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第1章
歓迎会
しおりを挟む昨日初めて入ったばかりの寮の部屋に戻る。高等部は全寮制で、学年ごとに階を割り振られている。一年は三階の二人部屋だ。ただ、人数の関係で拓斗は一人で二人部屋を使うことになった。
ラッキーだけど、常に空っぽのベッドが置いてあるってのも落ち着かないよな...
寮の新入生歓迎会が夜にあるということだったので、廊下で佐倉と佐々井と合流して一階に降りると広い和室があった。そこで歓迎会をするようだ。
「佐倉と佐々井、同部屋だったの?」
「そうなんだよ、ラッキー」
「優、朝全然起きてくれなくて大変だからラッキーじゃないよ。タクは一人でしょ?遊びに来てよ」
「うん、そうする」
三人で話しているうちに、他の一年や先輩たちが入ってきて部屋がガヤガヤとしてきた。部屋の前の方に五人ほど先輩が固まって座っていた。その中の一人が立ち上り話し出す。
「もうみんな、それぞれ交流始めてくれてると思うんだけど、少しだけ僕の話聞いてくださーい」
よく通る爽やかな明るい声で話し始めたのは生徒会長の理久だった。
「一年生のみんな、ようこそ。持ち上がりの人多いから、昼間の入学式はあんまり新鮮みなかったかもしれないけど、寮は初めてだよね。うちはあんまり規則とか厳しくないから、最低限のルールとマナー守ってみんなで楽しく生活しよう!寮関係のことは生徒会が仕切ってるから困ったこととかわかんないこととかあったら生徒会の人に言ってください。今日はたくさんの人と話して少しでも慣れていってくれたら嬉しいです!」
理久はそう言ってみんなの方に笑いかけてから元の位置に座る。
「今、理久先輩の隣にいるのが真生先輩だよ」
佐々井に耳打ちされ、視線をそちらにやる。
「へぇ...」
身体の小さい色白な人が折り曲げた足をぺたんと床につけて座っていた。遠目に見てもきれいな人だと思った。
あの人が真生先輩...
しかしそれだけでは佐倉が、会えばわかると言っていた意味はわからなかった。歓迎会が進むにつれ、その事も頭から抜けてしまっていた。
そろそろお開きという頃、それまで話していた先輩が拓斗たち三人に向かって言う。
「お前ら、このあと暇?俺らの部屋来ない?真生ちゃんも来るよ」
「真生先輩...?」
少し驚く。この先輩たちはどう見たってエリート組じゃない。生徒会の人と仲良いというのは意外だ。
「南城理久はパスだけど、真生ちゃんはいい子だよ」
にやにや笑いながら、拓斗の考えを見透かしたように先輩の一人が言う。
どうしようかと考えていると、後ろから佐倉が不機嫌そうな声を出す。
「俺らは大丈夫です。失礼します」
佐倉は佐々井と拓斗の腕を引っ張り、そのまま部屋まで戻った。
「佐倉?どうしたんだよ」
別に誘いを断ったことなどどうでもいいが、佐倉の不機嫌そうな態度が気になった。佐倉の代わりに佐々井が口を開いた。
「あの人たち、たぶんこのあと真生先輩とセックスするんだと思う...」
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