った。
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