電車を寝過ごしたら聖女と呼ばれてプラチナブロンドの騎士と結ばれました

刻芦葉

文字の大きさ
17 / 18

手料理を食べてもらおう

しおりを挟む
 
 料理をするにあたって一番緊張するのは、自分の料理を食べたことのない人に初めて振る舞う瞬間だ。エリアスさんは生姜焼きを食べたことがないのか、不思議そうな表情でフォークで豚肉を持ち上げる。

 タレがたっぷりと絡んだ香ばしく焼けた生姜焼きは見ただけで食欲を湧き立たせる。大丈夫。きっと美味しいはず。そう思ってもやっぱり不安でソワソワとしてしまう。

 エリアスさんが生姜焼きをパクリと食べた。どうか美味しくありますように。そう祈っていると突然エリアスさんのサファイアみたいな綺麗な瞳が見開かれ、驚いたように私のことをじっと見つめてくる。

 喋りたいけど食べる方を優先したい。そんなことを思っているのか口をもぐもぐと動かしながら、お皿に乗った生姜焼きを指差して何かを伝えようとしてくる。

 なるほど。これがギャップ萌えというやつか。普段は穏やかに笑みを浮かべる王子様のようなエリアスさんが、キラキラとした目で美味しいと訴えてくるのは可愛すぎてキュンキュンする。

「ハルカ! これはなんですか! 凄く美味しいです!」

 ようやく飲み込んだエリアスさんは立ち上がるとお皿を持って興奮気味にそう伝えてくる。その姿はかなりのオーバーリアクションで、家族も今までお付き合いした彼氏だってこんなに良い反応をしてくれたことはなかった。

「それは私の故郷の料理で生姜焼きといいます。気に入ってくれましたか?」

「はいっ! 今までステーキが一番好きでした。でもこれからはハルカの作ったショウガヤキが一番です!」

 エリアスさんの生姜焼きのイントネーションがなぜか英語のようで思わず笑ってしまった。そんな間にも椅子に座り直したエリアスさんは凄い勢いで生姜焼きを平らげていく。

 料理した人にとって何よりも嬉しいのは美味しく食べてくれることだ。その点で腹ペコの男子高校生のような勢いで食べてくれるエリアスさんには、私から百点満点をあげたい。

 ……私の生姜焼きが一番か。そんなことを言われたら困っちゃうな。はぁ。私ってこんなにチョロい女だったっけ?

「どうしたんですか? 食べないならハルカの分も僕が食べてしまいますよ?」

「エリアスさんの食べっぷりが気持ちよくて見入ってました。私も食べますね」

 今更思い出したけど味見することを忘れてた。今回はエリアスさんの様子から失敗してはなさそうだけど、まさか味見を忘れるなんて我ながら信じられない。

 そのことを反省しつつ生姜焼きを一口食べると、私は取れちゃうんじゃないかってくらい目を大きく見開いた。

 なにこれうまっ! 生姜焼きのガツンとした味付けに肉の味が全く負けてない。それどころかタレが引き立て役に回るくらいに脂の旨みが際立っている。オークって凄い。

 さっきまで自分の中にあった甘酸っぱい雰囲気が吹き飛ぶほどの美味しさに、私は夢中になって生姜焼きを頬張る。

 自分の中の冷静な部分がそんなんだから彼氏ができなかったんだと責めてくるけど仕方ないでしょ。そもそも今回料理したのも私が美味しいご飯を食べたいって理由だったんだから。

 生姜焼きが半分になった頃に私は悪魔的な考えを閃いてしまった。キッチンから波打ったパン切り包丁を持ってくると、今まで手をつけていなかった丸パンを真ん中から真っ二つにする。

 そこに余った生姜焼きとキャベツを挟めば即席のハンバーガーの完成だ。タレを溢さないように慎重に齧る。

 うん、美味しい! パンが硬いのが残念だけど生姜焼きのタレを吸ったお陰かマシになってる。何より炭水化物とお肉の組み合わせは正義だ。

「ずるいですハルカ。僕もそれをやりたいです」

「ふふ。それならエリアスさんのパンも切りますね」

 子どものような表情で拗ねるエリアスさんが可愛くて笑ってしまう。パンを切ると笑顔でありがとうと言って私と同じように生姜焼きを挟むエリアスさん。

 どうやらご飯が絡むとエリアスさんは少し幼くなるみたい。人によると思うけど私は男の人が少年のように元気いっぱいご飯を食べる姿が大好きだ。

 目を細めながら幸せそうにハンバーガーを食べるエリアスさんの姿にこっちまで幸せになってくる。食べ切ってしまい寂しそうにお皿を見つめる表情なんて私のツボ過ぎて困る。

「おかわり持ってきますね」

「はいっ! お願いします!」

 私の言葉に顔をパァッと輝かせたエリアスさんの後ろにブンブンと振られる尻尾が見える。食事の時の無邪気なエリアスさんを、心の中でワンコと呼ぼう。

 その後もワンコは三回もお代わりして幸せそうな表情をしていた。もう食べれないみたいだけど生姜焼きがまだ少し余っている。

 それを伝えると持って帰ると元気よく言うので余りは全てお土産になった。それを持ってホクホクと嬉しそうに帰ったエリアスさんに、私は恩返しが成功したようで良かったとホッと胸を撫で下ろすのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲーの世界に聖女様として召喚されたけど興味がないので妹に譲ります

ゆずぽんず
恋愛
ある日、ユウとチカの姉妹が乙女ゲームの世界に聖女様として召喚された。 好きなゲームの世界に入れたと喜ぶ妹のチカ。 本来、聖女様として召喚されるのだったの一人。どちらかが死に、召喚された。 妹のことが大切な姉のユウは、妹がこの世界にいたいのならば私が偽物となってこの世界から消えようと決意する。 *乙女ゲーマーによる小説です。乙女ゲーになろう設定混ぜ込んでみました。 *乙女ゲーによくある設定(共通ルートやバッドエンドなどのよくある設定)の説明があります。分かりにくかったらすみません。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

私が偽聖女ですって? そもそも聖女なんて名乗ってないわよ!

Mag_Mel
恋愛
「聖女」として国を支えてきたミレイユは、突如現れた"真の聖女"にその座を奪われ、「偽聖女」として王子との婚約破棄を言い渡される。だが当の本人は――「やっとお役御免!」とばかりに、清々しい笑顔を浮かべていた。 なにせ彼女は、異世界からやってきた強大な魔力を持つ『魔女』にすぎないのだから。自ら聖女を名乗った覚えなど、一度たりともない。 そんな彼女に振り回されながらも、ひたむきに寄り添い続けた一人の少年。投獄されたミレイユと共に、ふたりが見届けた国の末路とは――? *小説家になろうにも投稿しています

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

私は、聖女っていう柄じゃない

蝋梅
恋愛
夜勤明け、お風呂上がりに愚痴れば床が抜けた。 いや、マンションでそれはない。聖女様とか寒気がはしる呼ばれ方も気になるけど、とりあえず一番の鳥肌の元を消したい。私は、弦も矢もない弓を掴んだ。 20〜番外編としてその後が続きます。気に入って頂けましたら幸いです。 読んで下さり、ありがとうございました(*^^*)

処理中です...