< 小話まとめ >悪役令嬢はやめて、侯爵子息になります

立風花

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三章

38話 挟まれた世代 / 国政管理室前室長(元副宰相)

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学園には過去の学生の逸話はたくさんあります。
エドガーが一人前衛で団体戦を勝ち抜いてしまったり、
レオナールがレポートを1クラス分肩代わりして怒られたり、
イアサントが研究に行くと言って行方不明になったり、
エルヴェは現在、研究棟の爆破記録更新中です。
新入生はどんな武勇伝をつくるのでしょうか?


< 小話 > 


――ある世代の午後

「スティード、今年の共通過程の団体戦みたか?」

「一年のエドガー・ヴァセラン? 前衛一人でアホかと思ったが、一年は上級生相手じゃ使い物にならない奴が多いからねじ伏せる力量がある一人の武勇に頼ったのは上手かった! 年下となめて、化け物の相手をした奴が可哀そうだったがな!」

 学年交流戦は奇妙な配備で挑み、個人の武勇と絶妙な采配で三位に食い込んだ一年の話題で持ち切りだ。

「後衛の采配もうまかった。技量がないのを完全に集団で統制して、ヴァセランが力を出せる舞台を維持し続けた。準決勝に軍師兼大将の狸がいなかったのが悔やまれるな。いたら決勝は奴らが掻っ攫ったぞ!」

「あー、あの軍師だったアングラードは、アーロン先生にチームの奴のレポート代筆しまくったのがバレて出場停止の処分だと。停止されるレベルって、いくつレポート書いたんだよ!」

 今年は、怪物のような強さのヴァセランの名の男に、奇策を練り癖のある采配を振るうアングラードの名を持つ男も面白かった。この世代は傑物揃いだ。
 我々のような傑物に囲まれる中間の世代はいつも目立たない。入学した時ははイアサント・シュレッサーという変人が行方不明になったり、爆発したり大騒ぎで活躍していた。

 でも、傑物だけで世界が回るわけではない。

 大きな歯車には小さな部品が必要だ。彼らの世代に挟まれて気苦労するのは嫌だなと、中間に挟まれる自分の未来を思って胃をさする。
 自分が国政管理室の室長を経て副宰相になり、絶妙な緩衝材の役割を果たすことを彼はまだ知らない。
 胃薬が手放せなくなるのもあと少し先だ。
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